酔い
楊兎「あ、红京もういいのー?」
走り抜ける馬車の中から緑の衣の人物が飛び降りてきた。
红京「やはり……楊兎将軍は何を考えてるんですか……温花様が乗ること知っていて、俺をあそこに乗せておくなんて」
楊兎「えー、そうなのー?」
楊兎将軍は棒読みで全く感情がこもっていない。
これは分かっていたな。妃と二人っきりにするなんて、この人は何を考えているのだろう。
楊兎「红京、何か安心してるのー?そうじゃ無くなった時それはそれでいいのー?」
すごく遠回しに楊兎将軍は言葉を選んだ。
楊兎将軍は天然なのか、天才なのかわからなくなる時がある。
惚けた顔で確信を突こうとしてくる。
温花様と何かあるように感じられていたのか。
もし陛下が温花侍女として今回の旅に同行していたと公にされているのであれば「寵妃」と宣言してしまったことになる。
安心しているのは今回の旅の影響で事件に巻き込まれる可能性が高くなるのでは無く、温花が「寵妃」とし真実になることを恐れていたわけではない。
この旅で医者と温花に関係があるなど勘ぐられてしまえば、また狙われる原因を俺が作るわけにいかない。
ただでさえこちらが寿命縮まりそうなこといくつも、いくつも……。思い出せば面白くなってしまうほどだ。
なんて無鉄砲な人なんだ。これ以上死に急いでもらっても困る。
人の心配をする前に自分の心配をしてほしい――。
红京「俺は俺の仕事をやるだけです」
红京は歩くことを苦だとは思っていないのか、いつもの顔で歩き続けた。
温花は、顔を真っ赤にさせ、馬車の中から怒っているとアピールしてくる(笑)
馬の休憩が始まると温花は荷物車から駆け出て、空気が美味しいと大きく息を吸って、野花を見て嬉しそうだ。
红京「それは薬草になりますね。金銀花というお花です。夏の暑気あたりや風邪の初期に用いられ、お茶に混ぜて飲めますよ」
温花「飲めるの?!……でも摘んでしまったら帰りにこの花見れなくなっちゃうしな……」
红京「そうですね、俺も摘めない花がありますので、その気持ち分かります――」
温花「毒があるとか……?」
红京「ふっ(笑)それよりももっと危険かもしれません……っ(笑)」
温花「何その花っ(笑)触っただけで死んじゃうの?!(笑)」
温花に話しかける癖がついているのか野花を覗き込む隣に红京は歩いていく。
広い大地の野花が咲くところに二人はしゃがみ込んで何やら神妙な顔で花を見ていたかと思えば、ニコニコとしている。
温花は……嬉しそうだ。
また馬車の中に元気に乗り込んだ温花は荷物車の中から項垂れていた。
温花「……红京……酔い止めが欲しい……」
红京「何やってるんですか。しっかり車の中に入ってください」
温花「気分悪いの……」
完全に乗り物酔いをしていた。
だんだん悪路になっていく車の中で酔ってしまっても仕方のないことだ。
それに温花は楽しみ過ぎてよく寝ることができなかったのだろう。
红京「対処療法としては寝てください。疲れがたまっているんです」
温花「あっちの高級車とは違うから〜……(笑)」
真っ青な顔のまま指差す、華辉が乗る綺麗な車とは違いこちらは荷物車。
ここまでして華辉は温花を後宮に置いておくことができなかったんだろう。
红京「そうですね、温花は今回侍女としての付き人なので我慢しないといけません」
温花「わかってる……」
楊兎「我慢しすぎた結果がこれなんだろ?それなら温花馬に乗るか?」
温花「馬になんて乗ったことない……」
楊兎「外の空気吸えば元気になるだろ!」
「ですが楊兎将軍、乗れる馬はもうありません」
楊兎「温花、こっち」
楊兎将軍は温花を力いっぱいに引っ張り上げた。
今までの戦の中で負傷兵を運んだ経験があるため、これくらいは余裕の様子だ。
温花は大きな楊兎将軍の大きな体にしばらく隠れていた。
次第に顔色が良くなって「馬ってこんなに高いんだ」「楊兎将軍と自分乗せて重くないかな?」「うわぁ〜さっすが大陸山が大きい〜!」と段々元気な声が聞こえてきた。
温花「お馬さんありがとう。楊兎もっ!」
温花は優しく馬の首を撫で、馬を飛び降りる。
その温花の姿を兵たちは興味津々な様子で見ていた。
それもそうだろう。将軍と友人なのか、妹なのか、それとも――。
考えを巡らせても追いつかない関係性である。
楊兎将軍は温花が侍女の仕事に向かい、馬の手入れをしていた。
楊兎「红京って馬乗れるのか?」
红京「医者にはそんな技術ありませんよ」
楊兎「红京も乗るか?!」
红京「男2人で乗馬なんて、また楊兎将軍は結婚しないから男が好きなんでないかーと噂されるんですよ」
楊兎「そんな噂あったのか(笑)红京も練習するかー?」
红京は呆れた顔で見てくる(笑)
いつだって冷静な红京には敵わねーな(笑)
少しくらい馬に乗せたこと嫌な顔すると思ってたのになー(笑)




