Lost in space. Last chapter.
漆黒の宇宙にパッと広がる真っ赤な光。
両軍の戦闘を停止させる信号弾である。
その信号弾が示す通り、両軍はその瞬間から如何なる理由があろうとも戦闘を停止しなければならない。
「戦闘停止 ?」
そう言ってマギーナはボーンバルドルを見やる。離れすぎていてよく分からない。だからマギーナは拡大表示させた。
「女…。海賊は全て捕縛した。」
笨から通信が入る。
「捕縛…。」
そう言ってマギーナは映像を見やる。
最早戦える状態でない兵器。
制圧された旗艦。
「女…。大人しく投降しろ。」
「投降 ? 冗談でしょ。」
「これ以上無駄な犠牲者を出す必要もないだろう。」
そう言うと笨はピンクレモネードの頭部に銃口を押し当てた。マギーナはむすっとした表情でフェネックを睨めつける。
「海賊諸君に告げる。我々の目的はrx3000の確保にある。それを速やかに提供して貰えるなら今回の戦闘における責任は頭領の命だけで済まそう。」
そして、鳳艦長獏がボーンバルドルに通信を入れた。これは海賊討伐における処置の中で異例ともいうべき軽い処置である。
「ほぅ、海賊相手に頭領の首だけで済ましてくれると…。」
ボーンバルドル艦長ギュネルが答える。
「君達も周知の通り我々CUEとSuAgは現在戦争中である。その為君達の身柄を無駄に拘束する事が出来ない。よって今回の戦闘における当初の目的であるrx3000の引渡しと頭領の命を差し出すのであれば、これ以上の戦闘行為は行わず我々は引き上げる。しかし、あくまでも逆らうというのなら全員を殺したうえでrx3000を回収させて貰う。」
獏がそう言い終わると巡洋戦艦鳳、他2隻の巡洋艦の主砲がボーンバルドルに向けられた。そして、捕縛された残り10機の海賊兵器、ピンクレモネードに銃口が向けられる。
「さて、君達の答えを聞かせて頂こう。」
「ふぅ、参った。本当に参った。」
「何がだ ?」
「いや、何…。私はこの船の艦長だがそう言った発言に対しての権利は有していない。」
「有していない ? では誰がその発言権を持っていると言うのだ ?」
「其れは…。そこにいる姫様だ。」
そう言ってギュネルは鳳の目前で止まっているピンクレモネードを指差した。其れと同時にギュネルは目で合図を送る。
「姫様…?。」
獏艦長がピンクレモネードを見やる。
「まさか…。この女が ?」
笨が言う。
「何か文句でも ?」
「別に…。」
「そぅ…。で、私の首が欲しいわけ ? 欲しいなら上げるけど。でもねぇ…。」
「でもなんだ ? 海賊風情がこの世に未練があるわけでもあるまい。」
獏艦長が言う。
「未練 ? 未練なら有るわよ…。」
「ほぅ、烏滸がましい発言だな。」
「ふん男には分からないのよ、処女のまま死ぬ女の気持ちなんてね。其れにこのままじゃぁ死んでいった仲間も浮かばれないわ。」
「そうか…。この状況を見て尚も争うと。」
「海賊である私の仲間に恩赦をかけてくれるのは嬉しいけど。海賊に後退は無いのよ。あくまでも前進するのみ。…繰り返すわよ。我々に後退はない。あくまでも前進するのみ。」
「女…。よく考えてーー」
と、言っている笨のフェネックRをピンクレモネードが蹴り飛ばした。瞬時にアトミックソードの刃を形成させ付近のフェネック5機を瞬殺する。
そぅ、先ほどまで一定の距離を保っていたフェネックが戦闘停止によりピンクレモネードを囲んでいたからだ。そして、ボーンバルドルから主砲が発射され残りのレーザー機銃とレールガンの弾が付近のフェネックに向け打たれた。
が、状況は極めて悪い。
ほとんど機能しない人形兵器。
朽ち果てかけているボーンバルドル。
万に一つの勝ちもない。
最後の悪あがき。恩赦で生き恥を晒すなら死を選ぶ。なんとも海賊らしい最後である。
「成る程…。海賊として死を選ぶか。構わん。皆殺しの上rx3000を回収する。」
