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Lost in space. 偶々偶然 Or 縁それとも運命 ? 3

 ムラームは自分の宇宙に海賊部隊の状況を表示させた。自分の宇宙に敵の予測進路が表示される。海賊部隊総数46。内20が左右に分かれ残りが正面から攻め込んでくる。正面から攻めてくるのは恐らくあの大きな盾を引っさげた海賊部隊の総部隊長だ。向かう此方は、先の戦闘で失った人形兵器の数が多く予備の兵器を投入して35。この11の差は非常に大きい。が、此方にはビーム兵器がある。

 否、其れでも油断は出来ない。向こうには圧倒的強さを見せつけた金色の兵器。其れに海賊がビーム兵器を持っていないと言う確証はない。そして、ウォーム…。このウォームを突破できない限り此方に勝利はない。

 だが、我々は勝つ…。

 その為のファイターの投入なのだ。今回の作戦では巡洋戦艦、巡洋艦に搭載されている全てのファイターを投入した。その総数は110機。内105機のファイターが一塊となって海賊部隊に向かって行く。残りの5機はムラームと行動を共にするウォーム破壊部隊だ。

 ”その破壊部隊と共に俺達がウォームを破壊する…。”

 ムラームはグッと力強く操縦桿を握り前衛のファイターに通信を送った。

「イソギンチャク乗り共 !! バウム曹長から聞いていると思うが、お前達の仕事は敵の撹乱だ。分かっているな。無理に敵兵器を撃墜しようなんて考えて命を無駄にするなよ。どうしても命を捨てたいならこの先の戦争まで取っておけ。此処はお前達が命を掛ける場所じゃない。良いか、全員だ。全員生きて帰還しろ。そして這い上がれ…。」

 そう言ってムラームは通信を切った。

「お前がファイター連中に通信か…。珍しい。」

 其れを聞いていた笨が言ってきた。

「茶化すなよ。」

「茶化してないさ。また一つお前が好きになっただけさ。」

「冗談だろ…。」

「勿論。」

 そう言って笨は通信を切ると左ルートに進路を取る。民は其れに合わせる様に右ルートに進路を取り攻め込んで行った。ムラームは予定通り自分の部隊を引き連れ正面から攻め込んで行く。そして、ファイターが勢い良く海賊部隊に向かって突っ込んで行った。

「ファイター交戦エリアまで後100。」

 孫が伝える。

「うむ、りょ司令官。砲撃系統は君に一任する。」

 漠が指示を出す。

「了解しました。主砲1〜3を敵部隊ど真ん中に照準。30秒後に発射。」

 梠司令官がCICクルーに指示を出す。主砲担当のクルーが敵部隊の真ん中に照準を合わせる。

「主砲発射10秒前…。」

 其れに合わせるようにファイターがスッと大きな輪を作るように主砲の道を開ける。其れにより海賊部隊と後方のボーンバルドルが曝け出された。

「主砲発射 !!」

 梠が号令を掛ける。

 そして、漆黒の闇を照らし出す程の光量を放つビーム砲が放たれた。

 一筋の光の線が5本。鳳から3本。2隻のミリアから2本。人の目では追えない速さで一気に伸びる。が、ボーンバルドルはウォームで其れを防ぎ、人形部隊は大きく左右に分かれ其れを避けた。

「間一髪ね…。」

 マギーナが言った。

「バニングのセンスってヤツですよ。」

 ギュネルが答える。

「からかわないで下さい。未だ未だ始まったばかりです。」

 そう言い乍もバニングは宇宙から目を離さない。否、誰も宇宙から目を背ける者はいない。

「ムラーム…。ウォームの数が多すぎないか ?」

 民が言ってきた。

「あぁぁ、多いな。此れは予想外だ。」

「予想外何処ろじゃないだろ。あれじゃ、1個、2個破壊しても意味がないぞ。」

「大丈夫だ。GMBミサイルは全部で80基ある。」

「あるけど…。」

「焦るな民。隊長のお前がそんなんでどうすんだ。俺が何とかする。信用しろ。」

 ムラームが言った。民はそれ以上の言葉を飲み込み頷く。

 そして、大きく広がったファイターが中心に集まり海賊部隊にレーザー機銃で攻撃を開始した。

 回避行動を取りながらオビーがマインズとヒムエンコに指示を出す。ファイターは相手にするなという指示だ。此処でファイターとまともに交戦すれば後方から押し寄せてくる人形部隊に良い様にやられてしまう可能性が高まるからだ。

