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Lost in space. 少年達の思い 3

ピ、ピピ、ピ、ピピ、ピーピーピー、ピ、ピピ…。

 嫌な音と共にシグナルロストの表示が現れる。ただの一般兵であればシグナルがロストするだけで表示も音も鳴らない。

 これは部隊長、総部隊長が戦死した時に呑み音がなり表示される警告音だ。それは戦闘中直ぐに次の部隊長が指揮を取れる様にと配慮されているからだ。そしてその表示は勿論旗艦にも送信される。

 巡洋戦艦鳳その第一艦橋の宇宙にもムラームの戦死を告げるシグナルロストの表示と警告音が鳴り響いた。

「戦術科長…。」

 漠艦長が言った。

「はい。確認しています。」

「そうか、それで代理の総部隊長は笨が勤めるのか ?」

「はい…。そうなっています。」

 そう言った戦術科長の言葉に技術長は漠艦長を見やった。

「君の言った通り出てきたな。」

 漠艦長が言った。

「はい…。」

「それにしても真逆ムラーム大尉が戦死するとは…。」

「そうですね…。」

「しかし理解しかねる行動だ…。」

 そう言ったのは戦術科長だ。彼はムラームが打たれた映像を目前に表示させ首を傾げた。

「確かに…。金色の兵器が出てきて直ぐに襲いかかって行った様にしか見えない。」

 漠艦長が答える。

「ええ確かに。ですがムラーム大尉のお陰で我々は有利になったのも事実。」

「有利に ? ムラーム大尉は10秒足らずで相手に討たれたんだぞ。それで何がどう有利になると…。」

 戦術科長が問うた。

「いえ、この場合たかが10秒ではなく10秒も足止め出来たと言うべきです。」

「ほう、それは又奇怪な事を言う。技術長…。で、その真意は ?」

 漠艦長が言った。

「恐らく、あの金色の兵器に搭乗するパイロットの精神が3分も持たないからだと言う事です。」「なぜそう言える ?」

 戦術課長が突き詰める。

「何故 ?」

 技術長は宇宙に視線を戻す。

「彼は、ムラーム大尉は民大尉の助けになりたいと言った。だから私は助言したのです。」

「助言 ?」

 戦術科長が問い返す。

「ええ、ジェネシスシステムの対策についての助言です。」

 そう言って技術長はムラームの戦死した映像を見やった。

 技術長にとってムラームは可愛い部下でも何でもない。所属する科が違うという事もあるが、そもそもムラームはリミリッタ直属の部隊の総部隊長。技術長は偶々本作戦のために乗り合わせた長だからだ。それに、ムラームは未だに技術長の名前すら覚えていない。だから、この作戦がなければ話すことも無かったかもしれない。たかだかその程度の仲だ。

 だから本来ならムラームに肩入れする必要などなかった。要するに自分が変な肩入れをしなければムラームは死なずに済んだかもしれないという事だ。

 そう考えると目覚めが悪い…。

 否、あれは彼の覚悟。

 それが有ったからこその肩入れだった…。


 ーー「技術長…。」

 それは、兵器格納庫で最終チェックを行っていた時の事だ。後ろから呼ばれ技術長は振り返った。

「ん…。ムラーム大尉。どうしました ?」

「あ、いや、少し聞きたい事があって。」

「聞きたい事 ? 何でしょう。」

「俺の兵器を敵のあの兵器みたいに出来ないかと思ってさ。」

「敵の ?」

「あの金色の奴さ。」

「あぁぁ、あれですか。まぁ、近い状態にまでなら出来ますが、でも余り役には立ちませんよ。」「役に立たない ?」

「ええ、あれはあくまでもフレーム全てをGandB鉱物で仕上げているから出来る芸当です。唯の特殊合金では信号の伝達率が微妙に遅くなります。そう、僅か0.0002秒程度です。ですが、その僅かな差が動きを鈍らせるのです。」

「成る程…。出来る事は出来るが重くなるって事か。」

「まぁ、あなた方流でいうならそうでしょう。」

「だったら其れを計算して動けば良いって事か。」

「それで済むのなら全ての兵器がそうなっていますよ。会議の時にも言った様に脳の中に侵入してくるシステムに普通の人は耐えられません。持って3分。あの兵器が3分以上動いていたのは奇跡。よっぽどのヘタレだって事です。」

