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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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散歩



 隊列に守られるように真ん中に位置する皇帝華辉ふぁほいの馬車が止まっている。

 兵たちは警戒を緩めることなく目を光らせている。

 この華辉ふぁほいという男がどれだけの存在なのか思い知る。


 侍女として旅に同行したからには仕事をしないと――。


 温花うぇんふぁ「長旅お疲れ様です。お水をお持ちしました」

 華辉ふぁほい「車酔いしていたのか?楊兎やんとぅと馬に乗っていたみたいだが」

 温花うぇんふぁ「どうしようもないくらい車酔いしてしまいました……」

 華辉ふぁほい「まぁ、いい。侍女の衣も似合っている。あと、そのお団子も」

 温花うぇんうぁ「あ……気分が悪くてすっかり忘れていました……(笑)はい、ありがとうございます」


 自分の容姿のことを忘れる妃なんているのか?(笑)

 いや、そもそもそこらの妃と同列にできる女では無かったな……(笑)


 山源しゃんやん華辉ふぁほい様、そろそろ出発します」

 華辉ふぁほい「この車に温花うぇんふぁを」

 山源しゃんやん「それでは侍女と旅をしたことになってしまいます。皇后様や上級妃に説明がつきません」


 正論をぶつけられると華辉ふぁほい様は不貞腐れてしまう。まだまだ青年なのだ。

 若くして皇帝にならなくてはいけなかった華辉ふぁほい様の気持ちも理解してあげたいのだが――。


 温花うぇんふぁ「陛下、あたしは大丈夫です。他の侍女たちは交代で歩いているようですし、あたしも散歩してきますね」


 温花うぇんふぁ様は笑顔で自らの足で歩き始めた。

 

 妃の立場があるお方は侍女として旅に同行するなどプライドが許さないものだろうが、温花うぇんふぁ様はそれも楽しんでいるように見える。


 また、侍女としての働きっぷりは本物そのものだ。

 お茶を出し、水を汲み濾過し、荷物の整理などよく周りが見えている。

 このような人が後宮に入ってすぐに皇太后様から目をつけられるようなことをし、華辉ふぁほい様をここまで振り回し、貴妃の李珠江りしゅこう様のことを敵に回し続けている。うまくやろうと思えばいくらでもできたのではないかと思えてしまう――。


 到着すると荷物を忙しそうに運び、宮中とは違う作りの屋敷の中を見て走り回っていた。

 華辉ふぁほい様は不安そう、というより構ってくれないことに不満そうだ。


 山源しゃんやん「お疲れでしょう、明日に向けてもうお休みになりませんか?」

 華辉ふぁほい「そうだな、食事を早めようか」


 温花うぇんふぁ「えー!一時間も早く?!間に合う?!」

 山源しゃんやん「すいません、温花うぇんふぁさ……温花うぇんふぁ、侍女たちをよろしくお願いします」


 ここに着いてきた侍女たちはまだまだ若い侍女たちばかりだ。

 皇帝からのお手つきがあり得ないであろう、そのような幼い歳のものばかりだ。

 温花うぇんふぁは最年長として今回の旅の侍女頭となっている。


 温花うぇんふぁ「荷解きはあとでします。まずは食事の準備を行い、配膳をします。疲れている様子なので少し量は少なめで良いです、間に合わせましょう。そのためにもまずあなたたちも少し栄養を取ってください」


 一人に1つずつ軽食を配った。

 それから幼き侍女たちはせっせと言われるがままに配膳まで済ませた。


 山源しゃんやん「毒見もいたしましょう。ここは国の中といえど外側なので、様子を見なければいけません」

 温花うぇんふぁ「それではあたしがやりましょうか?」

 山源しゃんやん「それでは私が罰を受けてしまうことになります」


 山源しゃんやん様は驚いた様子だった。

 毒味なんて進んでやるようなことではない。

 

 温花うぇんふぁ「この子たちに毒見をしろと?この子たちの未来は私より長いので、私が」


 红京ほんじん「何を言ってるんですか。そのときは山源しゃんやん様の首が飛びますよ。もう少し自覚を持っていただきたいのですが。温花うぇんふぁ様」

 温花うぇんふぁ「どのような?侍女としての務めはしっかりできたと思います」

 红京ほんじん「あなたはもう少し立場を考えてください」


 红京ほんじんの言う自覚は妃であることのようだ。


 红京ほんじん「医者の俺が毒見薬になります。1番近しい知識を持っているのは俺であると思います」

 山源しゃんやん「そうですね、すいませんがお願いできますか?」

 温花うぇんふぁ「だめ!あたしがする!红京ほんじんは陛下が倒れた時に助けなきゃいけない大事な職!だから侍女のあたしが」


 温花うぇんふぁお嬢様は必死に红京ほんじん様を引き留めた。

 毒が入っていた時、華辉ふぁほい様になにかあったとき対処できる人がいないのも確かに大変なことだ。

 それだけではないからこれだけ红京ほんじんのことを引き留めているのだろうが……命をかけるということか。


 温花(うぇんふぁ)様は红京ほんじん様に耳打ちをし始めた。

 

 温花うぇんふぁ「あんな小さい子たちに毒味なんて嫌だし、红京ほんじんが倒れたら病人怪我人でたときどうするの?!……あたしがどうにもこうにもいかなくなった時は現代に帰って、治療してもらって……!絶対こっちに帰ってくる!

 红京ほんじん「何言ってるんですか……?……解毒剤作ってから俺が飲みますので、温花うぇんふぁはその小さい侍女たちが不安にならないように努めるべきです……」


 二人はコソコソと何かを言い争って、皿を取り合っている――。


 華辉(ふぁほい)「食事をするだけでもこれだけ迷惑をかけなければいけないのか……」


 騒ぎになっている様子を目にした華辉(ふぁほい)様は落ち込んでいる様子だった。


 どれだけ自分が甘えた環境で生きていたのか、突きつけられたのだ。


 楊兎(やんとぅ)「うわー!うまそー!誰も食わねーの?!」

 红京(ほんじん)「大事をとって毒見をしなければいけま……」

 楊兎(やんとぅ)「なーんで毒味なんかしなきゃいけねーんだろうな。そんなこと思わなくていいのになー」

 红京(ほんじん)「恨みなんてどこで買っているのかわかりませんよ」

 楊兎(やんとぅ)華辉(ふぁほい)が恨まれてんのかー」


 楊兎(やんとぅ)将軍は次から次へと食事を口にし、美味しそうに食べる。


 楊兎(やんとぅ)「全部うめー!華辉(ふぁほい)、早く食って寝ろよー!(笑)」

 温花(うぇんふぁ)楊兎(やんとぅ)なんでも食べてるから毒の耐性とか持ってるんじゃ無いの?大丈夫?(笑)」


 朕は――。

 俺は――。

 

 生まれた時から母親に従って生きてきた。

 よくわかっている母親に従っていれば、字も綺麗に書けた、学力も、知識もついた。

 毎日ずっと何かをする。他のことを考える時間を与えられない。何かに常に集中している。

 周りの子どもがどのように過ごしているのかは関係ない。皇帝になるためだけに、賢い大人になるためだけに、育てられた、いや「作られた」のだ――。

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