「マインズ、ヒムエンコ…。出し惜しみは無しだ。ビーム兵器で一気に相手を潰しに行くぞ。」

 オビーが指示を出す。マインズとヒムエンコが各部隊にその指示を伝える。そしてオビーは自分の部隊を引き連れ正面から突っ込んでいった。

「ウォームは前面に配置のままレーザー機銃、レールガンの軌道を確保。」

 バニングが指示を出す。後方からオビー達の援護をする為だ。が、前衛に配置するだけではウォームの数が多すぎる。此れではプラズマが広がりすぎて軌道を確保できない。都合良く部分的にプラズマに穴を開けるなんて事もできない。否、仮にできたとしてもその穴を通る時にプラズマの干渉を受け軌道がずれる可能性がある。

「ウォーム20〜30を後方に移動。傘は広げなくて良い。」

 バニングが余分なウォームを後方に下げさせる。

 勿論ムラーム達も其れには気づく。

「光が縮小した ? まぁ、良い。此れはチャンスだ。一気に攻め込むぞ。」

 そう言ってムラームは一気に速度を上げていく。が、其れと同時にボーンバルドルから威嚇射撃いかくしゃげきが開始された。

「あん…。ウォームが邪魔で攻撃できなかったってか。」

 ムラームがボヤく。

「ムラーム隊長。敵前方から突っ込んできます。」

 ムラームの隊員が告げる。

「あぁぁ、構うな。俺達の目的はウォームの破壊だ。」

 と、目前の敵を見やる。大きな盾を両腕に装備したイカツイ兵器。しかも両手に持たせているのはこともあろうかビーム兵器だ。

「ふん。やっぱりってやつか。」

 ムラームが吐き捨てる様に言った。

「CUEのガキンチョども !! 成敗してくれる。」

 オビーの野太い声が響く。

「ふん。お前の相手は後だ。」

 そう言ってスルリとムラーム達はオビーを交わし先に進む。

「あん…。何だ ?」

 と、オビーは肩透かしを食らった様にムラームを見やる。そして”何だあれ ?”と、ムラームの駆るフェネックを見やる。両腕のアームが握りしめる大きな箱…。

「あれは…。」

「オビー大尉。あれミサイルランチャーですよ。」

 オビー部隊の隊員が言ってきた。

「ミサイルランチャーねぇ。何か企んでやがるな。」

 と、オビーは反転してムラームを追いかけ様とするが、行く手をファイターが塞いできた。ファイターの必要以上の攻撃がオビー達を先に進ませない。後方のボーンバルドルからの援護射撃を期待するが此処からボーンバルドルまでの距離は95km。未だ未だ距離が離れすぎている。此れでは狙って当たるものではない。