「だが、3分はあれで戦える。」

「さて、それも微妙ですね。戦える人もいれば、そうでない人もいた。融合するだけで精一杯。動かす事もままならずに終わった人もいます。」

「成る程…。すでに実験済みって事か。」

「勿論…。」

「大きなかけって事か…。」

「かけ ? いえ、ただの無謀です。況してや総部隊長の君がするなど愚か以外のなんでもない。」「そうだな…。」

 そう言ってムラームは大きな溜息をついた。

「まぁ、君以外の誰かがそれに乗るというのであればそのかけも有りかもしれませんが。」

「バカ言うなよ。そんな危険な物に俺以外の誰を載せるって言うんだ ?」

「君の部隊の中で最もヘタレな人物とか…。それならリスクは最小限度ですみます。」

 技術長の言葉に真っ先に浮かんだのは民の顔である。

「ヘタレねぇ。残念ながら俺の部隊にヘタレはいないよ。」

「そうですか…。それは残念です。」

「いや、そうでもないぜ。」

 横から民が言ってきた。

「民…。お前聞いてたのか。」

 驚いた表情でムラームが言った。

「あぁぁ、悪い。ちょっと面白そうだったんでな。」

「そうか…。でもこの話は無しだ。」

「どうして、良い話じゃないか。俺は乗るぜ。」

「乗るぜって、お前…。」

「だってよ。お前の部隊で一番のヘタレって言やよう。俺しかいないだろ。それに俺もあれは落としたいと思ってたんだ。」

「いや、だから、お前。ちゃんと話を聞いてたのか ? あれにはリスクがあるんだ。」

「だから…。ヘタレの俺なら最小限度で済むんだろ。だったら良いじゃないか。」

「まぁ、そうですね。その代わり一度きりです。そして絶対に無理はしない事。これが絶対条件ですが。」

 技術長が言った。

「技術長あんたも何言ってんだよ。こいつは俺の部下だぞ。部下にそんな危険な真似させられるかよ。」

「いや、お前の部下だからこそやるんだよ。」

「民…。」

「俺さ…。分かってんだよ。部隊長勤める力量がないって事ぐらいよ。お前が俺を引っ張ってくれたから今の俺がいるだけで。俺一人だったら大尉にもなれたかどうか。だろ…。」

「だろ、じゃねえよ。あれはお前の力だ。お前は自分のーー」

「もぅ、いいよ。お前は本当に良い奴だ。そうやってお前はいつも俺を庇ってくれる。だから俺も一つぐらい…。ここぞって時ぐらい何かさせてくれよ。それでさ、皆んなでリミリッタ艦長のところに帰ろう。」

 そう言って民は技術長に自分の兵器を使うように志願した。ムラームはそれ以上何も言わずただ民に感謝した。そして、同時にバカなことを言い出したと後悔した。

 自分が言わなければ民がそれに搭乗するとは言わなかったからだ。そう思うとやりきれない。否、またやってしまったと言うべきか。

 この作戦も、今回の事も…。全て自分が言い出して大多数の人間に迷惑を掛けている。”まったく、何なんだ俺は…。”ブツブツとため息まじりにボヤきながら格納庫から無駄に歩いているとフリールームの近くまで歩いていた。折角近くまで来たのだからと中に入る。中でチャイを買い椅子に腰をおろした。

 チャイを飲みながら何を考え、何を思っても自分が惨めすぎるだけだった。どう考えても自分が悪い。何をどう思おうと迷惑をかけているのは自分だった。

 チャイを一気に飲み干しカップをゴミ箱に捨てる。そして、フリールームを出ようとした時に偶然技術長と会った。

「技術長…。あんたも休憩かい。」

「ええ、最後のひと時です。」

「縁起の悪い事を言う…。生きて戻れるさ。」

「ええ、勿論信用しています。あ、そうそう…。先ほどの件ですが。」

「さっきの ?」

「ええ、あれ、君が言う前に民大尉が私の所に、君よりも先に相談に来ていたんですよ。」

「真逆…。」

「じゃなければ都合よく格納庫に民大尉がいるわけないでしょ。」

「そっか…。」

 少し間を空けムラームが言った。

「良い部下を持っていますね。」

「あ、あぁぁ。彼奴は良い奴だよ。あ、そうだ技術長。」

「何です。」

「俺は少しでも民の助けになりたい。何か案はないか ?」

「案 ? 何のです。」

「金色の兵器を叩く案だよ。」

「そうですね…。私の経験から言うと。言動です。」

「言動 ?」

「はい。あれに侵食され続けると自ずと言動が荒くなり暴言を吐くようになります。」

「暴言 ?」

「ええ、逆に言えば侵食率が浅いと言動は普通です。」

「それで…。」

「要するに言動が激しければ激しいほど長時間の運用は困難という事になります。意識の低下や嘔吐、吐血…。やがて昏睡状態に陥る事になるでしょう。その間僅か1、2分…。持って3分。もし戦場で金色の兵器に遭遇したのなら先ずは相手の言動を確認するのです。もしも言動が普通なら無理に接近せず民大尉をサポートする側に回る。もしも言動が粗ければ無理してでも対峙するのです。その間僅か10秒でも良い。その状態での10秒には多大なる価値がある。」

