10話 ダンジョン講習 3
講習などが行われる冒険者協会の別棟に着くと、私たちは受け付けに向かい、ビーチェとドーラと別れる。
パッと見た分でも、受講者の数はそれなりにいる。
D級になること自体は簡単なのか、それともダンジョン目当てでコロニアヴェルデにやってくるのかは分からない。
けれども、命を賭けてまでダンジョンに挑もうとする人数が多いと、気圧される部分がある。
闘争、銭、名誉、地位。何かを得るために、彼ら彼女らはこの講習に挑むんだろうか。
受け付けでは市民権の有無が問われ、無いことを伝えると第二講堂に行くように伝えられた。
私たちが席に着き、しばらくすると募集が締め切られたようで、講堂の扉が閉められた。
『あー、あー、テステス。…はい、問題ありませんね。冒険者各位、これからダンジョン講習を始めます』
協会職員らしき女性が壇上に立ち、声を大きくする魔導具で話を始めた。
『まず最初にお伝えしておきますと、本講習は修了証の配布をもって修了とし、講習の途中で退場なされた場合は、再度、最初からの受講となります。
一応ですが、講習にも定員がございまして途中で退場なさった方の優先度は下がります。この程度を最後まで受講できない方に、ダンジョンは難しいと思いますので。
それでは冒険者各位、時間と命を無駄にしないよう、心してダンジョン講習を受けてください』
ドラータ共和国では冒険者、いや市民権を持たない者に対する扱いは良くない。
受け付けで市民権の有無を問われたことを考えると、こっちは市民権無しの、使い捨て冒険者ということになる。
…市民権がなく、外来主である私たちを、ビーチェとドーラはよく受け入れてくれたと実感する。
『ではダンジョンについての説明を行います。
有名な話ではありますが、ダンジョンとはその昔、罪人などを放り込む、異常な領域でありました。基本的に、裸一貫で放り込まれれば帰ってくることは稀でしたから。
しかし、そこから帰還する者が現れ、彼らが財宝やマジックアイテムを持ち帰ったことで扱いが変わっていきました』
魔獣ひしめく領域。そんな所に放り込まれて帰ってくる人がいたことに驚きだ。
『ではダンジョンとは何なのか。
これは諸説ありますが有力視されている説として、「隣り合い無数に存在する異なる世界を模倣した領域」というのがあります。
ゆえにダンジョンから手に入る財宝やマジックアイテムは、模倣された世界にある道具などなのでしょう』
「この世界には穴があると、ハマハッキは言ってましたね」
「ああ、そうじゃ。儂らが通って来たのも世界に空いている小さな穴じゃな。レンゲは意識を失っとったから知らんとは思うがな」
「なるほど。じゃあ、ダンジョンの説明は合っているんですか?」
「さあのう。ただ、この世界は至る所に穴が空き、儂らのような異物を受け入れながらも安定している」
「なるほど。身体を人にしたのは、穴を通るためなんmですか?」
「そうじゃ。異物を受け入れながらも、その大きさを制限することで負荷を小さくしとるのかもな」
それから説明されたことといえば。
ダンジョン内での怪我や死亡において、冒険者協会は一切の責任を負わず、自己責任となる。
ダンジョン内で問題を起こした場合は、修了証の剥奪がある。
というダンジョン内外問わず、冒険者の扱いに対するもの。
ダンジョンに入場するには、そのダンジョンの入場ライセンスの購入および更新が必要であり、市民権があればライセンス料が割り引かれ、更新料が無料となるとの旨が伝えられる。
これは明確に格差のある部分だ。
そしてダンジョンでの取得物に関する案内。
買い取り額が一定以上になった取得物は、買取の際に徴税が起こるとのこと。
基本的には買取店でそれらを行うので、こちらが心配することではないが、買取店との諍いを起こさないようにと釘を刺される。
『この講習を受け終え、修了証を受け取った者は、今までの説明の全てを認知し理解したものとして扱われます。
違反をした者たちは大概、「知らなかった」とおっしゃいますが、その言い訳は一切通用しません。
本講習の内容を記した冊子をお渡ししますので、ご理解に努めていただくよう、お願いします』
そんなに長くない、一刻ちょっとの講習だったが、席を立ち戻ってこない者がチラホラといた。
用事があったのか、それとも飽きたのか。
色んな人がいるもんだ。
『それでは最後に。
修了証を受け取り、入場ライセンスを購入した者の七割が、ライセンスの最初の更新をしないという数字が出ています。
この数字の中には死亡者もおりますが、ダンジョンという環境が身体に合わず、撤退を余儀なくされる者が多いということでもあります。
財宝が手に入るだけの、美味しい領域などとは考えず、危険で死と隣り合わせの領域なのだと理解し、挑んでください』
得られるものがある分、危険も相応に待ち受けている。
私が挑もうとしている場所は、そういうところなんだ。
『では、昼食の休憩を挟んでから、本講習の理解度を測る効果測定と、実力測定となります。
これらは合格不合格を付けるものではなく、冒険者としての格をこちらに記録するものとなっております。
時間までに戻られなかった場合は、そのまま退場扱いとなりますので、お気をつけください。…それでは、解散』
私たちは席を立ち、昼食をとるのにちょうどいい店を探す。
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