第14話
ふざけるな……眠れば回復できるというなら、即座に回復させる手段もあるだろう?
今の俺のレベルが低いとは思っていない。でも、あとどれだけレベルを上げれば回復魔法が使えるようになるっていうんだ?
他に方法はないのか!?
「現在のレベルでは、選択可能な回復魔法やスキルは存在しません」
ベルゲたちは、負傷したスレインを囲み、迫り来る魔物たちと対峙していた。
魔物たちは「攻撃が通じる」と確信したのか、さらに激しく攻め立ててくる。
絶対空間がわずかに持ち堪えたが、再び破られた。
私は再展開したが、もはやこの魔物たちには通じない。
レベル2まで上げたのに、これが限界だというのか?
これでは“絶対”など名ばかりじゃないか。
精霊樹に辿り着く以前に、生き残れるかが問題になってしまった。
今「熟睡歓迎」を使うべきか……?
いや、ダメだ。
この状況でベルゲたちが眠ってしまえば、絶対空間が破られて全滅だ。
「ベルゲ、回復ポーションは!? 使える回復魔法はないのか!?」
──分かっていた。
そんなものがあれば、最初から僕の出番なんてなかったはずだ。
「……スレイン、すまない。いつか世界樹でまた会おう」
「ああ、世界樹でまたな」
──ベルゲはかつて語っていた。
エルフは死後、最も高位の精霊樹・世界樹へ魂が還ると信じている。
その言葉を今、交わすということは……
「ベルゲ……!」
「……君の名前を教えてくれないか?」
スレインが私に語りかけた。
「……え?」
「君と共に戦えたことは光栄だった。世界樹へ行っても、共に戦った仲間の名を語りたい。構わないか?」
「僕の名前は……」
──無力だ。甘かった。
誰も死なないものだと信じていた。
自分が万能だと、どこかで思っていた。
「……ノベトだよ、スレイン。僕の名前は、ノベト」
ベッドはこの世界では「ベト」と呼ばれている。
けれど、僕は「ベト」じゃない。
だからこそ──ノベトなんだ。
「ノベト……覚えた! ありがとう! さあ、早く行け!」
私たちはスレインを後にし、前進を続けた。
私はベルゲの首元に縮小されたまま下が見えない。
だが、「万物理解」を通じて、スレインが魔物と戦っている音がまだ聞こえる。
その音が、だんだん遠くなって、そして──消えた。
「……応えて……」
「聞こえているなら答えろよ、このクソ精霊!」
呼びかけても、返事はない。
やっぱり届かないのか。
「ベルゲ……君たちはこんなことを何度も経験してきたのか?」
ベルゲは小さくうなずいた。
頭がぼんやりする。苦しい。悲しい。
さっきまで、僕の上で一緒に寝ていたのに。
ベルゲとその仲間たち──スレイン。
名前なんて覚える気なかったはずなのに、全部覚えていた。
「毎回……魂の一部が引き裂かれるような気分だった。ノベト、だからもう二度と、あんな思いはしたくないんだ」
「……ごめん、ベルゲ。偉そうに分かったふりして……」
「謝るな。スレインは覚悟の上だった。俺たちも、そうするつもりだ。……本当に申し訳ないと思うなら、早くこの悲劇を終わらせてくれ」