 レーザー機銃の射程は短くどう頑張っても5kmが限界だ。レールガンは其れよりも遥かに長いが其れでも40kmが限界だ。どちらにしても未だ届かない。

「艦長敵小隊、ファイター5がこちらに突っ込んできます。」

 ヴィヴィアーネが言った。

「あぁ、ファターで攻め込んでくると思ったが意外だな。ファイターを撹乱に使うか…。」

「ええ、意外でした。此れでは威嚇射撃の意味がありませんね。ウォームで一旦艦を囲みます。」

 バニングが言った。

「そうしてくれ…。恐らく何か企んでいるのだろうからな。其れより佐々木女史はどうだ ?」

「もう少しで何とかなりそうだけど…。其れより…。」

 PCを叩きながらチラリと宇宙を見やり花蓮が答える。

「其れより ?」

 マギーナが言った。

「あれ、ミサイルランチャーよね。」

「多分…。」

 ジッと敵小隊を見やりマギーナが言う。

「やばいわね…。」

「やばい ?」

 ギュネルが問う。

「プラズマを拡散させる気かも…。」

「拡散 ?」

 そう言ってギュネルがウォームの光を見やる。

「ええ…。恐らくあっちにも技術系の人間がいるって事よ。」

「ウォームの弱点を知っているという事ですか。」

 バニングが問う。

「そうよ。でも大丈夫。直ぐにウォームを手動に切り替えて、操縦系をヴィヴィアーネに委託して。」

「ヴィヴィアーネに ?」

 マギーナが問う。

「ヴィヴィアーネなら30基のウォームを自在に動かせるでしょ。」

 そう言って花蓮が両目を閉じた。

「動かせる ? まぁ、ヴィヴィアーネなら出来るでしょうね。…。で、彼女に何をさせるんです ?」

 バニングが問う。

「直接私が言うわ。とにかく操縦系をヴィヴィアーネに…。」

 そう言っている間にムラーム達小隊が目前にまで迫ってくる。オビー達はファイターに翻弄され前線から戻れない。

 宇宙空間で取り回しの悪いファイターも数で押し切れば其れなりに役に立つ。そして、其れに追い打ちを掛ける様に笨と民の部隊がヒムエンコとマインズの部隊に襲いかかる。

「ムラームはうまく抜けた様だな…。」

 チラリとムラーム達の進路を見やり笨が呟いた。

「よそ見ですか ?」

 そう言ってヒムエンコがズイッと懐に入り、腹に”一発”足のスパイラルで突く。笨のフェネックが後方に飛ばされる。ライラルソードを振りかざしヒムエンコがコクピットである頭部を狙う。ビームの眩い光が笨のコクピットを照らした。

「やっと1機ですか…。」

 と、ヒムエンコがライラルソードを振り下ろす。

 その瞬間…。

 ヒムエンコのコクピットに衝撃が突き抜けた。ファイターの電磁砲が脇腹に直撃したのだ。ヒムエンコの兵器が弾き飛ばされ笨は間一髪難を逃れた。

 このファイターで人形兵器を撹乱させる作戦は、予想以上にファイターを持たない海賊部隊には覿面だった。笨や民の部隊と殺りあうにもファイターが邪魔でまともに戦えないからだ。そして、ファイター自体はあくまでも撹乱が主任務。ヒムエンコ達に近づこうとしない。如何に取り回しが悪くとも、一定の距離を保てば狙われないのだ。

 否、其れは民や笨の部隊が狙わせないと言う方が正しいのか。彼等がファイターに近づけない様にうまく攻め込んでいる。

「全く…。喧しい蝿だな。」

 と、ヒムエンコは一旦後方に引き周りを見やる。オビー大尉もその他の部隊もファイターの撹乱に上手く翻弄されている。此れでは全くラチがあかない…。否、其れどころか此のままでは全滅させられる。すでに此方の兵器は4機も撃墜されているのだ。そして、体制を立て直した笨が光武剣を構え此方に突っ込んできた。