「成る程…。だけどよ言動が荒くても民をサポートする方に回った方が効率が良くないか ?」

「いえ、それは違います。言動が荒いと言う事はシステムの侵食率が高いと言う事です。それは簡単に言うと殺戮マシーンを相手に戦うという事です。即ち兵器の持つポテンシャルを100%使いこなせるという事…。サポートなんてそんなぬるい事は言ってられませんよ。少しでも民大尉に接近する時間を延ばす。そして相手の自滅を狙う。これが最善の策です。」

「成る程…。だったら俺は命をかけて10秒間彼奴を止めてみせる。」

「命を賭ける…。ですか。」

「あぁぁ、俺だけ生きて帰るわけには行かないからな。」

「俺だけ…。以外と熱い男なんですね。」

「熱い ? そんなんじゃないさ。ただ、この戦闘はもとを正せば俺の責任なんだ。だから…。」「ほう…。俺の責任ですか。」

「あぁぁ、俺がバカな事を言い出したから…。」

「バカな事。何です…。それ ?」

「俺が物資の補給をすべきだって言い出したんだよ。」

「ぷっ…。何ですそれ。」

「何って、だから…。」

「いやいや、君の言動でこれだけの部隊が動くと…。そんなわけないでしょ。あれは君が言わなくてもそうなっていましたよ。ニューセイルの襲撃で仕留められなかった鬼神丸は予想外でしたからね。だから急遽鶸大佐じゃくたいさは鬼神丸討伐部隊を編成したんです。勿論archⅡ襲撃案もその頃から有ったんですよ。」

「な、真逆…。」

「そう、正に嘘から出た真ってやつだな…。」

 そう言って技術長が笑った。ムラームは罰の悪い表情を浮かべ乍ら結局つられるように笑った。それから未だ30分も経ってはいない。

 戦闘開始から未だ10分弱…。その10分弱と言う短い時間の中で、さらに短い10秒という時間を稼ぐためにムラーム-マグイは死んだ。

 民大尉を守る為に。否、この作戦を成功させる為にだ。

「何だそれ…。そんな話、俺は聞いてなかったぞ。」

 戦術科長が吐き捨てるように言った。

「言えば反対したでしょう。」

 技術長が言った。

「当然だ !! 彼はマグイ家のご子息何だぞ。分かっているのか ? 将軍家のご子息をこんな物資略奪戦みたいな…。こんな、こんな無駄な戦闘で殺すような行為に賛成など出来る訳がないだろ…。大体君は自分の発言にどう責任を取るつもりだ ?」

「責任 ? 私は事実を彼に告げただけです。嘘は言っていませんよ。」

「そうだ、技術長は何も責任を感じる必要はない。技術長は中華人。ムラームはインド系の人間だ。いくら将軍家のご子息と言っても所詮は…。」

「まぁ、待て…。その話は後でゆっくりとすれば良い。何にせよ今は遂行中の作戦を無事終了させる事が最優先だ。」

 漠艦長が彼らを嗜める。

「所で技術長…。」

 漠艦長が呼んだ。

「何でしょう…。」

「民大尉はあれを止められると思うか。」

「ええ…。彼は必ずあれを止めてみせるでしょう。」

「そうか、ならば我々も腰を上げねばな。」

「はい。」

 そう言って技術長は前線にいる民大尉がいるだろう方向を見やった。勿論その方向には民大尉は居ない。民大尉はその方向とは逆の所にいた。そして其処でシグナルロストの表示を見やっていた。ピーピーと鳴り響くコクピット。チカチカと点滅するシグナルロストの表示。

 受け入れられない現実。

 お前の為に俺は奴の足を命に代えても10秒は止めると言っていたムラーム。真逆、本当に死んじまうなんて…。民の手がブルッと震える。ガタガタ、ガタガタと体が震えだす。

 ムラーム…。

 ムラーム…。

 ブツブツ、ブツブツと民がつぶやいている。

「民…。」

 其処に笨から通信が入った。

「民…。聞こえてんだろ。民…。」

「あ、あぁぁ…。聞こえてるさ。」

 ブルブル震える声で民は答えた。

「ムラームが…。」

 涙交じりの声…。分かっている笨も辛いのだ。

「あぁ、後は宜しく頼む…。」

 民は拳を力一杯握りしめ言った。

「あぁ、任せとけ。お前の部隊はしっかりと面倒を見させてもらう。だから、だから…。」

「分かってる。」 

 そぅ、分かっている。

 無駄になんかしない。ムラームが奴を止めた10秒を無駄になんかしない。

 民は大きく息を吸い込み、システムを起動させる。

 直後冷ややかな感覚に襲われた。

 無駄に背中が冷たい。

 恐怖 ? 

