第13話
「今、ひどく苦しんでいる女の子のような声が……僕に聞こえた」
「それなら、考えられるのは……汚染の元凶が精霊様を苦しめて、無理やり魔物を生み出させているということか!」
ベルゲはすぐに状況を把握し、推測を口にした。つまり、精霊樹を汚染している何者かが、精霊を何らかの方法で縛りつけ、その力を強制的に使って魔物を生み出しているということ。ならば、これまでに現れた魔物たちは、精霊の魔力によって生み出された存在なのか。
「ベルゲ、精霊様の魔力って、どのくらいあるんだ?」
「詳しくは知らないが、少なくとも人族やエルフよりは遥かに膨大な魔力を持っているだろう」
「それでも無限ではないよね? もし精霊様の魔力が枯渇したら、どうなる?」
「精霊様は魔力によって存在を保っておられる。つまり、魔力が尽きれば……消滅するかもしれない。その後は精霊の恩恵が失われ、この地は生き物すら生きられぬ死の地と化すだろう……」
「10年前から現れた魔物たちは、その間ずっと精霊様の魔力を使って創られた存在だったと思う。だとすれば、今の精霊様の状態は非常に危険だと思う」
「急がなければ……!」
「これから、僕は精霊様に声をかけ続けることに集中するから、できるだけ早く移動してくれ」
「わかった! ここからは休まず突き進む!」
ベルゲと仲間たちは決意を胸に、駆け出した。
「……けれ……て……」
「精霊様、聞こえますか?」
「……わ……い……」
まだ、精霊様には僕の声が届いていないようだ。万物理解よりも念話の範囲は狭いのかもしれない。それでも、届くまでやるしかない。
精霊に呼びかける。返事はない。
ベルゲたちは魔物を斬り倒しながら精霊樹へと進む。
呼びかける。返事はない。
これまでとは比べ物にならないほど巨大で凶悪な魔物たちが行く手を阻んだ。
呼びかける。返事はない。
そのとき──絶対空間が破られた。
……破られた? なぜ?
「みんな! 散開して回避しろ! 絶対空間が壊れた! 俺がもう一度展開する、怪我するなよ!」
それでもベルゲたちは、自らの体を盾にし、武器を手に魔物たちに立ち向かった。
槍を持っていたエルフの一人が、魔獣の爪により左腕を切り裂かれた。
僕はすぐに絶対空間を再展開した。
「何してるんだ! 避けろって言っただろ、スレイン!」
「ははっ……油断したみたいだ」
スレインは苦笑しながら負傷した左腕をちらりと見て、再び右手で槍を握り直し、魔物たちとの戦いに戻った。
「今笑ってる場合じゃない、すぐに眠って──」
「それは無理だ。君が言っただろ、休まずに行くって? なら、俺は置いていけ」
……何を言ってるんだ、スレイン。
ここに君を残せば、確実に死ぬ。
待て、回復魔法か回復スキルが残っているはずだ。
あれだけ種類があるのだから、無いわけが──
「現在のレベルでは、選択可能な回復魔法やスキルは存在しません」




