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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇秋の事変
48/89

44話 スマホクラッシュ

 土生からスマートフォンを没収されてしまった空は顔を青ざめてしまう。そんな顔をしているのは何も彼だけはないカンナも眉根を寄せて「困ったね」と腕を組む。


「スマホ取られたの」


 そう、二人には都市伝説の件があるのだ。常に大地や洋子に連絡が取れるような状況でなければならないのに。


 そのことを言えないのが悔しいし、何よりそれが原因で誘拐されたら絶対土生を恨んでやると空は生徒指導室のドアを睨みつけていた。


「どーすんだ?」


 玲たちもどこか心配そうに自分たちを見ていた。三人にも都市伝説のことは言えやしない。だからこそ、「仕方ないよ」と言うしかなかった。


「あとで返してもらうか」


 ほとぼりが冷めるまで待つか、と教室の方へと戻ったとき、カンナに一件のメッセージが入ってきていた。相手は洋子からである。


『夏斐さんって風邪でもひかれているんですか?』


「空さぁ、冬野センパイになんかした?」


「は?」


 全くもって身に覚えの内容な雰囲気の空にカンナは洋子からのメッセージを見せた。それを見て、更に怪訝そうな顔を見せる。


「別にオレ何もしてないし、カゼもひいてねーし」


「んー? 何だろーね?」


 とりあえず、空自身が連絡手段を持っていないため、カンナが洋子へと返信を送る。


『空はいつもの空ですよー』


『いえ、いつもの夏斐さんの文面じゃなかったんですが』


 いつもの空じゃない文面? なんて思っている隙に大地からもメッセージが届いた。


『なつかいって頭でもイカレたか?』


 ここでわかったこと。土生が大地と洋子からのメッセージに何かしらの返信を送った可能性が高いということだった。


 その憶測が立った。なんとしてでもスマートフォンを返してもらおうと教室を出ようとするも、授業が始まってしまう。教師もやって来たため、行きたくても行けなくなってしまった空は不安気に授業を受ける羽目になる。


     ◆


 それから休み時間を利用して土生を校内中探し回るものの、彼の姿は見えず。やがて、放課後を迎えた。放課後も彼を探していたのだが、すでに帰路に着いたという聞いて一目散に学校から出る二人。


 土生の家は予め玲から聞いている。どうも自分たちの近所に住んでいるらしい。


「あのハゲっ! 人のモノに何してくれてんだ!?」


「大方、冬野センパイとのやり取りが恨めしかったんじゃない?」


「恨めしいって何?」


 なんて近くの商店街に差しかかったとき、二人はそこで見慣れた散らかりハゲの人物を発見する。


「あっ、あのスマホ、空のじゃない!?」


 土生は明らかに空のスマートフォンを手にしていた。あの水色の物、間違いない。自分の物だ。


「間違いねぇ! 何勝手に使ってんだよ!!」


 そう怒る空の隣には「マジか」と大地が原付バイクに跨りながら苦笑いをする。


「あのおっさんが夏斐のスマホを盗ったのか」


 いつの間にかの出没にびっくりする。そんな空にカンナは大地と洋子に一連のことを伝えたらしい。それならば、そろそろ彼女も登場してもおかしくないだろうと思った矢先に「このドロボー!!」と洋子がハイキックをかました。


 もろに土生のあごへと入り、その場に倒れる。そして、彼が手にしていた空のスマートフォンは地面へと落とし、次郎が運転する車に踏みつけられて――壊されてしまった。


「オレのスマホがぁああああ!?」


「わっ!? も、申し訳ありません! 弁償します!」


「いやいや、冬野よ。今のハイキックはよかったぞ。なんてったって、パンツが――」


 こんなところでばかをしている場合ではない。カンナと洋子は大地にローキックをする。一人、悶絶する彼をよそに空は頭を抱えた。彼らや友人たちの連絡先はまた訊けばいいとして、一番の問題は夏祭りのときに製薬品工場の地下で写した写真のデータを紛失してしまったことである。一応は次郎にその分のデータを渡してはいるが――。


「はあ、どーすんだよ……」


 ちらり、と土生を見た。彼は能天気に伸びている。


「コイツがオレらに変なメッセージを送ってきたってか」


 大地は脛を押さえつけながら、涙目でこちらの方に来る。それに空は頷いた。


「でも、スマホも壊れたし。何より盗ったとか、送ったとかは言わないでしょうね。誤魔化しそう」


「だとしても、ココで寝転がせるのも時間の問題だよな? 冬野がキメたし」


「ど、どうしましょう?」


 今になって、洋子はハイキックをかましたことを後悔していた。そして、何よりその相手が他校の教師であるのも問題であろう。これに大地は「問題ねーよ」と他人事のよう。


「他校の生徒でもジョシコーセーのパンツを見ながらノックアウトしても嬉しかった、とゆーに決まっているさ」


「センパイ、その発言はいくら何でもキケンだと思うんですが」


 とにかく、と空は壊れた自身のスマートフォンをスラックスのポケットへと捻じ込んだ。


「雪野さん、申し訳ないんですけど……オレんチにこの人を運んでもらえます?」


「わかりました」


 ひとまず、空たちは土生を空の家へと招くことにしたのだった。

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