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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇春の事変
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19話 立ち向かわなければならない陰

 学校に戻らずして、空とカンナは洋子の家へとやって来た。ここにいる五人の間の空気は相当重たい。


 二人から事情を聞いた大地は怪訝そうに片眉を挙げて頭を掻いた。


「つーことはアレか。ゲタ箱でそのハナシを聞かなければ……」


「はい」


「す、すみません。グラウンドに人とかいるから、流石に襲ってこないって思ってたから……」


 カンナは腑がなさそうにしている。それでも彼女を責めようとは思わなかった。


「や、三春が悪いワケじゃない。誰かがいるような場所でも現れると思わなかったオレたちにも非はあるし、何より冬野から連絡がなければヤバかった」


 どうも、空たちが逃げ回っているところを偶然にも洋子が見たらしい。それで二人は逃げきれたと言えよう。


「それよりも、かなり厄介ですね。この前見た顔のない人は一人だけじゃなかったって」


 先ほど車で撥ねた顔がない複数の人物を思い出す。これはもはや都市伝説ではない。ただの事件だ。だからこそ、警察が動かなければならない。だが、証拠がないからどうしようもなかった。それは、たとえ目撃者がいてもである。


「家を出ない、ってもそれが安全であるかってゆーとそーでもなくなったからな……」


 問題は神出鬼没であることだ。気配があるから、幾分かはマシとも言えるが――それでも、逃げきれるわけではない。車で撥ねたりして、隙を作らなければ。


「二人が独りで留守番とか一番厄介じゃねーか? コーコーセーなのに、留守番できないのがイタイな」


「だったら、わたしが空の家に行くか、空がわたしの家に行けばいーって。いつものとーりにしとけばよくない?」


 カンナのその発言に大地は大きく目を見開いた。それ、どういうこと? とでも言うようにして、知りたそうにしているようだ。


「えっ、何? オマエら、互いの家に行ったりしてガチでラブコメみたいなコトやってんの?」


「何ですか、そのラブコメは」


「でも、いつも二人一緒ならば、安全ではありますが……やはり、追いかけられたときですよね」


 大地の話に軌道修正をするがごとく、洋子がそう言った。まだ不安は拭えない。


「私の家にって言っても、みなさんはみなさんで都合はありますでしょうし」


「夏斐って、空手とか柔道習ったりは?」


「してないです」


 そうなると、ただ単に走って逃げるだけでは意味がないだろう。


「ケーサツのほーもあんま動いてくれないよな、絶対。駆けつけてきたとこで逃げられるがオチかもしれないし」


 問題は遭遇したときの対処法だな、と大地が言ったところで一件の着信が入った。それに彼は出る。


「……あー、ここにいるよ。ちょっと待ってろ」


 大地は空にスマートフォンを渡すと「高崎からだ」そう教えてくれた。


「そういや、オマエらまだガッコーだったんだろ? それじゃね?」


「あっ、そっか……もしもし、高崎?」


《おっ、夏斐一緒にいるのか。三春さんも? 一応さ、ミッキー (クラスの担任)には誤魔化しておいたから》


「……悪い」


《いやいや、いーってコトだけど……いきなり二人ともどーしたの? 勝手にガッコーを抜け出さなさそーなのに》


 事情を話すべきだろうか、とも思ったが――話を聞いていたのか、大地は首を横に振ってくる。そうだ、これは自分たちの問題である。玲たちを巻き込むわけにはいかない。


「な、何でも……何でもないよ」


 何でもない、と答える他なかった。だが、その誤魔化しが効くかと思えば、そうでもないだろう。今頃、向こうでは疑心になっているはず。


 何でもないのに、学校を抜け出しているものだからおかしいはずだ。言い訳を間違えたのかもしれない。しかし、もう遅い。


《……そーか?》


 反応をしてくる玲はあからさまに疑問を抱いている様子。


《別にそれはいーけどさ……戻ってきたら、ミッキーのとこに行っとけよ。あの人もあの人で心配していたみたいだし》


「わ、わかった」


 空は通話を切ると、それを大地に返した。自身のスマートフォンを受け取る彼は「ヘタクソだな」と苦笑いをする。


「もーちょいさ、納得できるようなウソつけなかったか?」


「オレ、カンナじゃないですし」


 むしろ、こういうのはカンナが得意だ、と空は語る。


「いいよ。わたしがミッキーにウソの理由を言うから一緒に怒られようよ」


 そして、こういうときにカンナがいてよかった、と安心していた。


 だがしかし、二人が学校に戻ってカンナが言い訳をしたとしても、それで解放できるわけではなかった。彼女の場合は委員会の仕事放棄。空もその加担者として反省文を書く羽目になってしまう。


 これについて二人は不満垂れなかった。なぜならば、自分たちの身の安全を確保する上で正しいことをしたから。そうだとしても、誘拐未遂の件や顔がない人物の話をしても、学校側は認めないだろうし、信じてくれないだろう。そう、証拠さえなければ――。


 これは空たちが自分たちで解決しなければならない日常に潜んだ事件。いくら逃げようが、隠れようが、見えない悪の権化は待ってくれない。隙を見て、自分たちに襲いかかってくる。それを彼らはいかにして回避するべきなのかを図らなくてはならないのだから。

○次回章予告○


『◇夏の事変』


 紅花高校の体育祭も終わって、いよいよ夏がやってきた。夏と言えば、暑い以外にも他に楽しいことがいっぱい。例えば、新キャラ登場だったり、四人でクーラーの効いた部屋でゲームしたり、海に行ったり、夏祭りに行ったり……。


 何より、青春ばかりではない。都市伝説も忘れてはならないぞ。


 さあ、みんなも青空のような真っ青な青春を楽しもうじゃないか!

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