仮面
ずっと、あたしは上手なんだ。
今日の仮面は、どれにするか選ぶ。
友達へのカラフルな仮面。
大人と過ごす仮面。
ここに溶け込まないと――。
どれだけ毒を刺されようと家族に必要とされないと、存在が許されない。
上手に仮面被っているから「愛してよ」
「ここにいていい」と言ってよ――。
あたしの中にある仮面はもう何枚存在するのかわからない。
八方美人。大袈裟。そう言われても仕方ない。
もうこれがあたしの生きていい方法なんだから。
汗をかいて、前を見ているのに景色の情報は入ってこない。
息をしているのに自分の体はもう限界だって震えているのに、気がつけない。
音も、色もない世界に入る――。
泣きたくない。弱くない自分でい続けなければ、何かに負けてしまう。
だからこの剣をあたしは握る。
ここであたしの存在を無くして仕舞えば、あたしはもうどこにいることも許されなくなってしまう――。
あたしは大丈夫。大丈夫だから――。
红京「――温花、少し休んでください」
その声にあたしの世界に色が戻ってくる。
ここにいる、と。
気がついた時には息切れしていて、苦しい。
どうしてこの人は生きていることに余裕があるんだろう。
どうしていつも同じように入れるんだろう。
必要なことだけを選ぶことができるんだろう。
誰か、ではなく自分が存在していることを当たり前にできるんだろう。
あたしがどんな仮面を被るか決める前から出会ってしまったこの人はあたしがどんな姿でも、いつも同じ距離でいてくれる。
「何もしなくてもいいの――?」「頑張らなくていいの――?」
でも、あたしにはどうすればこの人のようになれるのかわからない――。
だから今日も――。
温花「疲れちゃったー!(笑)」
この笑顔さえ忘れなければ、ここにいてくれる人たちがいる。
だから温花をやりきってみせるしかない。
あぁ、もう苦しい。
苦しいって、やってることは現代と何も変わらない。
この人に憧れてしまって、あたしはあたしの軸がわからなくなった。
あたしは仮面を被って大人になったふりをする。
置いてけぼりのこどものあたしはずっと隠さなきゃ。
红京が医者であり続けるために、あの人が壊れないように。
あたしがこの剣を握る――。




