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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇夏の事変
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36話 賭け

「あっ、次は射的で遊びましょうよ」


 リンゴ飴を片手にカンナは空の腕に手を絡めながら大地にそう言った。それで射的屋の屋台を差す。


「射的ですか? ああ、クレーン射撃の要領でしょうか」


「うーん、多分冬野センパイが思っているのは違うと思いますよ」


 やはり、お嬢様だからだろうか。こういう祭りに参加したことがないらしい。三人の頭を捻らされるような発言を繰り出してくる。


「射的かぁ、いーな。やってみるか」


 大地はすでに食べ終えたリンゴ飴の串を口に咥えたまま「一回ちょーだい」と射的屋の女主人にお金を渡す。それに伴い、コルク弾を五つ受け取る。


「それでこれらを壊していくんですか? それで、できるんですか?」


「……冬野のアタマの中はどーなってる? コルクで商品を壊したって、店も客も喜ばねーよ」


「ならば、どうするんですか?」


「おっ、じゃあやってみっか?」


 洋子に射的を教え出す大地をよそに、空たちもやり始める。銃口にコルク弾を詰めている彼にカンナが「ねねっ」と声をかけてきた。


「どうせなら、勝負しようよ」


「勝負?」


「そそっ、取れたショーヒンの数が多ければ勝ちね。負けたら、ワタガシ奢りね」


「おー、いーぜ」


 早速、空は軽い物を狙った。中段に設置されたガムがいいだろう。集中して、狙いを定めて引き金を引いた。だが、自分のコルク弾と誰かの弾が交差するようにして、相撃ちされる。


 誰の弾かはすぐにわかった。これはカンナではない。彼女は別のを狙っているのである。隣にいた人物が邪魔したのである。その人物は「よっ」と不敵に笑ってきた。


「夏斐、ダブルデートか?」


「邪魔でもしに来ました?」


「別にそーじゃないケド」


 そう言う人物――呉羽は引き金を引いて、空が狙っていたガムを手に入れた。


「ほらほら、撃って取らないと。そっちの足の速い子に奢らなくちゃならないんじゃないの?」


 カンナとの賭けを聞いていたのだろう。なんて言っていると――「おー」そう、大地がいいところに来たな、と仕返しをしたがるような顔をして近付いてきた。


「よくも美奈ちゃんとの仲を引き離してくれやがったな?」


「ははっ、オレだけじゃないだろ? 秋島の態度と児玉の言い分もあるし」


「だけども、オレって犯人を見つけたら、ゼッテーしめ上げるって決めてるんだよね」


「おいおい、そんな危なっかしいコトをしてみろよ。秋島が補導されるだけだ」


 反論ができそうになくて、大地は悔しそうにこちらを見てきた。これに空はどう反応を取っていいのかわからないようである。どんなアドバイスができるかもわからずして「ならば」と言う。


「オレとカンナみたいに勝負をしたらいーじゃないですか?」


 ちらり、とカンナの方を見た。彼女の戦利品はゼロであるが、バカスカと商品をゲットしていく洋子からいくつかもらおうとしている瞬間を目撃する。見ていたぞ、と空はカンナの鼻を摘む。それで彼女は「あー」と変な声を出していた。


 そんな二人をよそに、悪くないとして大地と呉羽は悪い笑顔を見せるとーー彼らは四百円を台に叩きつけた。


「これでもオレは慈悲深いんだ。とゆーワケで、オレが勝ったらフライドポテトを奢れ」


「安いなぁ。まあ、慈悲深いなら、そーか」


 呉羽はそれだけでいいのか、と嘲笑してくる。


「言っとくが、オレの賭けはいつだってガチモンだからな」


 銃口にコルク弾を詰め込み始めると、商品にそれを向けた。


「秋島ぁ、オレが勝ったら……冬野お嬢さんをオレにくれ」


「は?」


 その言葉に硬直する大地をよそに呉羽は一発をチョコレートのパッケージに向けて撃った。ぱんっ、と軽快な音を立てて下へと落ちる。


「い、いきなり何を言ってんだ?」


 腹が読めない。それでも、勝負を降りたいとは思わなかったのか、大地は狙いを定めてガムを狙って当てた。その商品を手にしながら呉羽を見る。


「オレだって、秋島や夏斐と同じよーにフツーの高校生だ。カノジョが欲しい年頃でもオカシくはないんだよ」


「…………」


 完全に大地には動揺が見えた。その言葉に惑わされないように、と空は横で「しっかりしてください」と言葉をかける。


「そのヒト、この前の海でもオレにとんでもないコトを言ってきたんですから」


「……あ、ああ」


 とんでもないこと? いや、それよりも呉羽はこんな嫌味がある性格だっただろうか。そうだ。そうで合っている。初めて彼の家に行ったときに、結構色々言われたし、やられた気がするから。


 これは負けられない。なんて考えながら二人が構えたときだった。


 眼前にある棚に商品はなし。これは一体、どういうことなのかと思えば――。


「射的って、クレー射撃と違って的が動かないから当てやすいですね」


 すべての商品を洋子が取ってしまっていた。思わず、二人は声を上げてしまう。今のところ、五発中一発に加えて、戦利品はお菓子一個。自分たちがうだうだとしゃべっているときに取られてしまったようである。


「センパイ、スゴい。ゲーム機とかも取っちゃったりしてお店の人、涙目」


 事実、その通りである。射的屋の女店主は手に持っていた煙草の灰を落とすようにして茫然と棚を見ていたのだから。今にも泣きそうだ。


 そのため、大地と呉羽の射撃勝負はお蔵入りとなってしまったのだった。

クレー射撃 (クレーしゃげき)とは、散弾銃を用いて、空中などを動くクレーと呼ばれる素焼きの皿を撃ち壊していくスポーツ競技。

 ※洋子は射的では簡単にやってのけていましたが、実際は射的もクレー射撃も奥深い競技であります。

   (まさにフィクションです)

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