 笨が光武剣を振り下ろす。ヒムエンコがライラルソードで其れを受け止める。プラズマの交わる光がパッと広がった。

「うぐお !!」

 思わず笨が呻き声を上げた。コクピットに恐ろしい程の衝撃が走ったのだ。

「あん…。ビーム兵器対応型のスーツじゃないのか ?」

 ヒムエンコが言った。

「た、対応型だ…。文句あるか。」

 明らかに嘘である。笨はフェネックを後退させ吐きそうになるゲロを飲み込む。ヒムエンコはここぞとばかりに攻め込むがファイターの攻撃に後退を余儀なくさせられる。

「隊長…。兵器部隊はヘッポコだが、ファイターがうざい。」

 ヒムエンコの隊員がボヤく。

「あぁ…。作戦を変えますか。」

 と、ヒムエンコは自軍の状況を宇宙に表示させる。4小隊で一つの大部隊。1小隊は5機編成で内4機はノーマル型、1機はキャノン型の人形兵器で構成されている。

 が、ヒムエンコの部隊は既に4機撃墜させられた。1小隊が消滅した感じだ。残っている1機はキャノン型の人形兵器。

「まぁ、良いでしょう。」

 と、ヒムエンコは自分の宇宙にフォーメーションCを入力した。

「戦闘中に余裕だな。」

 と、笨がヒムエンコを狙い撃つ。ライフルから放たれるビームが光の線を描く。同時にファイターがレーザー機銃でヒムエンコを狙い撃つ。

「余裕なんかありませんよ。」

 と、ヒムエンコは其れを交わすが、別のファイターが放つ電磁砲の玉に右腕を吹き飛ばされた。吹き飛ばされた腕がクルクルと激しく回りながら飛ばされていく。

「隊長 !! 大丈夫ですか。」

「流石に撃たれすぎましたか…。」

「電磁砲はきついですからね。特殊合金でもそう保たないですよ。」

「ええ、そうですね。さっさと蝿叩きを始めましょう。」

 そう言ってヒムエンコがニンマリと笑みを浮かべる。

「ふん。海賊風情が何をほざいてる。」

 其処に笨の隊員がここぞとばかりにヒムエンコに襲いかかって来た。光武剣を頭部めがけて振り下ろす。が、その後ろからヒムエンコの隊員が一足先に敵の腹を真っ二つに切断した。

「やっと、1機…。」

 隊員がボヤく。

「いえいえ、お見事ですよ。」

 ヒムエンコが言う。

「きさまぁぁぁ !!」

 其れを目の当たりにした笨が、怒涛のうねり声と共に小隊を引き連れ襲いかかる。そして、笨の宇宙に爆煙が広がった。

「何だ ?」

 笨が行動を止め自分の宇宙にその状況を映し出す。1機、また1機とファイターが撃墜されていく。爆煙は撃墜されたファイターだった。

「何だ ? 何が起こってる。」

 笨は小隊ごと一旦後方に引く。

「流石リリー-ルカーナですね。」

 撃墜されていくファイターを見やりヒムエンコが言った。

「全く。嫁さんにしたいぐらいですよ。」

「えぇぇ、おすすめですよ。」

 そう言ってヒムエンコは笨の小隊を見やった。笨は撃墜されていくファイターを見やり状況を悟る。いつの間に作り上げたのか、後方にキャノン部隊が編成されている。そして、其れを護衛する様に各小隊が行動しているのだ…。

「編隊を変更した ?…。ふん、だからどうだってんだ。」

 と、笨は歯を食いしばる。

 そして、又ファイターが1機、2機と撃墜される。如何に兵器から距離を取っていると言ってもキャノン部隊に狙い撃ちにされれば、取り回しの悪いファイターでは逃げようがない。

「サニナ、ギャネット、チャニャ…。確り狙いなよ。」

 キャノン部隊隊長リリーが言った。

「あいよ、姉さん。」

 サニナが言う。

「先の戦闘で受けた屈辱は返すよ。」

 ギャネットが答える。

「やっぱ、これよね。キャノンはキャノン部隊で行動するのが一番。」

 そう言って、チャニャがビーム砲を撃つ。

 リリーが撃つ。

 サニナが撃つ。

 ギャネットが撃つ。

 水を得た魚の様にキャノン部隊が打ちまくる。

 そして、”何 ?”後方の爆煙を見やりムラームの隊員が言った。その言葉にムラームがチラリと後方を見やったが直ぐに前方のボーンバルドルに視線を戻す。

「艦長…。敵小隊、ファイター30…。30 ? 増えてます。」

 ヴィヴィアーネが言った。

「もぅ…。いい様に振り回されてるわね。」

 マギーナが言う。

「敵、尚も接近、迎撃ポイントに入ります。」

「傘で包みますか ?」

 バニングが問う。

「かまわん、迎撃開始だ。」

 ギュネルが指示を出す。

「了解…。目標前方敵部隊。バシットミサイル1番から20番。リリカル魚雷1番から20番発射用意。」

 バニングが司令を出す。

「バニング司令。万が一だ…。グリッド砲の用意も頼む。」

「了解…。」

「それと、ウォームの指示と操作は佐々木女史とヴィヴィアーネに任せるが迎撃の邪魔はしない様に。」

「心得てます艦長。」

 PCの画面を見やり乍花蓮が答える。

 バニングがジッと敵小隊を見やる。

「ミサイル発射と同時に電磁砲での迎撃を開始する。それとグリッド砲の準備を開始しろ。」

「了解…。グリッド砲発射準備開始…。」

「バニング司令、バシットミサイル、リリカル魚雷いつでも発射できます。」

「よし、迎撃開始。撃て !!」

「了解 ! バシットミサイル、リリカル魚雷発射。」

 そしてオペレーターがミサイルを発射させた。ボーンバルドルから一斉にバシットミサイル20、リリカル魚雷20がムラーム達に向かって飛んでいく。その様子がギュネル達のいる第一艦橋に表示される。

