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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇秋の事変
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50話 恥ずかしい気持ちが昂る

 大地が希望するアトラクションは絶叫系以外の物であった。


 それもそうだろう。一度、春に来たときは空と同様に嫌がっていたのだから。必死になって乗らまいとしていたが、連れ込まれた挙句の果てに、その名の通りのようにして叫びまくっていたのだ。できることならば、乗りたくはないと思っているようだ。だが、それでもカンナは食い下がろうとしない。


「乗りましょーよ。コレ、ただ前か後ろに行くダケでしょ」


「ただじゃねーだろ。アレ、最高が垂直になるだろ」


 行くならこっちだ、と4Dを体感できる場所を指差した。だが、カンナや洋子はあまり行きたくないようである。それもそうだ。こちらはホラー要素を取り入れた物であるのだから。お化け屋敷に関しては不得手の彼女たちは断固としてバイキングを紹介した。


「ヤです。コレ、いきなり椅子がガタガタ鳴るし、霧が顔にかかったりしてキモチワルイ」


「そーか? 面白そうなんだけどなぁ。だったら、男女で別れて行こーぜ。それなら、楽しめるだろ?」


 早くも作戦が崩れてくるか? そう空は絶叫系でもなければ、ホラー系でもない場所を探し始めた。パンフレットを見て、どれがいいのか、と悩んだ。


 それでもどうにか見つけた遊園地に併設された場所。これならば、叫ぶ必要も怖がる必要もないだろう。


「あ、あの。だったら、折衷案ですけど……」


     ◆


「やるじゃん、空」


 現在、四人が来ている場所は遊園地に併設されていた植物園である。併設だから、無料で楽しめるのだ。


「やるじゃんって……。カンナさぁ、ホントにセンパイたちをくっつけたいワケ?」


「もちろんだよ。今日のわたしは恋のキューピット! ホラ、この服おニューなんだけど、後ろのほー天使の羽が描かれているでしょ」


 カンナ曰く、今日の服はキューピットをイメージした服装らしい。白いTシャツにバックは天使のような翼が描かれていた。ボトムスは膝上の薄いピンクのティアードスカートなのだ。


「このスカート、後尾ちゃんからもらったんだよね。フリルとかあんま好きじゃないわたしにって。どーかな? カワイーでしょ? 意外にこれ好きなの」


 なんて一回転させて見せびらかすカンナは相当お気に召しているらしい。


「おー。いーじゃん」


 素直じゃない自分がいる。本音は「カワイーよ」と言いたいところなのだが、恥ずかしさが邪魔をしてくるのである。だから、ここで留まる。カンナは素っ気ない反応を見せた空に少しだけ残念そうな顔を見せた。


 傷付けてしまった気がする。しかし、後戻りができそうにないようだった。


「センパイたちの後着いて行こ」


「う、うん……」


 空は嫌われたくないとでも思っているのか、定かではないが――勢い余ってカンナの手を握った。顔を見合わせる二人は真っ赤である。彼はその赤い顔を見せないようにして「行くぞ」とリードした。


「あの人たち、別のとこに行ったみたいだし」


「うん」


 全く、大地と洋子の恋仲を応援すると言っていた二人は何をしているのやら。そう物陰ながら見守っている次郎は甘酸っぱいな、と自分の青春時代を思い返していたのだった。


     ◆


 空に植物園へ行こうと言われ、来てはみた。だとしても、ここで生っている植物の名前が知らない大地はほんの少しばかりつまらなそうにしていた。それ以前として、彼は言うほど植物好きではないから。


 ぼんやりと展示されている物を見ている大地を見て、洋子はどうにか場を盛り上げようとして「この花可愛いですよね」と会話を途切れさせないようにしていた。


「そういえば、サボテンってあの針が葉っぱらしいですね。何でも、溜めている水分を失わないように細くなったらしいですよ」


「へえ、そーなんだ」


 一応は投げかけられた言葉を返すぐらいはしてくれているが、『つまらない』という面持ちがにじみ出ているようである。だが、自分たちはこうした折衷案で妥協しないと、いけないのだ。空や大地は絶叫系は苦手。カンナや洋子はホラー要素が苦手。こうも合わないとなると、楽しくもないのも当然だ。


 せっかく、空たちが自分の気持ちに協力的になってくれているのに。これでは駄目だ、と洋子が次の言葉を何かしら作ろうとするが――。


「冬野、ムリに話題を作ろーとしなくてもいーんだぜ?」


 大地の気遣いが胸に刺さって痛いと思う。何も言えなくなる洋子はほんの少しだけ距離を置いてしまった。どうすれば、と悩ましい表情をしていると――前を見て歩いていなかったせいか、展示している植物に頭をぶつけてしまった。


 小さな悲鳴に気付いたのか、洋子のもとへと駆け寄る。


「大丈夫か?」


 地味に痛かった、ということがあってか、額を抑えて「はい」と半涙目のようである。


「痛かったです」


「見せてみろよ」


 大地は洋子の前髪を上げて額の傷の有無を確認した。ほんの少し赤くなってコブができているが、問題はなさそうである。


「ちょっと、腫れているみたいだな。もうすぐ出口みたいだし、どっかでジュースでも買って冷やすか」


「す、すみません」


「ははっ、なんで冬野が謝るんだよ。こーゆーアクシデントは人生につきモノだろ?」


 よくおふざけをして怪我をする大地のことだから言える話である。


 二人はあまりのんびりと観賞せずに、園内から出て自動販売機で適当にジュースを買って洋子の額に当てた。


「あの二人が戻ってくるまでココでのんびりしていよーぜ」


 施設内に設置されたベンチに腰かけて、まだ中の方にいる空たちを待った。周りは楽しそうな声が聞こえてくる。みんな純粋に遊園地を楽しんで羨ましいな、と洋子は思っていた。大地にも迷惑をかけてしまった。自分の恥ずかしいところを見せてしまった。


 洋子はどちらかと言うならば、この場から逃げ出したいと言う気持ちが駆り立てられていたのだった。

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