 この後どうなるのかわからぬ恐怖 ? 

 確かに想像ができない。

 だが、後戻りは出来ない。

 例えこの先自分が廃人になろうともムラームの命を無駄にする事は出来ないのだ。 

 そして、民の宇宙に”ワーニング リミッターカット”の文字が表示された。そして民の視界がグニャリと歪む。それから数秒後視界がパッと広がった。

 生きているの ? 死んでいるのか ? 全くわからぬ不思議な感覚。全てのもが小さく。否、小さくではなく自分が大きくなった。まるで自分が兵器になった様なそんな感覚だった。否、兵器になったのだ。民は試しに自分の腕を動かしてみる。その手はあろう事か冷たい特殊合金で形成された兵器の手…。

「これが、リミッター解除の恩恵か。」

 そう言って民は迫り来る金色の兵器を睨めつけた。

 その熱い視線はソフィアにも届く。

「何だ ? 彼奴来るのか。」

 ソフィアはグッと構えを取る。

 民の駆るフェネックRも両手にロベーンソードを抜き取りビームの刃を形成させる。そして、次の瞬間とてつもない速さで敵フェネックRが襲いかかって来た。一気に間合いを詰めビームの剣を振り下ろす。

「何だ此奴…。動きが違う !!」

 そう思うがソフィアはその攻撃を右のアトミックソードで軽々と受け止める。が、フェネックRは間髪入れず左のロベーンソードで水平切り攻撃を仕掛けてきた。だが、その攻撃もソフィアは左のアトミックソードで受け止める。

 ビームとビームが混じり合うダブルの衝撃が民を襲う。その衝撃に民はゲロを撒き散らす。それでも負けずに今度は足のスパイラルで蹴り突く。その攻撃はソフィアの腹に入りソフィアが後方に飛ばされた。

「ムラーム大尉の仇 !! 取らせてもらう。」

 民の叫び声がソフィアに届いた。

「ムラーム ? 誰だそれ ?」

 そう言ってソフィアが瞬時に体制を立て直しライフルでフェネックRを狙い撃つ。其れをギリギリの所で交わしながらフェネックRが間合いを詰めていく。

「お前が一番初めに殺した奴だ。」

「あぁぁ、あの瞬殺された奴か。」

「そうだよ…。そうやって人を見下しながら死ね。」

 そう言ってフェネックRがソフィアの頭部目掛けてロベーンソードを振り下ろす。

「お前がな…。」

 それをスイッと交わし今度はソフィアが頭部目掛けてアトミックソードを振った。ベストなタイミング。並の…。否、どんなパイロットも交わせぬドンピシャなタイミングだ。

 然れど、それをフェネックRは交わした。否、交わしただけでなくその後瞬時に攻撃を仕掛けてきた。ソフィアはギリギリの所でそれを交わし一旦後方に下がる。が、それを逃すことなくフェネックRがさらにロベーンソードで追い討ちをかける。

「何なんだこの動き…。」

 動揺を隠しきれぬ中ソフィアがアトミックソードで攻撃を防ぐ。

「特別なのはお前だけじゃないって事だよ。」

「特別…。あぁぁ、そういう事かよ。だったら本気でやらせてもらうぜ。」

 そう言うとソフィアはロベーンソードを振り払い、今までよりも数倍早い動きで攻撃を仕掛け始めた。それをすんでの所で交わすが、その動きリミリッターカットをしていなければ文字通り瞬殺されていた。が、流石に今度は攻撃を返す暇がない。それでもフェネックRは必死にソフィアの攻撃を交わす。

 相手の動きの少し先を読みギリギリの所で交わす。

 システムの不利を経験で補う。

 格の違い…。それを見せつける様に1手、2手相手の先を読みフェネックRが攻撃を避ける。だが、一つ読み違えればそれで終わる。その中で攻撃のチャンスを待つ。待って、待ってロベーンソードを振る。勿論ソフィアには当たらない。当たらないが相手の動揺を誘うには十分な攻撃である。 

