7話:林檎甘いか【しょっぱいか~】
「いやいやいやあんなんアリかお前ぇぇぇぇえ!?」
速攻で転生して、文句をぶちまける俺。
だって、無いだろ。なんだよ俺ごと撃ち抜いて決着とか。
なんだよ『オチ担当』ってよぉ!?
【物事が終結する際の、キーマンとなりやすい運命にある特典ですね~。それはいつでも劇的で、華々しく散ることが多いんだとか~】
ゴミ特典じゃねぇか!?
なんだよ『不運』と『幸運』って、矛盾スキルに元々あった『悪運』が組合わさってるよ!?
【結果として壊れスキルの『ご都合主義』を手に入れたじゃないですか~。まぁ、特典と組合わさって、ご都合主義に場面を引っ掻き回して死んでいくようになりましたが~】
常に死にたくない俺に、死んで場を展開させるスキルが身に付くってどんな嫌がらせだよ。
どうなってもいいって言ったけどさ、これはあんまりだと思う。
【まぁまぁ山辺さん、それよりも、あちらを見てください~】
役所のお姉さんに促され、スルーされた悲しみを胸に俺はそちらを向く。
そこには……倒れ伏すイヌイと、それを見下ろすナルゥがいた。
そうか、ナルゥは勝ったんだな。
【山辺さんの活躍もあってこそですよ~。行ってあげてください~】
……しかたねぇな。
あいつの顔くらいは、拝んでやろう。
俺は、静かにたたずむナルゥの元へ向かった。
◆
「あぁ、あぁ……」
イヌイは、まだ意識があるらしい。
けど、その声には力がない。
いや……そもそも生きてるのが普通じゃない状態なんだろう。
「あぁ、あぁ、素晴らしい……誠に、誠に素晴らしい……おみそれいたしました……えぇ、お見事にございました……」
「…………」
「自分の中で、出来うる限りの、手は尽くしました……えぇ、満足にございますとも………」
「…………」
「いや、何か声かけてやれよ」
俺は、ナルゥの隣にきて、イヌイを見る。
なんとまぁ、綺麗に笑ってやがるなぁ。
「………手は尽くしたってお前、そりゃねぇだろ。お前は散々周りに気を使って、勝てる機会を何度も捨てて……バカだよなぁ、ほんと」
「ふ、ふふ……いえいえ、ワタクシは、ワタクシの考えうる中で、最良の選択を取っていた……そう、自負しておりますれば……」
そうかい。
カッコいいなぁ。
ほんと、すげぇよこいつ。
どうしようもなく強くて、どうしようもなく優しくて。
どこまでも曲がんなくて、どこまでもまっすぐで。
やられたらやり返すって理念を貫いて。
それ以外には手を出さないって信念を貫いて。
負けて悔い無しと相手を褒めて。
かんらと笑って死んでいくってか。
誰にも出来る事じゃねぇよな。
ほんと、カッコいいわ。
「ダークエルフの皆様……精霊の皆様……ナルゥ様……そして何より、ヤマベ様……あぁ、あぁ、全ての命……この森全てが、ワタクシの敵となった……ワタクシは、この全てを相手にし、闘い抜いた……えぇ、壮大な宿敵でした……えぇ、最大の難敵でした……大きかった、実に……大きかった……強かった……」
「なぁにが何よりだよ。俺は、本当の意味でお前と戦えてなかったよ」
逃げ回って、たまに噛みついて、反則チートに手を染めて。
誰かいないと何もできなくて。
何回も何回も死んだ。
その時点で勝負はついていた。
俺は、こいつに何一つ勝てていない。
「俺の方こそ完敗だよ。お前を倒したのは、ナルゥだ。そして、里の皆だよ」
「…………あぁ、あぁ」
イヌイの瞳が細くなる。
笑ってる。
しょうもない小話を聞いた時みたいに。
友達通しの馬鹿な話を、隣で眺めているように。
「………心地よい、実に心地よい」
その瞳は、ゆっくりと閉じられて……
「よい時間……良い時間にございました……」
その体が、光に包まれる。
「皆様……おさらばです」
薄く、薄く、消えていく。
そして………
「さよなら、イヌイ」
光が、拡散した。
俺と……ダークエルフと。
イヌイの、壮絶な闘いは、これで終わった。
◆
それから、数日。
俺とナルゥは、どこか不調がないか、大婆様と里の医者にとっかえひっかえかき回された。
俺は転生ホヤホヤで、何処にも異状は見られないと思うんだが……聖樹の中で、特典が10個に増えたことがバレて、化け物を見る目で見られた。泣いた。
ナルゥの怪我は、大婆様が魔法で治してくれていた。
この魔法、イヌイに使われてたら詰んでたなぁと思っていたが……こればかりは、世界でもほんの一握りの、才能で取れるものらしい。
多分、癒す者~とかいう特典があったりするんだろうな。
で、俺らを窮地から救ったヒーロー、クイン。
アイツに何かご褒美あげるって言ったんだけど……なんかね、今夜お待ちしてますとか言われた。
当然無視したけどね。
いや、そりゃそうでしょ!?
その気持ちには答えられないんだってば!!
ていうかその日から里の子供達から「ロクデナシ」って呼ばれてるんだけど、クイン何を言いふらした!?
【はいはい、山辺さん。そろそろ締めにいきますよ~】
くっそ、くっそぅ!
なんか盛大な誤解を生んでしまってる状態なんだが!!
………ま、まぁ仕方ない。
仕方ないと思おう!
んで、それからの話。
俺は、大婆様に呼ばれ、その屋敷にお呼ばれした。
そこには、ナルゥと、クインがいる。
あそこに関わった、主要の面々だ。
「お~、どったよ、なんか用か?」
「うむ、ちょっと話し合いをしたい」
話し合い?
あら、何かしら。
俺になんかご褒美くれるとか?
まぁ、トラブルがあったから流れてたけど、俺ってば里の食生活を改善した立役者だし?
となれば、当然のように報奨ってものがあるよな!
ワクワクしながら、皆の前に座る。
沈黙が、一分程。
……………何かしら。
「ヤマベ」
「お、おう?」
そして、俺は、
【何度目ですかその文法~】
おだまり!
えー、こほん。
そして、俺は、
「悪いが、里から出ていけ」
職と住みかを、失った。




