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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇秋の事変
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49話 恋のキューピットたちは彼らを見守りたい

『遊園地に行きませんか』


 グループ内のメッセージにて、空は洋子からその誘いを受けた。遊園地と聞いてあまりいい思い出がない彼は少し渋ったようにしてスマートフォンの画面を見つめていると――。


「空ぁ」


 カンナがスマートフォン片手にこちらへとやって来た。現在は休憩中、まだ次の授業の担当である教師も来ていない。教室内はざわざわと騒がしかった。


「センパイからの行くでしょ?」


「二人が強引にススメてこないならな」


「いやいや、乗りモノ系統じゃなくてさ。あの二人のコトだよ」


 大地と洋子のことのようだ。先日の知らない人のジレンマデートを見て、カンナは洋子の恋心を手伝いたいらしい。そう断言する彼女を見て、そこは女子高生なんだな、と思っている反面――彼女の机の上を見てみる。


 机の上にあるのは雑誌ではあるが、それが『月刊任侠・マフィア映画』なのだ。そこだけは渋い。おっさん臭い。手に持っているスマートフォンカバーなんて女子高生らしさはあるのに、そこだけおっさん。


「もしかして、くっつける作戦?」


「そそっ、前は全く知らないヒトだったからどーしよーもなかったケド。今回は知れているじゃん? どーかな?」


「いーんじゃない? ただ、冬野センパイってジェットコースターとか好きそうだしな。服の裾とか引っ張りながら誘ってきそう」


「そこら辺はキューピットカンナさんに任せなさい」


 自分が洋子にその話を持ちかけてくる、と豪語するが空は苦笑いをしていた。


「カンナって、たまに女子高生さがないときあるけどな」


「うっさい」


    ◆


 遊園地へと遊びに行くのは週末となり、その当日がやって来た。


 別にバスに乗って行くのも悪くはないが、四人――特に空、カンナ、洋子の安全のために次郎に車を出してもらっていた。


「雪野さん、車ありがとうございます」


「いえいえ、構いませんとも。今回も夏祭り同様に物陰ながらみなさんを見守らせていただきますよ」


 そう言う次郎もどこか嬉しそうである。そしてもちろん、彼にカンナは個人でメッセージを伝えていた。大地と洋子をくっつける作戦である。彼もまた、そういうのを見守りたいと思っているようなのだ。


 カンナからその話を聞いて、空は少しばかりびっくりしていた。まさか、次郎が二人の恋仲を応援するとは思わなかったからである。などと言う彼女の報告メッセージを受けて、大地と洋子を見た。彼らは悪くない様子で会話をしている。いや、通常の二人と言ったが正しいか。というよりも、美男美女だから似合っているとも言える。彼らの変な中身を隠せば、モテること必至。


 洋子は椛学園内でもモテる方なんだろうな、と思っていると――。


「だよな、夏斐」


 急に話を振られてくるものだから、空は慌てふためいた様子で「そうですね」と返した。正直言って、何の話かはわからないが。だから、適当に返した。


「ほらな、夏斐は逆さま派だってよ」


「てっきり夏斐さんは回転派だと思ったのですが……」


 何の会話からすらわからない。そして、適当に答えた物だから詳しい内情がよくわからない。なんだ、その逆さま派と回転派とやらは。そんな派閥に賛同した覚えはない。


「ちょっと、空。何ウソついてんのよ! 空はわたしと一緒の屈折派だったんじゃないの!?」


 新たに訳のわからない派閥に入っていた。そして、カンナは屈折派なのか。何がなんだかわからないのだが。


「空のおばさんだってさぁ、生粋の屈折派だって言っていたのあれはウソ!?」


「ゴメン。何のハナシかわからないや」


 どう言った話か訊いたとしても、全くの理解ができなかった空は逃げるようにして車の窓の外を一人眺めることにした。右耳から左耳へと彼らの言い分が通り抜けていく。つまりは、その言葉を一度受け止めるのは頭がこんがらがるとして無視をすることに決めたのだった。


     ◆


 遊園地について、大地たちより数歩遅れて歩く空とカンナ。これからどのような行動をとるかの最終確認である。すでに次郎は物陰に隠れながら、スタンバイ (彼らを見守ること)をしていた。


「元より、遊園地でのデートは鉄板とも呼べるからね」


「あー、よくラブコメマンガとかにもあるな」


 確か、カンナの家で漫画本を読んでいるときにそんなシーンが会ったのを思い出す。テンプレートとしては最後に観覧車か、とも思っていたのだが――。


「みなさん、あれに乗りませんか?」


 洋子が指差す先は観覧車である。なるほど、彼女は早くもラストスパートを決めると。


「なワケないでしょ」


 それは流石に、と大地が返事をする前にしてカンナが止めた。彼に聞こえない音量で「早過ぎますよ」と指摘する。


「わたしらもキチンと協力はしますよ。でも、観覧車は……観覧車はまだまだ早い!」


「そ、そうなんですか?」


「いーですか? 遊園地デートのキホンは色んなアトラクションに乗ったりして、焦らして焦らして……観覧車ですよ」


 流石は天然お嬢様と言うべきか。一応、観覧車に乗るのは最後に告白するのだとは伝えたのだが――上手く伝わっていなかったか。


「と、とりあえず、楽しむためにも他のとこから見て回りましょ。ほら、あーゆーアトラクションとか」


 なんてカンナが指差す先にあるのはバイキング (海賊船型振り子アトラクション)だ。だが、それを止めようとする者がいた。空である。


「二人とも、春での出来事を忘れたとは言わせないから」


 いくら、ジェットコースターやフリーフォールでなくとも、このアトラクションも肝が冷えるほどはある。バイキングに行こうと言われて大地もあまりいい顔をしていなかった。


「アレ、心臓がフワってなるからヤダ」


 元より、アトラクションが苦手な人は苦手であることも大事なのだ、と空と大地はカンナたちに強く熱弁するのだった。

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