第15話
それから俺は、ひたすら精霊に呼びかけながら走った。
他のことは一切考えず、ただ精霊を呼ぶことだけに集中した。
その間に、鎌の使い手で牙が特徴的だったユルロウンが倒れた。
「先に行け……ノベト……」
『返事しろよ! 聞こえてるなら応えろってば!』
盾とメイスを得意とする顎髭のメンデイン、そして斧を使いこなす赤い鉢巻のラルフェイルも倒れた。
「お前の上で死ねたら最高だったのにな、残念だ」
「行け!」
『なぜ、聞こえないんだ!』
精霊は答えない。それでも進む。そして、ついに精霊樹の前に辿り着いた。
「否定された穢れが、完全に精霊樹を覆ってやがる。これじゃ、精霊様の声も届かんわけだ……」
ベルゲが呻いた。
引き込まれそうな不吉な黒が、まるで木のような形をしていた。
あの中に、精霊がいるのか……?
『……精霊は、まだ俺の声に反応してくれない、ベルゲ』
『警告:残りマナ 10,000』
くそっ、本当にひどい。
ここまで来る間に、絶対空間をいったい何度使った?
まさか40,000も消費したってのか? あと何回使える……?
『絶対空間(LV.2)は、あと10回使用可能です』
なんて大食いな魔法だ。1回に1,000も使うなんて。
40回も破られたっていうのかよ。
「モレス!」
双剣の達人で細目が特徴的だったモレスも倒れた。
ベルゲを含めて、残るは5人。必死に戦っている。
このまま何もしなければ、全滅する……。
もう俺には何もできないのか? ここで終わるのか?
ねえ、声さん。どうすれば精霊と話ができる?
『現在保有中のポイントを使用して、スキル:超深層潜入/脱出(LV.1)を開発可能です』
『超深層潜入/脱出(LV.1)は、対象の魂と接続し、深層世界で直接対話することができます』
『使用には対象との直接接触が必要です』
……やるしかない。今、できることは全てやる!
『ベルゲ、俺を精霊樹に投げてくれ。お前ならできる。俺が行って、目を覚まさせてくる』
「な、なんだと……!?」
『手短に言う。精霊の心の中に入り、直接会話してくる。そのためには、あそこに触れる必要がある。だから──投げてくれ』
ベルゲは必死に魔物を避けながら、縄を解いて俺を右手でギュッと掴んだ。
「頼んだぞ、ノベト」
『こっちこそ頼む。絶対に生き残れよ』
「みんな! 今からノベトを精霊樹に向かって投げる! ノベトが触れられるように、道を開けろ!」
ベルゲは、残された力のすべてを込めて、俺を精霊樹に向けて投げた。
最後の仲間たち──槍使いのスピルロ、斧の一撃が重かったホレイル、アイアンナックル連打のパンテエル、盾の突撃が得意なセトレル──は、俺の進路を塞ぐ魔物を命がけで防いでくれた。
『頼むから……みんな死なないでくれ! 生きてさえいてくれたら、俺が必ず回復してやるからな!』
黒い精霊樹が、どんどん近づいてくる。
──そして、視界が暗転した。