獏艦長が言った。
そして巡洋戦艦鳳と巡洋戦艦から砲撃が開始された。同時にフェネックが攻撃を再開する。その直後…。
巡洋戦艦鳳が巨大な光の塊に横っ腹を貫かれた。
そして立て続けにもう一発。今度は巡洋戦艦の横っ腹を貫く…。そして巡洋戦艦鳳と巡洋戦艦は木っ端微塵に弾け飛んだ。
「な、何だ…。何が起こったんだ。」
慌てて笨は周りを見やる。然れど周りにそんな影は無い。”どこから攻撃してきたんだ ?”恐怖が胸中を締め付ける。だが、どこにも機影は見当たら無い。その異様を越す現象に兵の動きがピタリと止まる。
「何 ? 」
と、マギーナが周りを見やる。
「ギュネル艦長…。東南300に艦隊機影。」
ヴィヴィアーネが言った。
「艦隊…。真逆。」
と、ギュネルはガタリと席を立つ。
「何処から…。どこから攻撃してきた ?」
そして笨は望遠モードで周りを見やる。
「あ、あれか ?」
そしてわずかに見える夥しい艦隊。だが、現在地から300kmも離れている。”光の筋は見えたか ?”笨は自分に問いかける。問いかけずとも答えは決まっている。
「だったらあの攻撃は何なんだ ?」
問いかけても誰も答え無い。否、答えられる人間はもうい無い。先の攻撃で全員が死んだ。だから其れを時空間転移砲つまりワームホールを利用した攻撃であると笨に教えるものはいないのだ。そして、その突然現れる光の塊は尚も味方のフェネックを次々と破壊していった。
そして、その攻撃に動揺している隙にピンクレモネードが目前のフェネックを潰し、更に近くのフェネックにグイッと近づき破壊する。そしてそのまま笨のフェネックRに向かってつき進む。
「何なんだ…。お前達は一体何者なんだ。」
笨が叫ぶ。
「何よ今更…。私達は先陣の百合海賊団よ。」
「先陣の百合だって。冗談だろ。だったら俺達は世界3大海賊の1つを相手にしてたってのか。」「そう…。そして私はその海賊団の御姫様よ。」
そう言ってピンクレモネードがアトミックソードを突き出した。
「ふん…。御姫様が処女ってわらーー」
そして、ピンクレモネードは笨のフェネックRの頭部を破壊した。
「全く、デリカシーが無い男は嫌われるのよ。」
そう言ってマギーナは残る1機のフェネックを睨めつける。
「武器を捨てるなら攻撃はしないわよ。」
「で、お前達の捕虜になれってか…。」
「冗談…。好きにすればいいわよ。」
「好きに ?」
そう言ってCUE兵は周りを見やる。吹き飛んだ巡洋戦艦鳳と巡洋戦艦。かろうじて形が残っている巡洋艦…。
「通信設備が生きていれば仲間を呼べるかもね。」
マギーナが言った。
「そうだな…。俺の名は迅永法。覚えておけよ。生きていたら必ずお前達を捕まえる。」
「お好きに…。ん、其れは嫌ね。」
そう言うとマギーナはグイッとフェネックに近づきアトミックソードで頭部を破壊した。そして、ボーンバルドルを見やる。
ボーンバルドルから撃ち続けられるレーザー機銃にレールガン。そして先ほどよりも近づいている艦隊から放たれるビーム砲攻撃によりCUEの部隊はほぼ壊滅していた。
「オビー、ヒムエンコ、マインズ…。生存者の確認を急いで。ボーンバルドルクルーは速やかに救出作業に向かいなさい。残りの兵器は私が何とかするわ。」
そう言うとマギーナは全速力でボーンバルドルの元に向かう。そして自分の宇宙にCUEの残存兵器を表示させる…。
20機以上あった兵器が哀れにも2機程度…。だが、その2機の兵器はボーンバルドルの攻撃とビーム砲の攻撃を嫌うようにその場から離れていった。
マギーナはこの宇宙の中でどこに行くのだろうかと思いながら彼等を見やる。そして小さな爆発の光が5つ…。
「自滅したのね…。」
ボソッと呟きマギーナは進路をボーンバルドルに変更した。
ボーンバルドルの格納庫に戻るとマギーナはヘルメットを脱ぎコクピットハッチを開けた。ピンクレモネードの横にソフィアが立っている。
