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生贄にされた責任を取れと龍に結婚を迫ったら、異世界までついていく羽目になりました。というかこの龍、メスなんですけど!?  作者: 野干かん


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8話 外なる者たち 1

 早朝、私たちが冒険者協会の裏手に行くと、馬車が二台用意されており、既に馬が二頭ずつ繋がれている。

 良かった。今回の旅路は歩きではなさそうだ。


「おはようございます、お二方」

「どうも、おはようございます」


 老職員は私たちを見つけると、穏やかな表情を浮かべていた。

 ちょっと怖い。


「して、そちらの…貴女はなぜメイドに?」

「妻の趣味です。動きやすいんで私的にも悪くないと思いまして」

「そうですか」

「それと、私はレンゲ・ハリュウです。妻はアキラ・ハリュウ」

「申し訳ございません。どうにも歳を取ったせいか、人の名前を覚えにくくなりまして。…私《わたくし》は冒険者協会の職長を務めている、リナルドと申します。これから数日、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。…同行するんですか?」

「はい。少し面倒な相手が潜んでいそうなので」


 気が重くなる。

 あまり老人とは関わり合いになりたくない。

 それに面倒事の臭いがする。なんともまあ大変なことになってしまった。


「レンゲさんは私を警戒なさっているようですが、こちらとしては善良な冒険者に対して口煩くするつもりはありませんよ」

「あーいえ、リナルドさんがってわけじゃないんです。老人相手に悪い記憶があるだけなんで」

「そうですか」


 確証もないものに縋り、現実を理解せず、欲のために私を生贄にした老耄《おいぼれ》共め…。

 まあいい、あんなのに会うことなんて一生ないんだ。いい加減、気持ちを切り替えないとね。


 幸い、初めての顔合わせは、状況が状況だったから威圧的な側面があったけども、今はそれらを感じない。

 植え付けられた苦手を克服するにはいい機会と思おう。


「それで、面倒な相手というのは一体?私たちはコロニアヴェルデやドラータ共和国のことを詳しく知りません、変な輩に目を付けられても困るんですけど」

「ドラータ共和国を始め、ダンジョンを国が管理する場所には必ずと言っていいほど現れる輩なので、この国で冒険者を続ける以上は避けて通れぬ相手とお思いください」

「うげ…」

「私共の推測が正しければ、この事件の首謀者は『ダンジョン解放戦線』という集団が関わっております。

 …名前と前述の説明から察せられるとは思いますが、ダンジョンを特定個人や国家から解放することを目論み、そこから得られるマジックアイテムなどの物資の占有などの仕組みを破壊しようとしているようです」

「それを聞くだけなら、悪い集団にも思えませんが」

「はい。今語ったのは、一昔二昔前に掲げられていた大義や理念です。時間が経つにつれ歪んでいき、自分たちの都合がいいように、国家や個人を攻撃する集団へと変質していきました。

 ダンジョン周辺での無差別攻撃や、冒険者への襲撃略奪等、犯罪行為は数えればきりがありません」


 山賊盗賊の類ということか。

 それも大義や理念のある。

 面倒くさそうだなぁ。


「アキラ様、冒険者続けます?」

「無論続けるぞ。なに、レンゲのことはしっかりと守ってやるわい」

「続ける気があるのなら、守れる守れないは置いといても続けますけどね。ありがとうございます」


 他に聞いておくことはあるだろうか?

 そんなことを考えていると、若い、二〇代前半の女性二人が姿を見せる。


「リナ翁《おう》ー、急な呼び出しはやめてくださいよー、こっちだって忙しいんですよ」

「……。」


 よく似た見た目をしており、頭頂部からはウサギのような耳が生えている亜獣人の姉妹かもしれない。

 一人は賑やかな口調なのだが、もう一人は一言も喋らずに手を頻りに動かしている。


「申し訳ございません。ただ、B級以上で招集をかけやすく、それなりの期間の護衛をお願いできるパーティとなると、貴女方くらいなのです」

「はぁーいいけどさぁ、協会からの依頼だから報酬は良いわけだしー」


 あれこれ話し合っていると、無口な方の女性が私たちに視線を向けて、ニコリと微笑んでお辞儀をしてくる。

 無視するわけにもいかないので私もお辞儀を返すと、彼女はもう一人に振り返って袖を摘む。


「どしたのドーラ。…そっちの二人が気になる感じね。どうも初めまして、あたしたちはB級パーティ『ルーチェリング』のビーチェとドーラ。あたしが姉のビーチェで、こっちが妹のドーラだよ」

「私たちはF級の新米冒険者で―――」


 いつも通りの説明をして、嬬妻《じゅさい》の関係にあると伝えると、他と変わらない反応をもらえる。

 そして、リナルドが依頼と事件に関する詳細を説明すると、ドーラは忙しく手を動かしている。


「話を遮ってしまって申し訳ないんですけど、ドーラさんは言葉が?」

「うん、生まれつき声が出なくってね。手話っていう方法でコミュニケーションを取ってるの。基本的にあたしが通訳するから、何かあったらあたしに話しかけてよ」


 あの手の動きは一種の言葉らしい。


〈『ご迷惑をおかけします』とお伝えください、姉さん〉


 あれ?なんか、手の動きが言葉みたいになって頭に伝わってくる。なんだろうこれ?


「『ご迷惑をおかけします』だって。いい子でしょ、ドーラは?」

「できないことはしょうがない。気にしなくていいぞ」


 言っていることは合っている。

 となると、手話という意思疎通を私は理解してしまったんだろうか?

 ドラータ共和国の言葉や文字は、アキラの力で理解できている。となるとこれは…。


「すみません、ちょっとお時間をいただきます。アキラ様、お話よろしいですか?」

「お、おう?」


 私はアキラと共にその場を離れる。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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