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Lost in space. 偶々偶然 Or 縁それとも運命 ? 2

 漆黒の闇…。

 その闇に隠れるように静かに動く陰影。一切の音は掻き消され、彼等は自由の無い宇宙で自由を求め動き出す。

 此処は、ホルンティエリアと呼ばれる地球に最も近い宙域。然れど此処に今を語るものは無い。ある物は遺跡と呼ばれる過去の残骸。

 そう、あるべき物は…。

 それだけだった…。

 はず…。

 然れどその場所に今を語る最新鋭の中型戦艦が1隻。archⅠとarchⅢの中間に当たる場所にそれは存在した。しかもそれは正規軍の所有物では無い…。もちろん企業軍隊の所有物でも無い。

 故郷を捨て、国を捨てた放浪者の集まり。彼等は宇宙を縄張りとして略奪を繰り返す者達。

 そう、海賊だ。

 海賊はあろう事か過去の遺跡を隠れ蓑にし、archⅡを中型戦艦に改造したのだ。と、言ってもarchⅡ自体それほど大きなコロニーでは無い。其の為、その大半は12世代超光学迷彩で隠されていたが、今は其の姿を完全に晒している。が、223km離れたこの場所からでは闇に隠れ其の姿は肉眼では確認出来無い。全ては超光学望遠カメラがあればこそ、其の姿をはっきりと捉え第一艦橋に映し出す事ができる。

 物資略奪部隊総司令官兼巡洋戦艦鳳艦長漠はジッと海賊船を見やる。

 今度こそは確実に落とす。其の為に立てた作戦だ。

 先の失態はこの戦闘で取り戻す。そう、取り戻さなければいけ無い。其れが、艦長としての務め、総司令官としての義務だった。

 巡洋戦艦鳳…。その左右に巡洋艦ミリア。その前衛に人形兵器部隊を配置。さらにその前衛にファイター部隊を配置させ今まさに彼等は攻撃の合図を待っている。

 人形兵器の武装は、全てビーム兵器に換装済みのフェネック。ファイターは元々レーザー機銃、電磁砲が装備されているので換装はない。只、ミサイルは通常よりも多く積んでいる。と、言ってもプラス2基だ。

 たったの2基ではあるがこれが大きく戦況を左右する事になる。無重力空間でファイターは取り回しが悪く尉官達に毛嫌いされているが、敵陣に突っ込み敵陣営を撹乱するには打って付けの兵器である。

 先の戦闘で漠はファイターを投入しなかった。そして、其れに異を唱える者もいなかった。当然ムラーム達人形乗りも其れには賛成だった。

 ムラームにしてみれば只良いカッコをしたかったという事もあるが、何と言ってもムラームはたかだか1等級大尉。いくら将軍の称号を持つ家柄であろうと本来ムラームに発言権もなければ決定権もない。だから、反対した所でほとんど意味を成さないのだ。

 其れでも漠達佐官連中が、ムラームの意見を重要視しているのは彼の実績を少なからず認めていたからだ。と、言っても戦場にファイターを投入するか否かでは戦況が大きく違ってくる。だから、漠達が如何にムラームを認めていようと、流石に戦場を大きく左右する決定をムラームに依存する事はない。

 漠が先の戦闘でファイターを投入しなかった理由は、第一に海賊の戦力を甘く考えていた事、第二にarchⅡからrx3000を奪う事に対して手の無いファイターでは取り回しが不便な事。第三に制圧には人形兵器の方が有利な事があった。此れらは佐官連中が決定した事で、漠達の決定にムラームは大手を振って賛成しただけなのである。

 だが、今回は総部隊長としての意見を佐官連中に求められたのを良い事に必死に首を突っ込んだ。ファイターの投入、ビーム兵器への換装の決定はムラームの意見が強く反映された結果だ。

 漠はジッと海賊船ボーンバルドルを見やる。作戦開始の時刻が刻一刻と迫る。緊張の所為か鼓動が高鳴っていくのが分かる。手に付けている白皮手袋の表面に汗が滲み出してくる。

