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生贄にされた責任を取れと龍に結婚を迫ったら、異世界までついていく羽目になりました。というかこの龍、メスなんですけど!?  作者: 野干かん


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12話 『棘の宮』 1

 アキラに傷をもらって数日後。

 あれから化膿したり、傷の病にならないようにとアキラが奔走し、薬と治癒効果の魔導具を購入し、蓄えはごっそりと減ってしまった。


 塗り薬に七五〇ヴェロ。

 治癒の魔導具『癒しの小鐘(クラーベル)』三〇〇〇ヴェロ。


 正直、こっちの出費の方が泣きたくなった。

 アパルトメントの家賃で、およそ半年と三〇日。ドラータ共和国基準でいうと七ヶ月分ちょっとの金額だ。

 …いや、思い出しただけでも目尻に涙が浮かぶ。

 魔力があれば軽度の治癒ができる魔導具と考えれば、悪くない買い物なのかもしれない。…買い時は今じゃなかったけど。


 ただまあ、奥様《アキラ》が甲斐甲斐しく私の世話をしてくれるのは、少し可愛らしく微笑ましかったから、いいかな。


「それじゃあ冒険者業を再開しましょうか」

「うむ、そうしよう」


 早朝、私たちは住居を出る。

 向かう先はコロニアヴェルデに三つ存在するダンジョンの一つで『棘の宮(ロヴォペレス)』というらしい。


****


 アパルトメントから徒歩で一刻と半分、いやこっちの言い方だと三時間ほどで、ダンジョン街に到着する。

 ダンジョン街とは、ダンジョンの出入り口を覆うように作られた街で、特に冒険者で賑わう場所らしい。


「片道三時間。毎日の往復はできませんね」

「じゃなあ。ダンジョンに行く時は、こっちでも宿を取らんとな」

「家賃と宿代で二重の出費…。家賃は冒険者協会に出してもらうべきでしたね」

「かっかっか、それ以上に稼げばいいことよ!」

「余分に稼がないといけないんですよ…」


 払うと言ってしまった事実は捻じ曲げられない。

 私たちは一ヶ月という三〇日の期間で五〇〇ヴェロを支払い、その上で生活費と場合によっては宿泊費を稼ぐ必要がある。


「では冒険者協会の出張所に向かいましょうか。ライセンスの購入をし、何を稼ぎにするかの指標を見つけなければいけませんし」

「おう!」


****


 さて、私たちが出張所に向かっていると、見知った三人組と顔を合わせた。


「どうも。ブルーノさん、リッチーさん、ブリタニーさん」

「あっ!レンゲさんにアキラさん!お久しぶりです〜」

「こんなところで会うなんて珍しいな」

「元気だった?」


 三人は朗らかな笑みを私たちに向けてくれた。


「実はD級になりまして、『棘の宮』に挑もうと思ってやってきたんです」

「もうD級に?随分と早いな」

「色々とありまして、E級を飛ばしてのランクアップとなりました」

「へぇ〜、すごいもんだね。一瞬で抜かされちゃいましたよぉ」


 のんびりと語るブリタニーを他所に、ブルーノとリッチーは眉を曇らせてから、真剣な面持ちとなった。


「講習での定番なんだが、ライセンスの更新をしない冒険者って聞いたろ?」

「はい」

「俺とリッチーはそっち側、ドロップアウト組だ。驚かすわけじゃないけど、ダンジョンは危険だし外とは世界の仕組みってのが違う。無茶をせず、場合によっては諦める道を用意しておけ」

「人によっては精神がすり減ってしまうからね」


 ランクを上げることなく一〇年以上も冒険者を続けるブルーノたち。

 ブリタニーはE級だけど、D級の二人には色々あったのだろう。


「心に刻んでおきます」

「そうしてくれ。アキラ、奥さんをしっかりと守ってやれよ」

「ああ、言われずともじゃ。レンゲは儂の半身じゃからな」


 ブルーノたちがなぜダンジョン街にいるかと尋ねれば、簡単な配達依頼でやってきたらしい。

 よく見れば三人して大きめな木箱を背負っている。


「しっかし、市民権なしでの飛び級のD級なんて、いったい何をやったんだ?」

「詳しくは言えないのですが、長めの調査依頼と戦闘、ですかね。その後に、冒険者協会からの直接依頼も」

「なんか…色々と大変だったんだな」

「そういえばしばらくの間、あのお爺職員見なかったよね」

「あーはい、リナルドさんも同行しました…」

「大変そうだね…」


 なんて立ち話をして、私たちは別れた。


****


 冒険者協会コロニアヴェルデ支所と、ダンジョン街の出張所は雰囲気が大きく異なっている。

 なんというかこう、熱量が違う。


 依頼はほとんど張り出されておらず、壁を覆っているのは買取を行っている魔獣素材や、ダンジョン内で入手できる植物など。

 ただ、それらは協会で買取をするのではなく、買取先が示されており、各々その店にいけということらしい。


 次いで見かけるのは、ダンジョン内での魔獣討伐に関する報酬。

 これらはダンジョン内から魔獣が溢れないように懸賞金がかけられているということ。

 講習の時に習った。

 討伐報酬は微々たるものだが、無いよりはマシだと考えよう。


 最後にマジックアイテムや財宝の競売情報。ここの熱量が異常だ。

 品物の詳細に加えて、日程と開始金額が記されており、商人風の者も集まって、あれこれと話し合っている。

 競売場はもっとすごいのかもしれない。


「ライセンスの購入は…」

「あそこじゃな」

「本当だ。いきましょうか」


 それなりの行列の後ろに並び、私たちは順番を待つ。


「はい、次の方。新規ですか?更新ですか?」

「新規です」

「じゃあ冒険者証を提示ください」


 私たちが冒険者証を提示すると、内容を簡単に確かめてから戻される。

 その後、一人五〇〇ヴェロずつなので、一〇〇〇ヴェロを支払い、ライセンスの購入に至った。

 紛失したら新規での購入になるらしいので、気をつけよう。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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