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終わりと始まりの花【谢国復路編突入】  作者: はな
温花【後宮編】

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事件✿

◇いつも見てくださる方、最新話から楽しんでくださる方も、本当にありがとうございます!

◇執筆・なろう共に初心者ですが、一話一話大切に書いております。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。


 温花うぇんふぁ「――っ」


 

 「墓場の変人」と呼ばれる妃は手に包帯を巻き付ける。

 圓窓えんそうの縁に腰かけ森の鳥たちへ餌を与えるだけではなく、剣の稽古を自ら苦しみながら励んでいる。女性が鉄の塊を振り回すのは難しく、手の震えや皮むけだけでは無く、腕や肩までも痛みが生じているようだ。

 

 

 陈莉ちぇんりぃ「もうお辞めくださいっ!兵士や男性とは体の作りが違うので、体が壊れてしまいます……!」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃに心配かけるなってまた怒られちゃうかな……(笑)」

 


 笑い飛ばそうとする温花うぇんふぁお嬢様の基準はあくまで医者見習い红京ほんじん様。あのお方が怒ることならば辞めてくれるの、か――。

 温花うぇんふぁお嬢様以外のお妃には無い、頼もしいお姿。


 太陽に照らされ生き生きと伸びようとする花なのかもしれない。

 



 温花うぇんふぁ「あともうちょっと――」


 

 最近は苦しんでいるだけではなく、どこか楽しんでいる様子にも見えてくる。

 大きな声と共に剣が空気を切り裂こうと、伸びる。そして、また剣が落ちる。

 手は包帯まみれになっているのにどこか満たされている顔で笑う。


 

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ今日もありがとう」


 

 そう言って温花うぇんふぁお嬢様は言ってくれる。

 侍女をして仕事が報われる、楽しいと思えるのは温花うぇんふぁお嬢様と過ごせるから。満ちて、刺激のある毎日はあっという間に過ぎずっとこんな毎日が続きますようにと願わずにはいられない。


 墓場と呼ぶには穏やかな屋敷。夜風の抜けていく音だけが流れる静かな屋敷に、何かが爆したような轟音響き、心臓の音が体を支配する。

 

 

 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様っ!」


 

 轟音の先は温花うぇんふぁお嬢様の部屋。

 扉はこじ開けられたのか床に倒れ、月明かりに照らされる窓は大きく開き風が外へと抜け、寝台は乾いた土と泥が無造作に散り乱雑に布団は投げ捨てられている。そこには温花うぇんふぁお嬢様の姿は見当たらない――。

 

 散歩から帰って来なかったあの時よりもこれは一刻の時間を争う事態。

 「梟」にあのときのように助けを求めても間に合うかどうか――。


 

 陈莉ちぇんりぃ温花うぇんふぁお嬢様!どこですか?!」


 部屋の窓から飛び出た先で男たちは群がっている。

 この熱い緊張感から流れる汗は白い寝衣が肌に張り付き、乱れた髪からは妃様とは思えない鋭い眼。


 

 「出生のわからぬ、女めっ」

 「妓女は黙ってついて来い」

 「そうか、この女は温花うぇんふぁというのか」

 「妓女のくせして皇帝の妃になろうなど(笑)」

 「俺たちが遊んでからでも遅くないか(笑)」



 「妓女」と男たちが毒する口にするのは、妃のような品のある色気ではなく、どこか危ない、棘のようなものを持ち得ていた。危うい色気は「犯したい」という欲求と同時に「壊されるかもしれない」という恐怖さえも抱かせる。

 静かに崩れていきそうな頽美たいび、危うい色気の甘い毒に吸い寄せられる蛾のように粗く動き回る男たち。


 

 温花うぇんふぁ「私を満足させることができるのですか?」


 

 温花うぇんふぁは暗闇の中、男たちよりも低い位置で笑う――。


 

 「そんな可愛いがってもらえると思っているのか?」

 温花うぇんふぁ「私は剣を振るう妃だとご存知ですか?ここがあなたたちの墓場になりますが、よいですか?」

 「こちらは男6人だぞ?」


 

 温花うぇんふぁお嬢様は手に巻いていた包帯を解く。血の滲んだ包帯は暗闇に赤を添える。銀色の剣を握り、男たちの灯篭の灯りを集める――。


 「死」への恐怖。それよりも魂が腐っている男たちに屈することが許されないと、自分の限界を試すときが来たと喜んでいるよう。

 


 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ楊兎やんとぅ将軍を呼んで」

 「楊兎やんとぅ……?あぁ、楊兎やんとぅ将軍が下級妃の相手をするはずがないだろう?(笑)」

 「あ~そうか、お前は妓女だから将軍様の相手もしていたのか(笑)」


 

 騒がしく嘲笑う男たちと静かな剣を握る妃。

 侍女陈莉ちぇんりぃの背中を静かに押すと、重い剣を両手で握り立つ。


 

 温花うぇんふぁ「あたしって結構、脳筋なんだけどな~――(笑)」



 楊兎やんとぅ将軍に教わった型。

 大きな体で繰り出される剣。力が足りなくて、あのようにはできないかもしれない。

 だけど、あたしができるのはこれしかない。怖がっていてはこの体は動かない。あたしが知っていること。

 「戦いは結構頭使うからな~」一番脳筋肉そうなあの男が呟いていた。

 

 男たちは忙しく剣を振り回し、灯篭の灯りがチラチラと目を刺す。

 あ――。

 楊兎やんとぅ将軍。あの人は力だけで押していたんじゃない。

 

 これがアドレナリン――。

 動ける、分かる。


 剣筋は楊兎やんとぅ将軍の真似、稽古通りにすれば何の問題もない。

 大きな刀身は存在感を見せつけてしまう。刃を相手に対して平面に持つと、刃金を空気の中に溶かすことができる。初めての実践が隠しやすい夜で良かった――。

 


 鉄と鉄の交わる音は暗闇に響き渡る。

 このままでは温花うぇんふぁお嬢様が危ない。

 指示されたまま楊兎やんとぅ将軍を呼びに行くことが一番確実だ。

 

 走り抜けていくと何故か私の衣は膨らみを持ち、お腹に違和感を感じた。

 これは何?筒?――狼煙だ!

 この狼煙は誰からもらったもの?

 黒の狼煙、金の鳳凰の模様。これが許されるのはあの人物のみ――。


 震える手で狼煙を引くと、煙が暗闇の中を上がっていき、大きな音が響く。

 瞬く間に馬の走ってくる音が近くなり、野太い声が増えていく。

 

 

 楊兎やんとぅ「――陈莉ちぇんりぃ!」

 陈莉ちぇんりぃ温花うぇんふぁお嬢様が男に拐われてしまいました!今屋敷の裏で一人で、まだ……あの手で……戦って……」


 

 早く伝えたいのに怖くて言葉が段々出なくなっていく。


 

 红京ほんじん陈莉ちぇんりぃは兵二人とここから離れてください」


 

 その声の主は医者見習いの。红京ほんじん様――?

 馬の手綱を引いて、腰には剣をかけている。

 楊兎やんとぅ将軍が指揮する、その後ろ静かに並んでいる。

 まるでこの状況に慣れている。


 そして楊兎やんとぅ将軍と共に屋敷の裏へ馬に乗ってかけて行ってしまった――。

 将軍と医者見習いの二人は親しい様子ではあったが、あの背中は医者見習いだけのものに見えない――。

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