作られた男
北の地の建物は寒さを凌ぐため石造りの建物で、音がよく響く。
温花「あーっ!楊兎!」
楊兎「え〜温花、もう腹一杯なのかと思ってた!ごめんっ!ごめんって〜!」
温花「甘味買ってくれない許さないっ!」
楊兎「わかった!買ってくる!」
楊兎が温花の食べ物を食べてしまって、怒られている……(笑)
騒がしいこの声がこの部屋まで聞こえてくるなんて、な。
この日常的な会話が俺の心を温かくしてくれる――。
俺の花は自分の母親のような傲慢さも無くあのキャラクターで許されていて、他の妃のような我先でもなく自分の感情をやりたいことを大事にできて、周りを陥れるようなことはしない。
花が入宮してから感情が分からなくなり、俺の中で疑問が、違和感が生まれてきた――。
この時期に北の地を訪問する提案は俺が幼い頃、母親が決めたことだ。
その理由は北の地はまだ新しく治めた場所でもあるため、俺がこの地にやってくることで華国の地であることを見せつける意味を持っている。
俺は楊兎が年に1回でも里帰りができれば嬉しいだろう、なんの疑いも無かった。
だが、なぜこの時期なのだ――?
ずっと反抗なんて反抗しなくてよかった。
衣食住、欲を満たすには全部後宮が満たしてくれる。
そこに温花を思うような感情があったのか――?
今まではうまく回ってきた、そう思っていた。
俺の花に毒見役……か。
大事にしたいと思う人にそのようなことをさせなければいけない自分はどれだけ弱いのか、どこが立派な皇帝なのか。
人一人自分の力で守れない男が国民を守れるのか――?
北の貿易を行うこの地で、いつまで俺の国なのかも定かではない――。
宮廷、祝街、下庭、花街……差別化が進んでしまったのもそのように仕向けた皇太后の思惑も俺は気がつけなかった――。
国は人でできている、そこで生活している。
皇太后様の周り、俺が見えている範囲だけが良いように見えていただけなのか――?
カビ臭くて、手入れの行き届いていないあの屋敷へ帰りたいと思うようになって行った。
手入れが行き届いているようには見えない。草が生え、虫が自由に飛び回る。でもどこか懐かしい。
宮中全体が全て自分のものであるのだが、人が多すぎる、整備されすぎている。
楊兎、红京、温花にすっかり懐いてしまった侍女の陈莉さえも家族のようだ。
俺は後宮の中をこのような場所を増やしたいと。
こんな場所を国に、民に守ってほしいと――。
毒を盛る手を止めたい。
毒を盛らなくていいような関係にしたい。
家族のような国にしたい。
俺が終わらせなくてはいけないのでは――?
皇太后に守られていただけ、皇太后にうまく使われていた息子、皇子、皇帝だというただのお飾りだ――。
全部、知りたくなかった。
ずっと俺はすごい皇帝であるのだと思っていたかった。
「作られ続ける」そっちのほうがずっと楽だ。
俺は、生きてきて自分の感情も、他人の感情にも興味無かったのか――。
買い物に出掛けていた楊兎は袋いっぱい抱え部屋に入ってきた。
口は忙しそうに動いている。
楊兎「なんだー、悩み事か?(笑)」
華辉「笑うな」
楊兎「人間ならそう思うってー。俺が華辉の立場なら悩み過ぎて食欲落ちる〜」
華辉「そんなもんなのか?」
楊兎「そんなもんだ(笑)」
華辉「そうか……早めに宮へ帰ろう」
まずは皇太后様と話をしなければ。俺の作りたい国を伝えていかなければ。
山源「お食事、お気に召しませんでしたか?!」
山源は慌てふためいている。
荷解きを終えた温花は大きな荷物を抱えて部屋にドスンと置く。
楊兎の買い物袋を見て、目を輝かせる。
温花「楊兎!ちゃんと買ってきたの?甘味っ〜」
楊兎「これ温花の分」
温花「わっ!いい匂い〜っ!」
そうだ、俺はこの笑顔を見ていたい。
国がこんな笑顔を絶えない場所にしたい――。
華辉「違う。帰ってやりたいことができたのだ」
華辉様の顔が何かを決心したようだった――。