 曖昧な融合で作り出されている第一艦橋内の擬似宇宙空間には、ムラーム達の兵器がリアルに映し出され、それはあたかも自分達が宇宙に投げ出されたかのような感じを受ける。が、リアルとは大きく異なることが幾つかある。否、それは当然異なる。異ならなければ空気がなくて困ってしまうし、其れに無重力空間になってしまっては体の取り回しがどうにもならなくなってしまう。だから当然違うのは当たり前の事なのだが、何よりも擬似空間とリアルをはっきりと区別させる必要があった。其れをなくしてしまえば人間の脳が擬似空間とリアルの判断ができなくなってしまうらしい。

 リアルに映し出される敵兵器にターゲット捕縛マーカーが表示され、捕縛したミサイルと敵機を線で繋げる。これでどのミサイルがどの敵兵器を捕縛したかが分かる。

「バシットミサイル、リリカル魚雷ロックオン確認。」

「よし、そのまま迎撃行動に移る。」

 バニングが言う。

「了解。各銃座に指令伝達。迎撃行動に入ります。」

 そうオペレーターが告げるとボーンバルドルのレールガン42、レーザー機銃67がムラーム達に向けられた。そしてその行動はムラーム達の宇宙にも同じ様に表示されている。

 ムラーム達の見る宇宙。其れは彼らと同じ擬似宇宙空間である。国や製造企業が違えど大まかな仕様は似たり寄ったりである。

 迫り来るミサイルに向けられた銃口…。ロックされたミサイルの弾道軌道表示と向けられている機銃とレールガンがマーカーで表示される。

「ふん…。攻め一点張りか。全員散開 !」

 ミサイルの弾道軌道表示と機銃のマーカーを見やりムラーム達が退避行動を取る。が、其処にレールガンから発射された砲弾がムラーム達の行動を制限する。砲弾の弾道軌道が即座にムラーム達の宇宙に表示されムラーム達はその軌道に触れない様に動く。が、追尾してくるミサイルに気を取られながらでは上手く交わせない。

 ミサイルが発射されてから既に3機のファイターが撃墜された。人形兵器と違い取り回しの悪いファイターでは上手くミサイルと砲弾のシャワーを交わせないのだ。此れではファイターに搭載しているGMBミサイルが無駄になってしまう。

「ムラーム小隊はミサイルを迎撃後ファイターの援護に迎え。」

 そう言うとムラームは丁寧な動きで追尾してくるミサイルを撃墜すると速やかにファイターを追尾するミサイルを落としに向かうが、然れどその間にもファイターは次々に撃墜されていく。

 ムラームは兵器の速度を上げレールガンの追撃を交わしながら、ファイターを追尾するミサイルをロックする。

「バウム曹長、ミサイルは俺達に任せろ。」

「すみません。ムラーム総部隊長…。」

「かまわん。お前達は一発でも多くウォームにミサイルを打ち込め。」

 そう言うとムラームはバウムを追尾するミサイルを落とし前方のボーンバルドルを見やる。遠目から見ると淡い青色の光を放っていたウォームの光も間近で見ると強烈に眩しいだけの光である。その光がジワリ、ジワリとムラーム達に近づいてくる。

「よし、そのまま微速前進を保て。」

 ボーンバルドル艦長ギュネルが言った。

 どんな状況であってもギュネルは守りに徹しない人間である。否、海賊である以上守るという言葉はない。

 海賊に法は無い。無秩序の中に彼等はいる。だから彼等に恩赦は無い。否、其れ以前に人権を主張する権利を剥奪されている。捕まれば必ず激しい拷問の末殺される。守り、逃げ、挙句投降しても許される事は無い。

 だからギュネル達は攻める。負ければどの道殺されるのだ、どうせ死ぬのなら戦って死ぬ。海賊になるという事はそう言う事なのだ。

 絶対なる覚悟…。其れなくして海賊にはなれ無い。だからボーンバルドルを包み込めるだけのウォームがあっても包み込む事は無い。

 ボーンバルドル前面に配置されたウォームは正面から見れば光の塊の様にしか見え無いが、少し角度を変えれば側面も船底も天面もガラ空きである。と、言ってもレーザー機銃やレールガン、ミサイル発射管等があるので迂闊には近寄れ無い。其れに近づき過ぎればボーンバルドルの持つ重力に引かれて墜落してしまう。まぁ、其処は上手く操れば着地できるが大半はその前に撃墜されてしまうし勿論ギュネルの狙いは敵機の墜落等では無い。

