表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりと始まりの花【谢国復路編突入】  作者: はな
温花【後宮編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/287

酔い✿

◇いつも見てくださる方、最新話から楽しんでくださる方も、本当にありがとうございます!

◇執筆・なろう共に初心者ですが、一話一話大切に書いております。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。


 

 楊兎やんとぅ「あ、红京もういいのー?」


 

 走り抜ける馬車の中から緑の衣の人物は軽やかに飛び降りる。

 

 

 红京ほんじん「やはり……貴方でしたか。楊兎やんとぅ将軍は何を考えてるんですか……温花うぇんふぁ様が乗ること知っていて、俺をあそこに乗せておくなんて」

 楊兎やんとぅ「えー、そうなのー?」


 

 楊兎やんとぅ将軍は棒読みで全く感情がこもっていない。

 これは分かっていたな。妃と二人っきりにするなんて、この人は何を考えているのだろう。


 

 楊兎やんとぅ红京ほんじん、何か安心してるのー?そうじゃ無くなった時それはそれでいいのー?」



 遠回しに言葉を選んでいる。

 

 この人は楽観的に見えるが核心を突くことができる。真実を自分の目で判断することができる人物。天然なのか、天才なのか。呆けた顔は、愛嬌すら含む。


 楊兎やんとぅ将軍は俺が安全な場所からしか温花うぇんふぁを守ろうとしないこと、完全に手が届かなくなったときはそれでもいいのか?と問い詰めたいようだ。

 温花うぇんふぁは間違いなく皇帝華辉ふぁほい様からの寵愛を真に受けている。それが今までの後宮の在り方、寵愛の仕方とは異なっているからまだ上級妃になることは無いと甘い考えをしている、時間の問題だと。

 

 温花うぇんふぁ様と何かあるように勘ぐられていたのか――。

 この暑くなってくる空気の中、この大将軍は涼やかに銀髪を靡かせ、俺の奥を見透かそうと覗き込む。本当にこの人はどんな顔をしても絵になることが男の俺でも悔しくなるほど。



 红京ほんじん「俺は俺の仕事をするだけです」



 俺の仕事は医者。まだ見習いという存在だができることは傷や病を治療することだけ。

 温花うぇんふぁという一人の人間をどうこうすることはできない。

 ただ同じ現代から来た人間として手を伸ばして置く義務はある。それだけだ。



 医者見習いは全て知りえない。

 もし陛下が温花うぇんふぁが侍女として今回の旅に同行していたと公にされているのであれば「寵妃」と宣言してしまったことになる。

 その理由よりも、遠征期間中は楊兎やんとぅ将軍もあの屋敷には置いておけない、旅に同行させることで温花うぇんふぁの身の安全を取ったことのほうが腑に落ちる。


 

 この旅で医者見習いと温花うぇんふぁに男女の関係があるなど勘ぐられてしまえば、皇帝陛下からも命が狙われる可能性、恨みに転じた権力者の手が伸びるのも一瞬だろう。

 

 医学館へ赴いたときに陛下は男装した温花うぇんふぁを強引に連れ戻した。

 楊兎やんとぅ将軍の球が飛んで、温花うぇんふぁが腰を抜かしたときも。

 俺がこれ以上、温花うぇんふぁに近づく理由を作ってはいけない。

 ただ、医者として手を差し伸べていることにする必要がある。


 

 楊兎やんとぅ将軍は人を弄んでいるけど、そろそろ辞めて欲しい。

 温花うぇんふぁがこちらに向けるあの顔が俺にはよく理解できない。

 

 皇帝陛下華辉ふぁほい様、後宮の妃たちが酔いしれてしまう美形の顔立ちと男らしい体つきを持ち合わせ、一国の権力を持ち、あれほどまでに温花うぇんふぁへの思いを寄せ、形にしている――。

 

 楊兎やんとぅ将軍は剣の師匠、温花うぇんふぁと兄妹のように笑い合い楽しそうな時間を過ごし、何よりもあの銀髪に整った顔立ち。皇帝華辉ふぁほい様に次いで宮中人気2番手、男性人気を合わせたときには――。


 

 そんな二人を毎日見ている温花うぇんふぁは何か血迷っているとしか思えない。

 

 それとも――。

 温花うぇんふぁが生きていくための手段の1つなのかもしれない。

 そうでなくては皇帝、将軍たちがここまで気遣うほどの女性になることはできなかったのかもしれない。

 「墓場」と呼ばれる屋敷の主人の笑顔は間違いなくそこで咲いているように見えるが――。

 


