第22話
「ノベト、一つ気になることがある」
「ん、スレイン? どうしたの?」
村を出て1週間が経った頃、俺たちは焚き火を囲んで夕食をとっていた。
その時、スレインが俺に話しかけてきた。
「俺たちは慣れてるけど、町に着いたら喋るのは控えた方がいいんじゃないか」
「……あっ、確かに」
忘れていた。最初に俺が“念話”を使った時、ベルゲたちは驚愕していた。
エルフですらそうなのだから、人間たちならなおさら驚くだろう。
最悪の場合、「薪にしろ」とか「装飾品にしよう」とか騒ぎになる可能性もある。
幸い、今の俺の“念話”は成長していて、1対1での会話が可能になっていた。
少なくとも以前のように周囲全体に響き渡ることは避けられる。
「だから、必要な時だけ使うようにするよ。助言ありがとう、スレイン」
「そうか、それなら安心だ」
俺は今、ベルゲの首にかけられた“ペンダント”になっている。
移動も楽だし、目立たないのがいい。俺が喋らない限り、誰にも気づかれない。
「ところで、食事はしなくても大丈夫なのか?」
ベルゲが野菜スープを飲みながら聞いてくる。
「食事って……そもそも俺、食べられる体じゃないし」
「それもそうだな。だが、不思議だな……食べずにどうやって生命活動を維持してるんだ?」
難しい質問をするな。俺も考えたことなかった。
「難しいこと言うなよ、ベルゲ。そんな賢く見える?」
「ははは、確かに」
「それより、そろそろ目的地の町について教えてよ」
町の名前は「フェレオラ」。領主の名前がそのまま町の名になっているらしい。
ポーションや魔導具を売っている店もあり、冒険者や商人向けのギルドもあるとのこと。
小さい町だと思っていたが、意外に規模があるようだ。
異種族との交流も盛んなようで、少しワクワクしてきた。
「一つ気になったんだけど、物はどうやって買うつもり?」
「町でしか手に入らない果実を売って、それで他の物を買う。いつもそうしてる」
ベルゲは体をひねって荷物の方を指差す。
あの中身は町で取れた果実らしい。
「途中で獣に出会えば、それを狩って売ることもある」
筋肉を誇示するようにベルゲが笑う。
まあ、このメンバーなら狩りも余裕だろう。
「狼とかのこと?」
「それもあるが、もっと高く売れる獣もいる」
「例えば?」
「指名手配犯だ。人の町で悪さをした奴らを捕まえて、ギルドに連れていけば賞金がもらえる」
「なるほど、それは確実に稼げるね」
どこに行っても悪人はいる。事情がどうであれ、他人に迷惑をかける存在は許されない。
そういう意味で、ベルゲたちの活動は立派だと思う。
「ベルゲ、それって盗賊も含まれるんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ、ちょうどいい情報があるよ。近くでちょっと騒がしい場所があるみたい。ただの喧嘩とは思えない」
俺の言葉が終わるやいなや、ベルゲと仲間たちは武器を手にすぐさま立ち上がる。
「エルフ以上に耳がいいとは……本当に頼りになるな」
「さあ、行こうか!」
「落ち着けよ、スピルロ」
皆、血が騒いでいるようだ。
距離はおおよそ1km。間に合えばいいが……