 戦艦に墜落すれば敵機に損傷を与える事はできるが其れはこちらも同じく損傷を負う事になる。しかもその後敵機に良い様に攻撃されてしまう可能性が高まってしまう。勿論その前に上手く破壊できれば良いが狙撃手が足り無い状況で其れは期待でき無い。

 だからギュネルの狙いは其れでは無い。ギュネルの狙いは最前線にいるファイターの駆逐にある。ギュネルはミサイルで一掃する気なのだ。が、其れをするには目前のムラームの部隊が邪魔になる。

 そのための微速前進…。大げさに進めば艦が動いている事が相手に気づかれる。そうなればムラーム達は御構い無しに攻撃を仕掛けてくる可能性が高まる。ギュネルはムラーム達が気づかぬ様に前線に戻す気なのだ。

「せこいわね…。」

 その作戦にどうも不服のあるらしいマギーナが言った。

「あら、良い作戦だと思うけど。」

 PCを叩きながら花蓮が言う。

「コレは海賊らしく無いわ。」

「は ? 海賊らしく無い ? 貴女の言う海賊って何 ? ウォーハンマー持ってポコスカやるのが海賊なの ?」

 小馬鹿にした口調で花蓮が言う。

「な、なによ。馬鹿にして ! 大体なに ? ウォ…。ウォーハンマーって何よ。」

「あら、貴女はウォーハンマーも知らなくて海賊してるの ?」

 意地悪な目つきで花蓮がマギーナを見やる。

「うわぁ、何その憎たらしい目つき。ちょっとウォーハンマー知ってるからって。私だってトンカチぐらいなら知ってるわよ。」

「トンカチ…って。クス。」

「はっ何 !! 今鼻で笑った ?」

「別に…。其れよりヴィヴィアーネ準備は良い ?」

 花蓮はヴィヴィアーネをチラリと見やる。マギーナはむすっと拗ねた表情で花蓮を睨めつける。

「ええ…。でも自信無いわよ。」

「無いなら私が出るわよ。」

 後ろからマギーナが言った。

「いえ、姫様は此処に…。」

 ギュネルが言う。

「だったらやりきりなさい !!。」

「了解…。」

 ヴィヴィアーネは振り向きざまにニコリと笑みを浮かべマギーナを見やる。

「さぁ、来た。打ってきたぁぁ。守ってみせなさいよ !! ヴィヴィアーネ。」

「はいさ姫様。やりますよ。やってみせますよ。」

 ヴィヴィアーネは目前に表示させているウォームの操作パネルと宇宙をジッと見やる。

 敵兵器の動き…。

 こちらのミサイルの追尾経路…。

 破壊されるミサイル。

 撃ち落とされる敵ファイター。

 依然敵人形兵器は健在である。

 グイグイと動き回る人形兵器。其れに合わせてヴィヴィアーネの指がピクピク動く。

 まだウォームは動かさない。否、動かせない。否其れも否…。今は動かす必要が無い。仮に敵が前面以外を狙ってくるのなら動かすが、花蓮が言う様にウォームの破壊を目的としているのなら今は我慢の時だ。

 ボーンバルドルから次々にミサイルが打ち放たれる。

 レールガンとレーザー機銃が追い討ちをかける。其れをスルリとかわし敵はミサイルを撃ってくる。

 どこから来る ?

 手に汗がにじむ…。

 人形が1機撃ち落とされた。

 爆風が激しく大きい。

 そして、ファイターが又1機落とされた。これも爆風が大きい。普段の爆発よりも規模が大きい気がする。

 何故 ?

 いや、今は良い。

 其れよりも…。

 来た !!

 爆風の中からミサイルが

 1、2、3…。

「3…。違う…。両サイドからも来てる。全部で、全部で12…。」

 ヴィヴィアーネがぼそりと呟き神経を研ぎ澄ます。

 そして第一艦橋の宇宙が白色に染まった。

 


 

 


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