↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄にされた責任を取れと龍に結婚を迫ったら、異世界までついていく羽目になりました。というかこの龍、メスなんですけど!?  作者: 野干かん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/51

6話 北街道 7

 私が隠れて戦闘の様子を窺っていると、どうにもタイラントベアは高熱を放っているようで、アキラも攻めあぐねている様子だ。

 空間龍術『転移』なんて便利な力があるんだから、刀を脳天に転移させて終わらせればいい気がしなくもないんだが、闘争とはそういうものじゃないのかもしれない。

 私は、真に奥様を理解できているわけではないということでもある。


 あの身体から吹き出す炎が、街道付近にあった焦げ跡の正体だと考えてよさそうだ。

 ただ、タイラントベアという魔獣は、あんな姿に変貌するものなのだろうか?

 …いやドラータ共和国に生きるセルジオが、渋い緑色の筒が生えている段階で『不審』と言っていたことから、これは異常な存在だ。


 そういえば…馬車を壊した後は、タイラントベアによるものにも見えるし、焼け焦げた跡も見られる。

 杭と鎖と枷は、あのタイラントベアに使うにはもってこいの大きさ。


 消え失せた、緑色の外殻を有する魔力炉の核。

 渋い緑色の外観と、放たれる火柱。


「なかなかに焦臭《きなくさ》い状況だこって」


 今回の調査で集めた情報が、ここに来て一本の線になってしまった気がする。

 …ただ犯人の目的が分からない。

 あんな化物を生み出すことに何の意味があるんだろう?


 私は目立たないように移動して、焚き火や椅子にされたと思しき木の周辺を探ってみる。

 すると半分ほど燃えた冒険者証が一枚見つかった。

 簡単に取得できる最低限の身分証明。


 ここで意図的に焼いたのなら、最初から使い捨てるためで、計画的な犯行だったのかもしれない。


 視線をアキラとタイラントベアの戦闘に戻す。

 今はアキラが攻め込んだものの、タイラントベアの前足によって攻撃が阻まれ、反撃を喰らおうとしている場面。

 アキラは急いで刀で防御を試みるも、相手の怪力には敵わないようで足が浮いて吹き飛ばされる。

 ただ、彼女は転移を行って地面に着地し、刀を蔵《しま》った。


「ただの大熊だと甘く見ていた。じゃが、ここからが本番!篤と見よ!我が秘蔵の一振りが一つ『春霖《しゅんりん》』!」


 アキラが取り出したのは、彼女の身長と同じ程の長い刀であった。野太刀やら大太刀と呼ばれるものだ。

 熱で近寄りがたい状況なら、ある程度の間合いを確保できる武器を使う気なんだろう。


 そんな大太刀を引き抜こうとしているアキラだが、どうにも刃渡りが長く、アキラの体格が小柄なゆえに引き抜けずにいた。


「抜けぬ!?これ、どうやって抜くんじゃ!?ちょっと待てい、タイラントベア!」

「…なんだかなぁ」


 タイラントベアがアキラに向かって走り出した瞬間、私はアキラとの空間を圧縮して手元に引き寄せ、首元を引っ掴んでから空間を解放する。

 相手の攻撃は空を切り裂くばかりで、アキラに届くことはない。


「鞘は私が持ちますから、引き抜いてください」

「すまんのう」

「慣れない武器で大丈夫ですか?」

「……恥を忍んで言うが、ちと苦戦しておる。あれの熱気と硬い外殻は、攻めにくくてなぁ」

「攻撃が通りそうな場所を狙うのが良さそうですけど」

「腹や足の内側かのう?首は一周ぐるりと外殻に覆われておるぞ」


 あのタイラントベアの懐に入り込んだら、いい感じに龍の丸焼きが完成しそうだ。

 まあ、その次にできるのは、私の摘入《つみれ》だろうけど。


「つまり、あのタイラントベアをひっくり返せればいいんですか」

「そうなるのう」

「私もできることを探しますけど、アキラ様が倒してしまえるのが理想です」

「ああ、承知した」


 アキラは鞘から大太刀を抜き取ると鞘を銀蔵に納め、私を少し離れた位置に転移させてから、タイラントベアと再び対峙する。

 最初から鞘を銀蔵に入れれば良かったんじゃ…?

 抜けているというかなんというか。


 それにしても…私も戦闘に加わる旨を伝えてしまった。

 できることが限られているから、直接戦うわけじゃないけども、それでも迂闊な発言だった気がする。

 多少強そうではある。しかし、あのくらいだったらアキラでも問題なさそうと思ってしまうのは、きっと無責任だ。

 それに吐き出した言葉を呑み込むわけにもいかないし。


 私にできることは空間の圧縮と解放。

 何かとの間を圧縮して近づけ、その近づけた間を元に戻してしまう。

 これをタイラントベアに使うとなると、一旦近づけた後に相手から移動してもらう必要がある。

 そもそも…。


 …いや、あれこれ考えすぎて煮詰まってもよくないね。やれるだけやってみよう。

 頭でっかちでひっくり返っちまうよ。


 私は適度な高所に登って周囲を観察する。

 手頃な急斜面でも都合よくあれば、その上から圧縮を使って引き寄せ、タイラントベアに転がってもらうことができるかもしれない。

 ただ、そう都合の良い話があるわけもなく、ここいら一帯は森林こそあれど、広く平坦な地形だ。


 じゃあ次を考えよう。

 木の上から圧縮を使うのはどうだろう?

 いや、もし上手くいっても、森の中じゃアキラが大太刀を振りにくい。

 却下だ。


 視線をアキラに戻すと、大太刀を器用に使ってタイラントベアと渡り合っているけど、決め手となる勝ち筋が素人の私にも見えない。


 無茶をしてみようかな。


「アキラ!私のことは任せるよ!」

「えっ!!呼び捨て!?そもそも何を任せる―――」


 アキラの素っ頓狂な声を無視して、私は空高く空間を引き寄せる。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。