 何よりもその速さは常軌を逸している。

 側から見れば何が起こっているのかイマイチ分からない…。そんな光景をオビーもヒムエンコもマインズもリリー達も朽ち果てた兵器のコクピットで見やっていた。

「あの兵器…。」

 ヒムエンコが言った。

「おうよ。悠那少尉だ。」

 マインズが答えた。

「マインズ…。未だ生きていましたか。」

 ヒムエンコが言う。

「俺はお前よりもしぶといぜ。」

「そうでした…。」

「ねぇ、それより何なのよあれ…。」

 飛び交うファイターに殴りかかりながらリリーが言った。搭載されている弾丸はすでに底をついている。だから足のスパイラルかビームの刃を形成するヒッチングソードで攻撃するしかなかった。

「ギリギリの所で英雄のお出ましだ。」

 マインズが言った。

「そうじゃなくて、あの動きはまともじゃないわよ」

 目で追えぬ程の速さ…。運動能力、反応速度、どれを取ってもとてもじゃないが真似できる代物じゃない。

「CUEにも同じ様な兵器があるって事だ…。」

 オビーが言った。

「同じ ?」

 リリーが問う。

「ジェネシスシステム搭載の兵器があるって事だ。」

 マインズが言った。

「と、言う事はピンチと言う事ですか…。」

 ヒムエンコが言った。

「何言ってるんですか。もぅ、だいぶ前からピンチですよ。」

 サニナが言った。

「我々ではなく悠那少尉がです。」

「悠那少尉が ?」

「そうです。神経が高ぶればその分システムの侵食率が上がるんです。」

「じゃ、じゃぁ悠那少尉の加勢は期待できないって事か…。」

「馬鹿言ってんじゃねぇ。海賊がSuAgの兵士に期待するな !!」

 オビーが激を飛ばす。

 が、この状況オビーの兵器も其の部隊もヒムエンコの部隊、マインズの部隊も兵器はボロボロだった。辛うじてボーンバルドルから供給できるエネルギーでビーム兵器は使用できるが肝心の兵器は朽ち果てている。腕が潰れ、足のスパイラルも鋭利な刺がグニャリト潰れ、腹に穴が開き、シールドも使い物にならなくなっている。

 この状況で何ができる ?

 まともに動かぬ兵器、落としても、落としても減らぬファイターの撹乱攻撃。其の中で攻め続けてくるCUEの人形兵器…。万に一つの勝ちも見出せぬ状況。其の中に現れたソフィアも敵のフェネックRに行く手を阻まれている。

 この状況…。

 どうする ?

 否、どうにも出来ない…。

 そぅ、どうにも出来ないこの状況の中で、CUEファイターが次々に撃ち落とされていった。

「何だ…。」

 咄嗟にオビーは後方を見やった。

 後方からグイグイと近づいてくる旗艦ボーンバルドル。艦首を破壊されても尚其の船はミサイルを撃つながら前線へと向かって来ている。

「ボーンバルドル。いつの間に…。」

 リリーが言った。

「ギュネル…。あの馬鹿が、どうして姫様を連れて後退しない。」

 オビーがボヤく。

「あぁぁあ…。どうせ又姫様の無茶でしょ。」

 サニナが言った。

「たく、あのクソビッチ。自覚が無さすぎるのよ。」

 リリーが言う。

 だが、誰が何を言おうと大きな助けである。が、其れをそのまま指をくわえて見ているCUEではない。敵巡洋戦艦鳳、巡洋艦2隻も前線に近づいてきている。

 終焉に向かい戦場が大きく動き出す。其れはソフィアが戦場に出てきて未だ1分足らず…。すでに終焉に向かおうとしているこの戦闘…。

 いち早く、どちらが先に前線に戻るのか ? だが、すでに民の精神力は限界にきている。

 床に撒き散らしたゲロもすでに吐く物はなく。代わりに出てくるのはドロっとした血である。


 これが限界か…。民は胸中で呟く。

 そう、民は理解している。ジェネシスシステムではなくただのリミッターカット。そしてフレームもただの特殊合金。

 鼻から勝てるはずなどない。

 否、もとより勝つ必要などない。時間が経てば自ずと自滅する。システムがパイロットを破壊する兵器。そう、態々勝ちに行く必要などないのだ。

 そうだ、限界を越えろ…。

 超えて縋り付け…。

 それだけでいい…。

 勝たなくて良い…。

 そう、民は時間を稼ぐだけでいい。

 時間は後1分…。

 否、2分かもしれないし、逆にもっと短いかもしれない。その証拠に今金色の兵器の目の色が赤に変わった…。


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