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生贄にされた責任を取れと龍に結婚を迫ったら、異世界までついていく羽目になりました。というかこの龍、メスなんですけど!?  作者: 野干かん


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10話 ダンジョン講習 5

「う、わぁあ!」


 ヘスペリアはアキラの攻撃を雑に受け流してから、一飛びで私の目の前にやってきた。

 転移とは様子が違うことから、本当に一飛びで移動したんだろうけど、全く見えなかった。


「こんな子も空間魔法だなんて、興味が湧いちゃうなぁ」

「レンゲは儂の妻じゃ」

「おおっと、本気《マジ》だねえ!」


 私とヘスペリアの間に転移してきたアキラは、私を少し離れた場所に転移させて、戦闘を続ける。

 しかし、ヘスペリアは私に背を向けたまま、魔法で飛礫《つぶて》を作り出して撃ち出してきた!


「おわっ!ちょ、ちょっと、模擬戦の、範囲を、超えてませんか!?」


 私は圧縮と解放に加えて、全力疾走をしながら飛礫を避けていく。


「試験官に内容は委ねられているんだよ」

「そ、そんなぁ!?あ痛《いた》っ!」


 飛礫の威力は弱い。ただそれでも、当たればちょっと痛い。

 滅茶苦茶に手加減されていることを理解しながら、私は逃げ回っていると、外野が騒がしくなっていく。


「ははは!なんだあいつ、模擬戦なのに逃げ回ってらぁ!」

「そんなんなら辞めちまえっての!」

「不っ様〜」


 酷い言われようだ。

 でも勇猛果敢に挑んで命を失ったら意味がない。

 模擬戦だからといって、変に突撃する癖をつけたら、弱っちい私には命取り。

 分相応に逃げ回らせてもらうよ。


 強者というのは、皆《み》んな器用に武器と魔法を両方使っている。

 もしかしたら魔法を専門とする人もいるのかもしれないけど、ビーチェとドーラ、リナルドも一緒だ。

 近くも遠くも、距離に関係なく戦えるというのは本当に強い。私程度じゃ手も足も出ない。


 あぁもう馬鹿みたい。

 模擬戦なんかに熱くなる理由なんてないのに、アキラからの感情が私を突き動かす。

 熱く滾る気持ちを振り払ってしまうのは…無粋だ。


「痛たたっ!もう!喰らえっての!」


 私は地面を引っ掻くようにハルバードを振るう。

 すると、さっきと同じ攻撃をするかと踏んだのか、ヘスペリアは身体の周囲に金属板を生み出して防御を固めている。


 しかし私の目的は直接攻撃ではない。

 地面を掻いた際に発生した砂礫と砂埃を、圧縮と解放を用いてヘスペリアの顔面付近に飛ばす。

 軌道を短縮した砂礫は、ヘスペリアの防御が間に合わずに命中し、目潰しとなった。


「うわぁっ!?」

「よぅやったレンゲ!」


 顔に砂礫を受け、アキラからの猛攻を受けるヘスペリアだが、視界を奪われてもなお攻撃を完璧に防ぎきっており、なんなら顔を拭う余裕すらあるようだ。


 ヘスペリアは何を感じ取って対処しているんだろう?

 音?気配?

 私の攻撃には驚いている素振《そぶ》りがあったから、何かしらの条件がある?


 強者は何を見て、何を感じ、どう動いているのか。真に土台の違う相手は理解ができない。

 …まあ、それで匙を投げられるんなら、私はここにいないよね。


 目潰しをされた状態でもアキラの攻撃は防いでいるけど、私への攻撃は止まった。

 目が見えていないなら好機と考えて、私はアキラに身振りで合図を行う。

 すると、アキラからは控えめな頷きが返ってきて、私は空間龍術を使う。


 狙いはヘスペリアの踵のあたりにある土。

 急激に足元が不安定になれば、余裕を崩す一手にはなるはず。


 ヘスペリアの踵の下の土を圧縮で手元に引き寄せ、地面に落としてから解放する。

 すると急に足を支えていた地面がなくなったヘスペリアは、身体を大きく傾けて驚きを見せた。


「おおっ!?」

「玻璃生式一刀術『閃耀』!」

「ははっ!いいね!」

「なにっ!?化物か!」


 身体が傾いたヘスペリアだったが、足元に金属板を作り体勢を立て直し、アキラの一撃を軽く受け止めてみせた。


「これがA級、だよ」

「ぬぅぁっ!?」

「拙《まず》い!?」


 ヘスペリアの攻撃によってアキラが吹き飛ばされたことを確認した私は、急ぎ圧縮を使いアキラを手繰り寄せてから間に入り込み、身体でもって受け止める。

 ものすごい衝撃で私自身も吹き飛ばされそうになるが、アキラが壁や地面に打ち付けられるのは防げた。

 とはいえ、これ以上動くことはできない。

 私は空間を解放しつつ、手を挙げて降参を示す。


「もう無理です、降参です。アキラ様も目を回していますし」

「はははっ、面白い二人組だったね。お疲れ様。…頑張った君たちには、アドバイスをあげよう」

「アドバイスですか」

「まずハルバードメイドの君。単純に弱い、周りの人、B級や元A級の知り合いを頼ってでも強くなった方がいい」


 この人、私たちの事情を知っている側か。


「そっちの剣士は…時間の問題かな。まだまだ若すぎるね、人として」

「ありがとうございます。妻にも伝えておきます」

「頑張ってね」


 私がアキラを背負って移動すると、観戦をしていた冒険者たちからの視線の色は変わっている。

 A級に喰らいついた実力者や有望株とでも思われているんだろう。

 パーティを組まないかと誘いもあったが、冒険者をやりたいと言っているのはアキラだから、誘いのすべてを保留とした。

 というか、パーティとか誰かと組むなら、アキラと相談して決めたいし。


 はぁ…。

 『単純に弱い』。まあ、理解はしているけど、歯に衣を着せずに言われると、それなりに響く。

 けれども、『諦めろ』とも『才能がない』とも言われてはいない。

 先は長いかもしれないけど、頑張ってみよう。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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