13 王宮にお呼ばれしました
使い魔召喚を終えた日。
その後は精霊王が二人?も召喚されたとあって学園でも大騒ぎだった。
そしてそのまま国王陛下にも連絡がいったらしい。
精霊王はドラゴンよりも格上の存在で、精霊王との契約者がいる国は繁栄すると言われているから国にとっても一大事なのだ。
ああ見えて実は凄い存在だったりする。
全然そうは見えないけどね。
これはストーリー通りなので私は驚くといったようなことはなかったけど、周りはそうはいかなかったようで結構な盛り上がりを見せている。
ヒロインであるエミリーはもっと大変そうだ。
貴族からの養子縁組の申し込みが多数送られているらしい。
エミリーは孤児だからね。養子にしたい貴族が出てきてもおかしくないでしょう。
あまりにも多いので国王自ら養子先の家を決めるらしい。
エミリーなんかずっとあわあわしている。
そうして今日は国王陛下に呼び出しを受けたので王宮に参内しなければならない。
それはエミリーも同じのようだった。
学園で本人が言っていたので間違いない。
王宮からドレスが送られてきたと言っていたし。
なんか悪役令嬢なのに最近ヒロインから話しかけられることが多いような気がする。
ここで嫌味のひとつやふたつを言えたら悪役令嬢として完璧なのだが、そのためには心の準備というものが必要なわけで。
私の低い頭のレベルではすぐに華麗な嫌味が出てこないのだ。
この前なんかとっさに思いついたのは「あなた、名付けのセンスがありませんのね。」だった。
周りのなにか言いたげな視線がとても痛かった。
さすがに私も居たたまれなくなった。
その時、腹黒王子は口元を押さえながら下を向いてプルプルしていたけど、あれって絶対笑いを堪えていたよね?
もう考えなしに嫌味を言うのはやめようと思います。やっぱりきちんと台本を練る必要があると学習した。いきなりは良くない。
話が脱線してしまった。
というわけで私は今、絶賛おめかし中なのだ。
貴族令嬢のおめかしというのはかなり時間がかかるんだよね。
王宮に向かうから中途半端な装いはできないしちゃんと豪華なドレスを着ていかなくてはならない。
うう、コルセットが苦しいです。
侍女がメイクや髪のセットをしてくれてドレスアップが終了したので鏡で確認する。
うん。悪役令嬢だから元々綺麗だけど、こうしてドレスアップしてみると大人っぽくて凄まじいほど綺麗だな。
自分でいうのもなんだけどさ。
濡れ羽色の黒髪と黒い宝石のような瞳。
西洋風の整った顔立ちに、綺麗な白い肌。
なんか悪役令嬢はつり目でなくてはならないという法則でもあるのかと思いたくなるキリリとした目元。
ほっそりとした手足なのに胸だけは大きいという抜群のスタイル。
まだ14歳のはずなのに色気があるのが恐ろしい。
さすが乙女ゲームの世界だね。悪役令嬢すらもこんなに綺麗なんだから。
これが自分というのはまだ違和感があるけども。
ドレスはスラッとしたタイプの淡い美しい青色のもので、耳飾りなどの飾りの宝石は紫のものだった。
紫の宝石は闇の精霊王の瞳を意識しているらしいけど、恋人みたいなので切実にやめてほしいと思う。
「本当にお美しいですお嬢様!」
「ええ本当に!殿方たちの視線を独り占めしてしまいます!」
侍女たちは完全武装の悪役令嬢の完成にキャーキャーと興奮したように声をあげて私を褒め称える。
自分たちが頑張った成果だから気持ちは分からなくもないけどね。
正直私は王宮に行く前にどっぷり疲れました。
もう帰って寝たい。まだ出発すらしてないけど。
「ほら。いつまでも騒いでないで出発の準備をなさい。お嬢様がお出かけですよ。」
私の専属侍女であるセシルが他の侍女たちを促して私から離してくれた。
さすができるメイドさんは違うね!
「お礼はチョコレートでお願いします。」
「お前には甘いものしか頭にないのか!私の感動を返して!」
セシルって表情を変えないし氷のような冷たい印象だけど甘いものに目がないよね。
「まったく。私はセシルがお菓子をあげるよって言われたら、ほいほいついていかないか心配だよ。」
「お嬢様ではないのでそんなことしません。」
「私もそんなことしないから!」
私のことをどう思っているのか一度話し合う必要がある気がしてきたよ。
「というかさ。私のフォローをしたりするのもセシルの仕事なんだからお礼とかいらないと思うんだけど?」
「お嬢様にしては鋭いですね。そのようなことに気づくとは。コルセットで締め付けすぎて頭がおかしくなりましたか?」
頭がおかしくなった方が賢くなると申すのかこの毒舌侍女は。
セシルって私の侍女だよね?
私の精神をゴリゴリ削るために他家から送られてきたスパイじゃないよね?
もし本当にそうだったらお粗末すぎるけどさ。
「またおかしなことを考えていますね。良かった。いつものお嬢様です。」
「解雇してやろか、コノヤロー!」
私がいちいち突っ込むからセシルの毒舌に磨きがかかっていることなど、この時の私はこれっぽっちも分かっていなかったのだった。