悠那は無事回収されたのかとホッと肩を撫で下ろすが、失った仲間の数は計り知れ無い。
「マギーナ。お疲れ様。」
花蓮が言った。
「悠那は ?」
「医療室に運んだわ。」
「そう…。」
「柄にもなくナーバスね。」
「当然でしょ。パパとママが来てるのよ。きっと私怒られるわ。」
そう言ってマギーナは医療室に歩いていった。
ーー「で、ギュネル艦長…。今回のこの戦闘は何が原因なんだ ?」
マギーナの父、先陣の百合海賊団団長バルドル-ギフンダが問うた。
「CUEの艦隊がrx3000をよこせと言ってきたのが原因です。」
「rx3000 ? ふーん。rx3000ねぇ。確かに彼奴等は欲しいだろうなぁ。」
第一艦橋の宇宙にデカデカと投影されるバルドルの姿。威圧感以外何も感じられ無い男である。「ええ…。」
「1本1000億。だが、金額じゃぇ。是が非でも必要だった核燃料。全ては鬼神丸討伐の為か。」
「恐らく…。」
「で、マギーとオビーは其れを断った。」
「はい。」
「ナゼだ ?」
「何故 ? 憎きは血のつながりを求めたCUE。別にSuAgに恨みが有る訳じゃない。ですが、rx3000を渡せば少なからずCUE有利に物事が動く。」
「確かにそいつは気にいらねぇなぁ。」
「はい…。」
「まぁ、何せよマギーとオビーの決めたことに口出す気はねぇが、危ない戦い方をする。…オビーも年かねぇ。」
「冗談…。オビー司令官はまだ74歳。年というにはまだまだ若い。」
「だな。まぁ、あれだ、生存者の確保後、全員こっちの船に移れ。どのみちその船は修理せなあかんだろ。で、祝杯でも上げながらあれだ…。どっかの輸送船でも襲いに行こうや。」
「あ、その事で少しお話が…。」
「話 ?」
そう言ってバルドルが首を傾げた。
ーー「システムの侵食率がかなり高いわ…。」
ギルフィッテが言った。マギーナは医療カプセルの中で眠っている悠那を見やり”そっか…。”と、小声で答えた。
「治療の途中で出て行ったから…。」
「そうよね…。其れでシステムは抜けるの ?」
「恐らく…。全部は無理。」
「そぅ…。」
「うん。まぁ、一部の記憶を捨てるなら抜けるとは思うけど。」
「記憶を ? だったら新しい脳に交換すればいいじゃない。」
マギーナが言った。此処で言う新しい脳とは人体売買会社から新しい脳を買うとという事だ。
「悠那少尉が其れでいいって言うんならね。でも、記憶の移し替えには膨大な時間がかかるし、其れに悠那少尉は19歳でしょ…。記憶の移し替えは難しいと思うわよ。」
「大丈夫よ…。多分。」
そう言ってギルフィッテを見やる。
「でた、他人事発言。て、言うか何にしても19年分の記憶を何一つ漏らさずに移植するのは難しいわ。彼が発した一言一句欠落したらダメなのよ。ちょっとでも欠落したら彼の人格は変わってしまう。もしも…。」
「そんなこと分かってる。どのみちシステムが残ったら悠那は悠那でなくなるじゃない。」
「だったら無理して交換する必要ないでしょ。大体脳が幾らすると思ってるのよ。」
「2万$ぐらい…。」
「そんな訳ないでしょ…。20万$よ !!」
「何よ0が一つ多いだけじゃない。」
そう言ってマギーナとギルフィッテは大きな溜め息をついた。何にしてもシステムの除去作業が終わらなければ何とも言えない。だからマギーナはもう一度悠那を見やると医療室を出て行こうとした時の事だ。外から賑やかな話し声が聞こえた。
何とも大きな声だ。
甲高く傲慢で何とも言えない我儘さが伺える声。マギーナはピクリと頬を引きつらせると、クルリと向きを変えもう一度悠那を見やる事にした。が、その声は医療室の前でピタリと止まりあろう事か中に入ってきた。
「げげげげ…。」
マギーナは喉から思わず奇声を発した。
「あら、いないと思ったら此処にいたのね。アリス…。そしてギルフィッテも。」
