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生贄にされた責任を取れと龍に結婚を迫ったら、異世界までついていく羽目になりました。というかこの龍、メスなんですけど!?  作者: 野干かん


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12話 『棘の宮』 5

「じゃあなんか、オマケとか付けてくれません?」

「君は恐れ知らずだね?」

「よいかハマハッキ。儂は無理やりレンゲを丸め込んで連れてきて、婚姻を結んだわけじゃない。レンゲの方から儂に求婚してきたんじゃよ」

「…は?アキラ・ハリュウ、君の本来の姿は?」

「龍じゃ」

「ドラゴンに求婚?うわぁ…」


 なんでこういう反応がほとんどなんだろう?

 私も私で、村の悪習の影響を受けてたってこと?

 なんかそれは嫌だけど、生まれは捻じ曲げられない。


「で、どうなんですか?」

「そもそもね。僕はかなーり譲歩している。君たちに未来永劫手出しできないとなると、君たちが建国なんかをしてしまえば手出ししにくい国ができるんだ。これ以上ない譲歩だよ」

「そんな大変なことはしませんよ。私はアキラ様と一緒に、飽きない人生を送りたいだけです」

「はぁー…。じゃあ先ほど伝えた条件に加えて、『力を取り戻すまでの間、多少の協力をする。その代わりに協力関係にある間、君たちは僕のことについて口外できない』という契約だ」

「協力というのは?」

「僕は人だろうと魔獣だろうと、他者の位置を探るのが得意でね。ダンジョンでは役に立つと思うよ」


 索敵担当ということか。

 それは便利そうだけど…。


「大規模な戦闘をしたとき、私に向かって走ってきたのに、驚いてませんでした?索敵がおざなりだったんじゃ?」

「レンゲ・ハリュウ、君は魔力がない」

「はい」

「僕はあらゆる存在の魔力を感知する網を持っているのだけど…君は感知できないんだ。けれど、君は弱っちいし、脅威でもなんでもないから助かったよ」

「つまり魔力を持たない相手は認識できない、という弱点があるわけですか」

「弱点なものか。魔力をわずかも持たない者など、本来は存在しないのだよ」


 まあ、そのおかげで、このハルバード『霜信《そうしん》』を扱えているわけだけど。

 それは一旦置いといて、便利な索敵担当が加わるのは悪くない気がする。

 ただ相手は弱体化したとはいえハマハッキ。

 大丈夫なんだろうか?


「どうしましょう、アキラ様」

「儂としては協力云々を置いといて、こちらに手出しをできないという契約が魅力的じゃな。いざとなれば一方的に攻撃できる」

「勘弁してほしいね」


 アキラが嫌がってないなら、この契約を結んでしまおうかな。


「分かりました、その条件で契約を結びましょう。厄介な相手は実力者に始末してもらいたかったんですけど、運がなかったということで」

「僕と協力関係を結べるなんて幸運だと思うけどね。…では『融蛔《ゆうかい》』のハマハッキは、レンゲ・ハリュウ及びアキラ・ハリュウと契約を結ぶ。僕たちの間に血を一滴ずつ垂らせ」


 私はハルバードの斧で、アキラは自身の打刀で指先をわずかに切って床に血を垂らせば、ハマハッキも同様に血を垂らした。

 すると血を中心に、文字と図形の組み合わさった、光の模様が広がっていく。

 これが契約魔法か。


「契約内容―――」


 ハマハッキが契約内容を読み上げる。

 私は頭の中で一言一句を復唱して不備がないかを確かめる。

 けれども、改変された箇所はなく、私たちに不都合はなさそうだ。


「―――以上をもって、この契約を結ぶ。異議はないか?」

「ありません」

「ない」

「では契約の成立だ」


 ハマハッキがそういうと、床の模様は綺麗に消え去ってしまう。


「くそー、ただでさえ力が失われているのに、契約魔法でかなりの魔力を失ってしまった。果実でも食べよっと」


 そう言ってハマハッキは、茂みに実った果実を食べ始めた。


「ほらさっさと探索するなり、深く潜るなりしなよ。僕は食事中だから」

「索敵の協力はしてくれないんですか?」

「第一階層の相手に必要なんてないから」

「それもそうですね。アキラ様だけでも余裕ですし、私でも対処できますから」

「そういうこと。二人には魔力の糸を引っ付けたから、しばらくしたら合流するよ。またね」


 ハマハッキは足の一本を振っている。

 まあ、そういうことならアキラと採取を続けようかな。


「私たちはあっちで果実の採取をしますんで、ハマハッキさんはあちらに向かってください。仲間同士で取り合いになっても不毛ですから」

「はいよ。…って、もうお仲間認定かい」

「しばらくは敵にならないんですし、協力関係にあるなら仲間みたいなものじゃないですか。よろしくお願いしますね、ハマハッキさん」

「……。」


 ハマハッキからの返事はなかった。


「レンゲ、ああいった変な奴に心を許すでないわ」

「昨日の敵はなんとやら、そして逆も然り。理解してますよ。…ただまあ、短くない付き合いになると思うので、多少は距離を詰めたほうが気楽かと思いまして」

「せめてビーチェやドーラのような、人の括りにしとくれ。なんか、儂の特別感が薄れてしまうわい」

「はははっ、アキラ様以上に特別な相手なんていませんよ。これまでもこれからも」


 私はアキラの頬に口付けをして、採取を再開する。


****


 それから数時間。

 私は黙々と採取を続け、時折アキラと魔獣を倒して、一日の稼ぎを換金する。


 およそ一五〇ヴェロ。

 少し順調な滑り出しな気がする。

 誤算があるとすれば、ダンジョン街の安宿は質が悪い上に、一泊三〇ヴェロと高かったことだろう。

 銭を稼ぐために、より銭を稼がないといけないらしい。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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