「漠艦長。作戦開始5分前です。」

 オペレーターの孫凛榠すんりんめいが言った。

「うむ…。シンクロニズム開始。」

 そう言うと漠はマルチファンクショングラスを装着する。其れに合わせ第一艦橋のクルーがマルチファンクショングラスを装着した。

「了解。シンクロニズム開始します。」

 そう言うと孫は速やかに作業に移る。

「シンクロニズム率10%…。」

「CICルームとのコンタクト開始しました。」

 別のオペレーターが告げる。

「ミリアとのコンタクト開始。」

「シンクロニズム率60%」

「CICルームとのコンタクト完了。シンクロニズム完了と同時に第一艦橋に表示されます。」

「シンクロニズム率98%」

「ミリアとのコンタクト完了。」

「シンクロニズム率100%。全ての作業が終了しました。これより第一艦橋はバトルフィールドに変更されます。」

 孫の言葉とほぼ同時に第一艦橋が宇宙に包まれた。

 漠の前方にCICルームが表示され、両横にミリアの艦長が表示される。勿論の事だが、漠の後ろには生身の技術科長と兵器科長が着座している。

「作戦開始まで3分…。」

 孫が言った。漠はジッと前方に待機する兵器部隊を見やる。特殊合金で覆われた心無い兵器。当然大きな人形に心などあろうはずも無い。無慈悲で恐怖など微塵にも感じ無い破壊の限りをつくす為だけに作られた兵器。

 だが、其れを動かすのは心ある人だ。

 人には慈悲も有れば恐怖もある。

 人を殺せば死ぬまで其れが付いて回る。其れでも人は戦いを止めない。

 何百年…。

 否、何千年も昔から人は戦いの歴史を繰り返してきた。旧人類の時代から、新人類に変わり、宇宙人類になってもそのDNAだけは衰えず付いて回ってくる。本来なら人が乗らずとも動かす事のできる兵器を開発できた。だが、敢えて人は其れをしなかった。

 戦いの業を人に与えたいのか…。

 否…。人が戦わない戦争は只のゲームか。其れなら態々大金を投入して兵器開発などせず、ワールドオブウェポンズドールで勝敗を求めれば良い。

 人が死ぬのが戦争だ。家族を奪い、恋人を奪い、大量の骸をその大地に転がせ心を折るのだ。そしてCUEが人類史上初めての地球統一を成し遂げる。

「だから…。こんな所で終われるものか。」

 漠が言った。

「当然です。我々はこんな所で死ぬわけにはいかない。」

 兵器科長が言った。

「あぁぁ、そうだ。其の為にGMB(ギガントメガボムミサイルを使用するんだ。」

「ええ。あれの威力ならプラズマを分散させられますよ。」

 技術科長が言った。

「後は、ムラームの采配だな。」

 そう言って兵器科長も人形兵器を見やる。其の人形兵器は宇宙空間で静止しているように見える。ピクリとも動かずただ其処にいる。実際には少しずつ動いているらしいが、残念ながら動いているようには見えない。

 其の兵器も後1分足らずで激しく動き出す。

「作戦開始まで後1分。」

 孫が言った。

「ムラーム作戦開始1分前だ。」

 兵器科長がムラームに告げた。

「了解。ーー全員起動開始だ。」

 ムラームが部隊に号令を掛ける。其の合図を元に兵士達が人形に魂を吹き込み始める。宇宙空間に静止していただけの人形が力強く動き始めた。

「ムラームお前が肝なんだ…。頼むぜ。」

 ムラームの宇宙に笨の姿が現れる。

「あぁぁぁ…。任せておけ。作戦通り、お前は左、民は右から攻めれば良い。」

「あぁぁ、分かってる。だけどよ…。本当に大丈夫か ? その…。」

「何だ ? 不安か。」

「不安って言うか。否、作戦に不安も不満も無いんだけどよ。」

「あぁぁ、GMBミサイルの事か ?」

「あぁぁ…。本当にウォームの光を拡散できるのかなってよ。」

「さぁな…。」

「さぁなって…。」

「できなきゃ、俺達は負ける。そうだろ。」

 民が割り入ってきた。

「あぁぁ、そうだ。だから、必ずウォームは破壊する。」

 力強くムラームが言った。

「頼むぜ…。俺は生きて皆んなと合流したいからな。」

 民が答えた。

「当然だ。こんな横道それた戦闘でこれ以上死人を出させるものか。」

「そうだ。さっさと海賊を壊滅させて帰ろう。」

「おいおい、目的はrx3000の奪取だ。それを忘れるなよ。」

 ムラームが釘をさす。

「作戦開始10秒前…。」

「9」

「8」

「7、6、5、4、3、2…。」

「作戦を開始します…。」

 淡々と孫が言った。

 