そう言った女性は凛とした表情で金髪の髪を団子に括っている。背はマギーナと同じくらいで、年は62歳。と言ってもまだまだ若く意地悪そうなところがとてもマギーナに似ている。
「ティ、ティホネ様…。」
ギルフィッテが言った。
「ギルフィッテ…。お腹の子供は大丈夫なの ? 皆んな心配してますよ。」
「は、はい。大丈夫です。」
「なら、宜しい。で、アリス。」
「あ、あら、お母様…。お久しゅう。」
後ろ手に振り返り、マギーナが答える。
「お久しぶりね…。で、何人死にました ?」
単刀直入にティホネが問うた。
「そ、其れは…。」
「全く、私達が偶然archⅡ襲撃の情報をキャッチしたからよかったものの。あのまま誰も手を貸さなければ全滅は火を見るよりも明らかだったはず。」
「そ、其れは…。」
「例えこちらが最新鋭の中型戦艦を有していようと巡洋戦艦1隻、巡洋艦2隻を相手に勝てるような事は有りませんでしょう。しかも此方は万全の状態ではない上に人員不足。」
「分かってるわよ…。」
「あなたの思い上がり ? 其れともオビーの…かしら。」
「…。」
「ほんと…。映画や漫画の見過ぎよ。ねぇ、ギルフィテ。あなたもそう思うでしょ。」
そう言ってギルフィッテを見やる。
「え、私 ? あ、いや、あの…。」
「まぁ、何にしても戦闘ご苦労様です。あ、其れとお父様が話があると言ってましたよ。」
視線をマギーナに戻し言った。
「お父様が…。」
「後でキングバルドルにいらっしゃい。」
そう言って踵を返すとちらりとギルフィッテを見やる。
「ギルフィッテ…。その子供が生まれるまでは二度と兵器には乗らない事いいわね。」
「は、はい。ティホネ様…。」
「その子はあなたのお腹の中で生を受けた。その時点でその子は私達の仲間です。あなたの子であり我々の仲間…。仲間である以上、あなたの身勝手な判断でその子を危険な目に合わせることは許されません。その代わり我々はその子が将来どんな道を選ぼうと我々は決して裏切らない。例え国家の兵隊になろうともです。」
「は、はい…。」
「二度とその子を危険な目にあわせぬよう。心得ておきなさい。いいわね。」
「は、はい。ティホネ様。」
「宜しい。それでは。」
そう言ってティホネは医療室から出て行った。
其れから少し間を空け”うわぁ、緊張したぁ。”ボソリトギルフィッテが言った。マギーナは両指で目の下を下げ”イーダ”と言って舌を出した。そしてまたすぐに扉が開く。そしてティホネがマギーナを見やる。
「ティ、ティホネ様 ?」
ギルフィッテが言った。
「いい年してそんな事しているからいつまでも処女なのよ。」
ジロリマギーナを見やり言った。
「う、うるひゃいわね。」
そのポーズのままマギーナが言う。ティホネはそれ以上其れには触れずツカツカと医療カプセルに向かって歩き始める。
「ティ、ティホネ様…。その子は…。」
「そぅ、この子がそうなのね。」
そして医療カプセルの前で止まった。
「な、何よ…。」
「我々の為に命を張ってくれたSuAg軍の少尉と言うのは…。」
そう言ってティホネはジッと悠那を見やった。
「余り…。素敵な顔ではないようね。」
そしてボソリ。
「いや、あのティホネ様…。」
「可愛いじゃない。」
マギーナが言い返した。
「いえ、これはブサイクというのよ。」
「うそ !!」
「ブサイクでしょ。どう見ても。其れにあれも小さそうだし。」
ちろりとティホネは悠那の下半身を見やる。
「あ、あれの大きさは関係ないでしょ。」
「はぁぁぁ…。これだから処女は話にならないのよ。ねぇ、ギルフィッテ。」
「は、はい…。あれの大きさは重要です。」
「そ、そうなの…。」
「当たり前よ。まぁ、何にしても、このブサイクな英雄には感謝ですね。はぁ、もっと凛々しい英雄を期待していましたが、これも映画のようにはいかないと言う事ね。」
そしてティホネは医療カプセルから一歩下がり深々と頭を下げた。
「我々の仲間を救って頂いてありがとう。」
