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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇冬の事変
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69話 再・四人でRPG 中編

『4人』のゲームをしていて、空はあることに気付いた。ゲーム内の町の地下のこの通路――見覚えのあるものだ。キャラクターはドット絵であるが、背景だけは妙にリアル感がある。そのため、デジャヴあるこの通路は知っていた。


「工場?」


 そう、ここは冬野製薬工場地下の通路によく似ているのだ。不気味に思いながらも突き進むが、全くのエンカウントなし。それが更に不気味さを際立たさせていた。


「工場って?」


 この呟きに気付いたカンナが訊ねた。これに空は製薬工場内の地下の通路にそっくりだ、と言った。その言葉に誰もが沈黙する。自分たちはそれを見たことおがないが、彼は見たことがあるのだ。だとしても、待って欲しい。ここがあの地下と同じだと断言するのは早くないだろうか。これはゲームなのだ。現実と同じであるのはあり得ないはず。


「似ているってのもな……」


「本当に似てますよ。通路の幅も、この扉も」


「もし、夏斐さんが見たあの地下であるならば、この先には研究施設があったんですよね?」


「はい。パソコンと薬品、それに書類が」


 この先も同じであるならば、どのような反応をしたらいいのだろうか。現実とゲームが同じになるなんて。


 何を思ったのか、大地はカンナの方を見た。彼の視線に気づいた彼女も何かわかったのか――。


「空、奥に行く前に町の方に戻って」


「え?」


「ちょい、町の人たちに聞き込みしよ」


 大地もそう言ってくるため、空は通路の奥へと行かず、町の方へと戻った。比較的明るい背景になって、どこか安心したという気分になった。


「とりあえず、この前の長老だか町長だかわからんが、あのじーさんに訊いてみよーぜ」


 あのじーさんと言うのは、以前にプレイをして「出ていけ」と怒っていたご老人であろうか。


 適当に町を徘徊していると、白髭のキャラクターを見つけた。これに空は『すみません。』と声をかける。


『このまちの ちかについて ききたいのですが。』


『ちか? このまちに ちかは ありませんよ。』


 否定されてしまった。これに空はカンナの方を見た。こういう論に関しては彼女が長けているだろうから、頼った方が早いのかもしれない。そう思って。


 カンナは空からマイクを受け取ると、もう一度地下について訊ねてみた。


『げんに ちかが あったんですよ。ちいさなことでも いいので おしえてくれませんか。』


『あなたは なにを いっているのです。なんども いいますが このまちに ちかは ありませんよ。』


「このおじーさんじゃなくて、誰かが知っている可能性がありますよね」


 そっちの方で聞き込みをするらしい。カンナは手当たり次第、町の人に地下のことについて訊ねてみた。もちろん、教会にいる神父にだって。だが、誰一人として「知らない」の一点張りである。これにカンナはマイクを投げて「あーもー」と嘆く。


「知らないって、いくら何でもオカシイ」


「んー、アネキのカレシが言わなければ、わからなかったコトでもあるからな。ちょっ、攻略サイトでも見てみるか」


 これにはお手上げなのか、大地が自身のスマートフォンを利用してゲームの攻略を図ろうとするが――。


「…………」


「どースか? なんかわかりました?」


「このゲームの会社って何だっけ?」


「知らないっス……」


 そもそも、クレジット自体は見ていないのだ。空がそう答えると、大地は「ない」と返した。


「なら、ないぞ。このゲーム」


 仮にあったとしても、似たような名前しかないのである。これには誰もがお手上げ状態になるしかなかった。しかし、一方でまだゲームで遊べないことに少しばかり不満がある洋子はテレビ画面を見てあることを口にした。


「そう言えば、どうしてこのゲームはチグハグなんでしょうね」


 この『4人』以外のゲームをしたことは一応ある。別のゲームをしたときはキャラクターと背景は相応のものだったというのに。洋子のその言葉を聞いて、空は白衣の男が自分の家のリビングで言っていたことを思い出した。


【この世からすべての格差をなくす世界にする】


「……センパイ。ゲームオーバー覚悟で下に行ってもいいスか?」


「おう」


 カンナからマイクを受け取り、もう一度地下の方へと向かった。無言状態で奥にある部屋へとやって来る。そこは夏祭りで見た地下の研究室と同じ間取りの部屋だったのだ。ただし、以前と違うとするならば、更に奥の扉前にいるキャラクターだろう。これに空はマイクで呼びかけた。


『このちかの ひみつは なんだ。』


『…………』


 画面には三点リーダーが。どこかあやしげな雰囲気が漂う。何も答えないキャラクターに向かって、空は別の言葉をかけた。


『かくしていること あるだろ。おれらに むけた めっせーじが あるだろ。もともとの げーむを かいぞうしてまで。』


 元々のゲームを改造してまでだと? その発言に洋子以外は画面に注目した。テキストには『ははは』という文字の羅列が並んでいた。これは笑っていると解釈してもいいだろうか。


『いまの じだいは いいな。こうして じょうじ ねっとわーくに つなげるのだから。』


「なんだ、コレ……?」


「この前、ウチに侵入してきたあのヒトはこのゲームと本来の『4人』というゲームをすり替えているんだと思います」


「はあ?」


『さてさて ほんらいの このげーむならば ここで てききゃらと たたかうらしいのだが』


「教えてくれんの?」


 ぼそりと呟くカンナではあるが、それが聞こえていたのかは定かではないが、画面上のキャラクターは発言をした。


『おれが かんがえている りそうきょうとやらを おしえてあげようじゃないか。』


「空のお父さんってさぁ……」


「その先は言わせんぞ」


 こうして、通信してくるのを待っていたというのであれば、言葉はかけづらい。それが自身の血のつながった父親であるならば、なおさらである。だったら、今すぐに電源を消したい気分。セーブデータなんて無視して。だが、これはこれで自分たちの身は安全に話を――訊けるわけもない。ゲームソフトを入れ替えられているのだ。これにコンピュータウィルスが入っていたあかつきには本気で締め上げたい気分。


『これに こんぴゅーたうぃるすは はいっていないだろうな?』


 まだ買って半年も経たないのだ。壊れたらば、色々負かせて賠償を請求してやる。


『そらの いまつかっている げーむきが つかえなくなる うぃるすなら とうさいしているぞ。』


「あのヤロー!!」


 本当に入っていた。絶対に締め上げてやる。なんか木の上に括りつけて、宙ぶらりん状態にしてやる。金のない高校生の行動力を舐めるなよ。


『まあまあ げーむきなんて またかえば いいじゃないか。それよりも そらは おれの あたまの なかを しりたいだろ? しりたければ せんたくしな。ただし いいえを せんたくすれば きょうせいてきに このげーむきは つかえなくなってしまうがな』


『→はい    いいえ』


「つーか、このヒトって自分の目的を言いたいんじゃね?」


 大地のその呟きにカンナは苦笑いをしていた。一方で自身のゲーム機を壊されたくない空は悔やみながら、苛立ちながら『はい』とするしかなかった。

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