風
「山源とてもいい音色ね」
そう、この優しい声が好きなんだ――。
墓場の変人が妻に送ってくれた「風鈴」この華国で見たことない硝子細工は夫婦の安らぎの時間を作ってくれた。
自分の屋敷の中でこの親かな声を聞くことができる、それだけで幸せだった。
今日も今日とて、華辉様は墓場と呼ばれる屋敷へと向かう――。
また一段と騒がしい屋敷の中は大きな声が響いていた。
楊兎「やったー!俺の勝ちだー!」
温花「楊兎!ずるい!」
楊兎「何もズルはしてないぞ!?」
温花「体格っ!体格のこと!」
楊兎「温花はもっと食え!」
この暑い中、楊兎将軍と温花お嬢様は球蹴りをしていた。
しかも一対一で。
華辉「正気か……あの大男相手に……」
红京「……他の妃を見習って欲しいですね」
医者見習いは一歩引いて細い目で二人を見ている。
手は止めずに薬の調合をしてこちらもまた忙しそうだ。
華辉「医学館にさせればよいものを」
红京「彼の方のように楽しいものは楽しまなくては――」
球蹴りをする温花お嬢様を少し見つめ、呆れ顔でまた作業を進めた。
温花「――红京!危ないっ!」
楊兎(楊兎)将軍の球を取れなかった様子で走ってくる温花を横目に冷静な顔のまま片手でその球を取った。
红京「――こちらに飛ばさないでください、と言いましたよね?」
勢い余った体はそのまま医者見習いの体に突っ込み、調合されていた薬は周りに散らばる――。
どこか打ったのか温花お嬢様は红京の体の上から動かなくなってしまった。
そんな温花お嬢様を体の上に乗せた红京は目を細くする――。
その様子を見た侍女はお盆を投げ捨て主の元に駆け寄り、楊兎将軍は顔が固まったまま真っ白な顔で覗き込んでいる。
楊兎「おーい!球大丈夫かー?」
陈莉「温花お嬢様っ!」
红京は球を楊兎将軍にふわりと投げ返す。
红京「……球より自分の体を大事にしてください」
温花「いった……ぃ……指……足……打った……」
红京「楊兎将軍も妃相手に本気出さないでください。それと球を心配する前に妃のことを心配してください。あなたの銀塊では支払えない額の請求が行きますよ?」
楊兎将軍ははっとした顔をして温花お嬢様以上に小さくなっていた。
红京は呆れた様子で自分の上に落ちてきた温花の背中をさする。
红京「立てますか?」
温花「あ……うん……。きゃーーーーーっ!!」
温花お嬢様はこれでもかと大きな声で叫んだ。
红京「そちらから突っ込んできたのでしょう?こちらが叫びたいです」
陈莉「お嬢様動けますか?お怪我は?」
温花「……ぁ……いや……あの……」
红京「腰が抜けたんですか?……楊兎将軍、しばらく球蹴りは禁止させてください。腰が抜けたは死活問題です」
楊兎「あ……っ、あ、ごめん!温花!大丈夫か?!」
温花「全然っ……、大丈夫じゃないと思う」
起きあがろうとする温花お嬢様は力が入らないようで、また崩れ落ちるように红京の体に落ちていく。
温花「ごっ……ごめんっ……力入んなくて……(笑)」
红京「華辉様すいません、回収をお願いします」
山源「こちらも腰が抜けてます」
華辉「――」
温花お嬢様と红京様のこのような姿を見て言葉を失い、白目を向いていた。
その姿を見て楊兎将軍はよく状況を理解しているのか、いないのか、大爆笑していた。
楊兎「華辉何やってんだ!球飛んできたくらいでびびるなよっ!起きろーっ!(笑)」
红京「温花様動かしますよ?」
红京様は腰の抜けた温花お嬢様を寝床へと運んだ。
红京「明日は双六くらいに収めてください」
温花「あの双六飽きたの〜……」
红京「また新しいもの作ればいいじゃないですか」
温花「あれで3作品目なの〜!もうネタが尽きちゃって」
红京「わがまま言わないでください。子が成せない身体になってしまったらどうするんですか!華辉様が困ります」
温花「……あたし元気だから……!」
寝床にそっと置かれた温花は反対側を向いて不貞寝してしまった。
あの反応を見れば分かる。
温花お嬢様は红京様のことを――。
華辉様もそのことは医学館のときからもう重々わかっているはずだが――。
わかっていても目の当たりにするのは少し刺激が強すぎた様子だった。
楊兎「華辉は温花のところへ夜はいかねーんだな」
華辉「……他が忙しいから、な!」
楊兎「温花以外で使い物にならないんだろう?妃の被害者ださねーよーにしねーと、後々大変だぞ?プライドを傷つけられたとかでさー!(笑)」
山源「楊兎様っ!」
楊兎将軍は華辉様の背中をバンバンと叩きながら笑っている。
華辉様は力なく、空を向く。その様子を見て察したのかやばいと固まる。
楊兎「――何人の妃で試したんだ……?」
華辉「李珠江合わせて3人だ……」
楊兎「じゃ、早く温花のところに行けばいいのに」
華辉「……」
楊兎「この間のは温花も心の準備できてなかっただけだろうし、温花も後宮がどんなところかってことくらいわかってんだろ?別にいいだろー」
華辉「では、楊兎の好きな女に好きな人がいてもそうすると言うのか」
楊兎「んー、好きになってもらうう努力はする!」
華辉「あのなー、簡単に言うけどな?!」
楊兎「……身分として保証されてるじゃん!」
楊兎将軍にしては悔しそうな顔をして、言い放った。珍しい――。
二人が友人として会話をするこの空間はただの青年の空気になる――。