そう言ってティホネはまた踵を返し医療室から出て行った。
「しかし、相変わらず失礼な事をズケズケいう人ね…。」
ティホネが出て行くのを見計らいギルフィッテが言った。
「ふんだ。あれの大きさで男の価値は決まらないんだから。」
そう言ってマギーナも扉に向かって歩き始める。
「あら、もぅ行くの ?」
「やる事が山積みなのよ。」
そう言ってマギーナが睨めつける。
「あらら、ご機嫌ナナメになっちゃって。」
「ふんだ…。」
そう言ってマギーナも医療室から出て行った。
其れからボーンバルドルの中は忙しなく。動ける人間は救助作業を行い。又別の人間はボーンバルドルからキングバルドルに引っ越す準備に迫られた。そして花蓮はボーンバルドルを修理工場に運ぶ為単身戦艦に残った。バルドルは勝利の宴に参加するよう花蓮に進めたが花蓮は早く修理したいからという理由で其れを断った。
「全く…。ロールアウトして直ぐに病院送り…。お前も不運ね。」
艦長席にゆったりと腰を下ろし椅子を撫でる。
「花蓮…。一人で大丈夫 ?」
マギーナが通信を入れてきた。
「大丈夫よ。自動航行システムがあるから。」
「そっか、途中で何かあったら直ぐに連絡よ。」
「大丈夫よ。うちの企業軍隊と合流するから。」
「其れならいいけど…。」
「まぁ、又連絡するわ…。あ、其れとコングコックパンドーラだけど、一応キングバルドルに置いといたから。」
「あ、あぁぁ、うん…。」
「まぁ、少尉さんが欲しいってんなら上げてもいいわよ。」
「ダメよ !! そんな事言ったら絶対欲しがるから。」
声を荒げマギーナが否定した。
「そうよね…。じゃ、私はそろそろ行くわ。」
「うん…。それじゃぁ。」
そう言ってマギーナは通信を切った。
そして、ボーンバルドルは静かに先陣の百合海賊団から離れていく。其れをマギーナはジッとキングバルドルから見送った。
「おぅ、姫様…。こんなとこにいたか。」
相変わらずのドデカイ声でオビーが言った。
「花蓮を見送ってたのよ…。」
「そうかぁ、花蓮も行っちまったかぁ。」
そう言ってオビーも管制室から宇宙を見やる。と、言ってもモニターに映る宇宙だ。
「さぁ、私も宴に参加しよっと。」
そう言ってマギーナが大きく伸びをした。
「おぅ、そうだ。俺は呼びに来たんだよ。」
「あら、オビー大尉が直々に来てくれたの。」
そう言ってマギーナは管制室から出る。
「当たり前よ。今回は姫様に助けられたからな。」
続いてオビーも管制室から出て行った。
「ふふ…。そうでしょ。流石は私。」
「そうだな。すごい娘になったもんだ。」
そう言ってオビーがマギーナをお姫様抱っこで抱き上げる。
「いやん…。」
「ふん…。重くなりやがって。」
「当然でしょ。もぅ、22よ。」
「そうか…。早いもんだ…。」
そう言ってオビーは話を止めた。”あらら、寝ちまったか”ボソリ呟きオビーは宴会会場に向かった。
ーー「しかし学大尉がSuAg軍の保護兵に興味を持つとは意外だったな。」
ヒューリ-パッカー近衛艦隊総部隊長マッケン-ジンジャー1等級大尉が言った。
「ええ、少し…。無理言ってすみません。」
「別に構わんさ。奇跡の少女を見ておくのも良いものだ。」
そう言ってマッケンは額を見やり”こっちだ”と言って通路を曲がった。
マッケンは学よりも相当年上で確か年齢は45歳と言っていた。学よりも20歳も年上だ。短く刈ったブロンドの髪。浅黒い体。必要以上にガッシリトした筋肉質な体。獲物を狩る獣の目…。最近のCUEの兵士にはない目を持っている。
歴戦の勇者…。
ロシアの英雄…。
永遠の破壊者…。
彼の異名は色々と聞かされる。その彼を目の前にして少しも大げさな表現だと思わさせない風格…。そんな彼は何故大尉のままなのか…。確かに大尉の平均年齢は45歳前後。だが、彼のように実績のある人間は佐官試験を受け直ぐに昇格して行く。
あ…。
そうか。