 ーー時間は少し遡る、海賊船ボーンバルドルの第一艦橋。艦長席の斜め後ろに設置された姫専用席に着座しマギーナ-ギフンダは溜息を吐いた。

「心配ですか ?」

 後手に振り返りボーンバルドル艦長のギュネル-ランドバーグが言った。

「別に…。」

「別に ? 相変わらず小生意気ですな。」

「姫は生意気なのよ。」

「そうですか。で、悠那少尉の容態は ?」

「治療中よ。」

 ムスッと拗ねた顔で答える。

「成る程…。ギルフィッテに追い出されましたか。」

「五月蝿いわね。傷つきやすい乙女を余り追い詰めないでよ。」

 ジロリとギュネルを見やりマギーナは目前に宇宙を映す。この宇宙はホログラムで24インチサイズだ。

「そろそろと言った所ですか。」

「そう見たいね…。」

「敵小艦隊が345kmまで接近しています。」

「オビー大尉とロイスは ?」

「オビー総司令官は出撃準備に追われています。ロイス航海長は操舵室で準備を整えている最中でしょう。」

「そう…。」

 そう言うとマギーナは、スッと立ち上がり背もたれに掛けてある陣羽織を羽織った。

「あら、姫様もやる気なんですね。」

 マギーナから一番近い席にいるオペレーターのヴィヴィアーネ-イワノフが言った。

「何よ。私だってやるんだから。」

「そりゃそうか、処女のまま死ねないですものね。」

「はぁぁ !! 誰が処女よ。」

 マギーナが声を荒げた。

「貴女よ…。」

 第一艦橋に入ってきた花蓮が言った。

「な、何よ…。あ、花蓮じゃない。」

 マギーナは後手に振り返る。

「佐々木女史…。グリッド砲の状態はどうです ?」

 花蓮を見やりギュネルが問うた。

「まずまずね…。1発なら撃てるわ。」

「まぁ、十分でしょう。」

「そうね…。でも、油断は禁物よ。相手の兵器は最新式のWPR、WPエンジンを搭載している可能性があるんだから。」

「第4世代ビーム兵器ですか。」

「ええ、ここに来て漸く実戦で役立つレベルになったやつね。」

「まぁ、其れはニューセイルの襲撃で確認しています。彼等が使ってきても驚きませんよ。」

「そうそう、高熱のコックで体が火照るぅ。」

 マギーナが茶化した。

「はいはい、処女は五月蝿いの。それで、敵の動きはどうなの ?」

 花蓮はサラッと流しギュネルに問うた。

「そろそろでしょうね…。今度は屈辱戦だ本気で来るでしょう。」

「でしょうね…。」

 と、花蓮はマギーナが映し出す宇宙を見やる。

「艦長、敵小艦隊が265km地点まで接近しました。」

 ヴィヴィアーネが言った。

「うむ…。佐々木女史はそろそろ退艦準備を。」

 花蓮を見やりギュネルが言った。

「そうしたいけど無理なのよね。」

「無理 ?」

「オート照準の調整が上手く行かなくて…。」

「それは別に良いですよ。元々2週間は掛かる予定でしたから。」

「そう言うわけにはいかないわ。」

「いえ、構いません。それに佐々木女史に何かあれば、日野本工業との関係が悪化します。」

「そうね。でも、貴方達が負ければお得意さんが減るのよね。」

「我々は負けませんよ。」

「いいえ。負けるわ。幾ら中型戦艦だっていっても人員不足じゃ只のでかい的よ。其れにウォームを信用しないで。」

「と、言いますと。」

「あれは未だ試作品って事。完全じゃないのよ。」

「知っていますが脅しにはなります。」

「だといいけど…。」

「艦長敵尚も接近223km地点に到達。」

 ヴィヴィアーネが言った。

「ギリギリラインまで来るか…。オビー総司令官に出撃命令。」

「了解しました。」

 そう答えるとヴィヴィアーネは直ぐさまオビーに伝達命令を伝える。

「喋ってる暇はなさそうね。」

 そう言って花蓮が第一艦橋から出て行く。敵の223km地点到達で一気に緊張が広がっていく。ギュネルはアンビギュアス開始を伝える。

 マルチファンクショングラス又はバトルスーツandヘルメットを着用する事で、人の脳とコンピューターとの曖昧な関係を作り上げる。此れはCUEのシンクロニズムと同じ原理である。