 温花うぇんふぁ「死ぬかもしれない――」



 墓場の主人は侍女として荷物車の中から――。

 体をまるで幽霊のように乗り出し、グロテスクな状態。


 

 红京ほんじん「何やってるんですか。しっかり車の中に入ってください」

 温花うぇんふぁ「……红京ほんじん……酔い止めが欲しい……」

 


 先ほどまでよく喋っていた人物は口元を抑え、真っ青な顔で 完全に乗り物酔いをしていた。

 だんだん悪路になっていく車の中で酔ってしまっても仕方のないことだ。あの人の性格上、楽しみでよく寝ることができなかったのだろう。

 遠足程度に捉えていたんだろう――。

 


 红京ほんじん「対症療法としては寝てください。疲れがたまっているんです」

 温花うぇんふぁ「あっちの高級車とは違うから〜……(笑)」


 

 真っ青な顔のまま示す先には皇帝華辉ふぁほい様が乗る綺麗な車。こちらは粗末な荷物車。ここまでして華辉ふぁほい様は温花うぇんふぁを後宮に置いて行けなかったのだろう。

 

 

 红京ほんじん「そうですね、温花は今回侍女としての付き人なので我慢しないといけません」

 温花うぇんふぁ「わかってる……」

 楊兎やんとぅ「あ~!!我慢しすぎた結果がこれなんだろ?それなら温花うぇんふぁ馬に乗るか?」

 温花うぇんふぁ「馬になんて乗ったことない……」

 楊兎やんとぅ「外の空気吸えば元気になるだろ!」

 


 この先の皇帝華辉ふぁほい様の休憩地点まで行かなければ酔い止めを調合する時間の確保が難しい。

 楊兎やんとぅ将軍が提示してくれた打開策の馬も一人で乗るのも困難だろう。この顔色のまま歩かせるわけにもいかない。このまま荷物車で体を休めことが現実的。


 

 「ですが楊兎やんとぅ将軍、乗れる馬はもうありません」

 楊兎やんとぅ温花うぇんふぁ、こっち」


 

 楊兎やんとぅ将軍は温花うぇんふぁの体を荷物車から引っ張りだし、力いっぱいに自身の馬の上まで抱え上げた。今までの戦の中で負傷兵を運んだ経験があるため、筋肉質な腕と体は温花うぇんふぁ一人抱えて馬を乗りこなすことは簡単。

 真っ青の温花うぇんふぁは体を揺らされ真っ青どころか、真っ白になり目も開けられない様子で過ごしていた。はず――。



 温花うぇんふぁ「――馬さん!こんなに高いの?!」「楊兎将軍とあたし乗せて重くないかな?」「うわぁ〜さっすが大陸山が大きい〜!」「馬号か、馬丸か――名前何にしよう――」

 楊兎やんとぅ「名前は決めてある!ゴンゾンゴウゴウだ!」

 温花うぇんふぁ「ゴばっかり!(笑)馬号のほうが呼びやすいよ?!(笑)」

 楊兎やんとぅ「ゴあると強そうだろ?!」


 

 馬の上で景色を楽しみながら、静かな隊列に元気な声が届く。

 この会話を耳にする人たちはどっちもセンスが無いと思っているのか、静かに肩を揺らすしかない。



 温花うぇんふぁ「ゴンゾンゴンゴンありがとう!」

 楊兎やんとぅ「ゴンゾンゴウゴウだ!」

 


 温花うぇんふぁは優しく馬の首を撫で、馬を飛び降りる。思ったよりも高く膝を痛めたのか「やばい」としばらく動けない様子。

 

 その温花うぇんふぁの姿を兵たちは興味津々な様子で見ていた。

 それもそうだろう。将軍と友人なのか、妹なのか、それとも――。

 考えを巡らせても追いつかない関係性。


 

 楊兎やんとぅ将軍は温花うぇんふぁが侍女の仕事に向かい、馬の手入れを始める。もう酔い止めを調合する必要はなくなったようで良かったです。


 

 楊兎やんとぅ红京ほんじんも乗るか?!」

 红京ほんじん「貴方が結婚できない理由出来上がってしまいますよ――男2人で乗馬なんて、また楊兎やんとぅ将軍が男色だと噂が立ちますよ。俺相手に。」

 楊兎やんとぅ「そんな噂あったのか(笑)红京ほんじんも練習するかー?」

 红京ほんじん「勘弁してください」



 本当に勘弁してください――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