ロシアの英雄はきっとオツムが弱いのだ。
「奇跡の少女…。」
そう言って二人は格納庫から連絡通路に出た。
「何だ…。知らないのか ? 俺はてっきり学大尉も其れを知って見に来たのだとばかり思っていたぞ。」
「いや、其れは知りませんでした。」
そう言い乍二人は捕虜収監施設まで歩く。
「可愛らしい子だ。」
「そうなんですか。」
「何だ ? 知り合いじゃないのか。」
「いや、知り合いというか。ニューセイル襲撃。その時に鶸大佐とやりあってた連中なんです。」
「ほぅ、あの鶸大佐とか。ほぅ、良く生きてたな。」
関心の眼差しでマッケンが学を見やる。なんとも興味津々と言った感じだ。
「ええ、しかもその女子は鶸大佐に一撃食らわせたんですよ。」
「何 !! あの鶸大佐にか…。それはすごい子だな。それは不意打ちか ?」
「え…。ま、まぁ、不意打ち…。不意打ちになるのかなぁ。」
そう言って学はあの時の状況を思い返す。
「まぁ、不意打ちでも上出来だ。なぁ。」
とマッケンが言った所で学の生体認証カードがなった。
ドクンと胸がざわつく。
嫌な感じが胸中を襲った…。
「ん…。学大尉。なってるぜ。」
「あ、は、はい。」
そう言って学は生体認証カードを見やる。相手はミクライナ-ベネテン。学の部隊員であり彼女だ。学はマッケンに気を使いながら通話に出た。
「元寸…。」
「どうした ?」
「archⅡ襲撃部隊との通信が途切れたって。」
「通信が ?」
「うん。今艦内はそれで大騒ぎよ。」
「そうか。」
「所で今何処にいるの ?」
「マッケン大尉と一緒だ。」
「マッケン…。近衛艦隊の ?」
「ああ、だから又後で電話するよ。」
「うん。分かった。」
そして学は通話を終了した。そしてarchⅡがあるだろう方向を見やった。
「何かあったのか ?」
「archⅡ襲撃が失敗に終わったようです。」
「…そうか。マグイの息子も逝っちまったか。」
「ええ…。嫌な奴でした。」
「あぁぁ、ちげえねぇ。俺もあいつは嫌いだ。」
と、死人を悪く言うのはあれだが、彼を好き好んでいるのは少数の人間だけということなのだ。で、そんなことを話している内に捕虜収監施設の前までやって来た。マッケンは入り口前の守衛兵に一礼するとロックを解除させた。
「学大尉此処が曹長以下を収監している所だ。で、中にいる金髪の女子が君の言っていたあれだ。」
そう言ってマッケンが扉を開けた。
学は少し胸を高鳴らせた。
鶸大佐に命をかけて挑んだ少年。その少年を守るために命をかけて向かっていった少女。どんな顔をしているのか。否、興味があるのは少年の方だ…。
まぁ、それは別に良い。彼女には伝えたいこともある。
柄にもなく…。
そう思う。
否、これは彼等に対する褒美だ。
生きていた…。
そして今回も生き残った。
自分達の運命に…。
そうだ、
これは運命だ。
この先の未来を変えるために出会った敵なのだ。
そして、扉が開しっかりと面をけ放たれた。
「拝んでやりな。」
マッケンが言った。
そして、学は困った表情を浮かべた。
金髪の少女…。
学は収監房にいる少女を見渡す。が、そのほとんどが髪を金色に染め抜いた少女ばかり。ふぅ、と一息ついて学はマッケンを見やる。
成る程…。
矢張りロシアの英雄はオツムが弱いらしい。と、学はもう一度吐息を吐いた。
最後まで読んでいただいた皆様有難うございます。
第2章はこれで終わりでございます。
第1章から書くこと2年弱。本当はもっと早くに終わらせる予定でしたが、学の過去の下りがあったりして結構伸びました。
まぁ、元々の設定では海賊は出てこず、悠那達が鬼神丸に保護される所から書く予定でした。でも、核の爆風に飛ばされてみんな一緒に居られるのも変だと思い乍書いていると海賊が出て来たと言う事です。
もう少し書きたい内容もあったのですが、それは第3章に持ち越すという事で。それでは皆様。本当にありがとうございました。