 ワールドガーデンやファンタジーガーデンの様に人の意識が完全にコンピューターの中に入り込んだりはしない中途半端な状態だ。

 だから、目の前に宇宙が広がり、CICルームや操舵室がリアルに表示される様になるのだ。

「アンビギュアス開始します。」

 ヴィヴィアーネが伝える。そして、全クルーがマルチファンクショングラスを装着する。

「アンビギュアス率10%」

「CICIルームとのコンタクト開始。」

「操舵室とのコンタクト開始。」

「人形兵器部隊射出開始。」

「アンビギュアス率30%」

 アンビギュアス開始命令と同時に第一艦橋が一気に騒がしくなる。否、其れは第一艦橋だけではない。兵器格納庫もCICルームも操舵室も慌ただしく動き出す。其れが戦闘が始まる合図だからだ。

「アンビギュアス率60%」

「CICルームとの接続完了。」

「人形兵器部隊艦前衛に配備完了。」

「操舵室とのコンタクト完了。」

「アンビギュアス率70%」

 ゴクリとマギーナが生唾を飲む。

「アンビギュアス率90%」

「姫様…。」

 ギュネルがマギーナを見やった。

「気にしないで、私は未だ半人前だから。」

 マギーナが答える。

「分かりました。」

「アンビギュアス率100%。全てのコンタクト完了。此れより第一艦橋はバトルフィールドに変更されます。」

 ヴィヴィアーネが言った。其れと同時に第一艦橋が宇宙に包まれ、CICルームと操舵室が現れる。そして、ギュネルは直ぐ様状況を宇宙に表示させ確認した。敵小艦隊前衛に人形兵器とファイター…。

「ファイター…。」

 マギーナが呟く。

「本気だと言う事です。」

 ギュネルが答える。

「バニング司令官。ウォーム30を前衛に展開。傘は未だ広げるなよ。」

 ギュネルが指示を出す。

「了解。ウォーム射出。ボーンバルドル前衛にて待機。」

 CIC司令官バニング-ライトマンがクルーに指示を伝える。

「了解しました。ウォーム射出。」

「射出確認。動作正常、ウォーム1から30順次所定の位置に到着。前衛にて待機行動確認。」

「うむ。傘は敵の行動に合わせ展開する…。で、良いんですよね艦長。」

 バニングが問う。

「あぁぁ、其れで良い。ーーオビー総司令官。そちらの状況は ?」

「万全だ。が、今回は少々厄介だな。」

 オビーが答える。

「ええ…。」

 と、ギュネルは敵ファイターを見やる。

「悪いが、ファイターはそっちで処理してくれよ。」

「分かってますよ。ーーバニング司令官。レーザー機銃とレールガンの使用状況は ?」

「レーザー機銃67、レールガン42。佐々木女史の調整終了次第全ての使用が可能になります。」「ふぅ、半分以下か…。確かにきついな。レーザー機銃の人員をレールガンの方に回せないか ?」

「無理ね…。あれは扱いが難しいから。」

 作業をし乍花蓮が横から口を挟む。

「ええ、何とか扱えるクルーが42人って事です。出来る事なら全員レーザー機銃に回したいぐらいですから。」

 バニングが言う。

「なら、ヴィヴィアーネをそっちに回そうか ?」

「其れは助かります…。が、オペレーター主任を外して大丈夫ですか ?」

「だな…。戦況に応じて対応させるか。」

「艦長 !! 敵部隊の起動確認 !! 来ます !!」

 と、あれこれ悩んでいる間にヴィヴィアーネが言った。ギュネルがジッと223km先の敵を見据える。

 敵部隊が勢い良く攻め込んでくる。その距離は一気に詰められ、次第に望遠拡大表示が必要なくなっていく。

 其れを迎え撃つボーンバルドルの準備は万端ではない。今回はコングコックパーンドーラもない。其れでも負けるわけにはいかない。

 これが艦長としての意地、務めだから…。

 い〜や。

 ”其れは俺達が海賊だからだ。”

 と、ギュネルはガタリと席を立ち腕をスッと上げた。

「各員戦闘準備 !! 敵部隊を迎え撃つ !!」

 ガタリと姫席から立ち上がり、先にマギーナが言った。


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