最終話:適当過ぎや【しません~?】
ハッハッハッハッハ。
おいこら、カメラ止めろ。お子様に見せたらいけない顔してるから今。
ほわい?わっつ?ぱーどぅん?
大婆様、今、なんて言いました?
「え~、ドッキリ?」
「いや、通達だな」
「あ、はい」
淡々と結論を述べるあたり、面接の審査官みたいで大変心にきます。
説明を、説明を要求する!!
「お前の事だから、あと数秒で爆発するだろう。説明させてもらうぞ」
「あ、はい」
完全に読まれてますね。
テンションをすかされて、私どんな気分でいればいいか、自身を見失っております。
「まず、1つだけ言わせてもらう。貴様は我々にとって有益な存在であり、人間性も嫌われていない。これは、私の判断による沙汰だと前提を持っておけ」
大婆様は、そう述べて説明を始めた。
理由になったのは、俺の特典の話だそうだ。
大婆様達は、天命って呼んでるんだよな。
その天命だが……今回の件で、一ヶ所に俺を留まらせておくと危険という判断に至ったらしい。
確かに、俺の特典は多い。転生の際に、何ポイント注ぎ込めばいいかわからないくらいに持っている。
だが、そのほとんどは悪事に手を染めたりするようなものではないはずだ。
なぁ、役所のお姉さん!俺の特典って、無害だよな!?
【まぁ、精霊の身でありながらあらゆる物を食い漁り、どんな環境にも実質適応可能、更に生存能力も高く弁が立つ。同種族を引き連れて群れをなし、周囲を巻き込んでトラブルを巻き起こす。大抵はそのトラブルに敗北しながら、けして諦めずに場を引っ掻き回し、最後は派手に爆発四散する。そして転生し、その記憶をもったままのうのうと生きる程度ですね~】
なにそれ害悪しかない。
たとえ敏腕弁護士が俺を庇ってくれたとしても、この現状を覆すのは厳しいだろう。
【あははは、ここまでくるともはや呪いですね~】
笑い事ですか!?
なんだよ、『前世の記憶持ち』ってろくなもんじゃねえじゃねえか!?
「と、言うわけだが、何か言うことはあるか?」
大婆様が裁判官みたいに見えてきた。
まぁ、そういう意味では、この里を危険に晒すわけにはいかないわけで、俺だってここを出ることはやぶさかじゃない。
けど、いくつか気になる事もあるわけだ。
「少しいいか?」
「うむ」
「まず1つだが、俺がここを出るとして、畑や森の管理はどうする?」
そう、たった数日間とはいえ、俺も精霊達に森を管理するための命令を出している。
畑もまた、安定して野菜を生産させるには、精霊の存在が不可避。
その命令系統は、誰が引き継ぐのか。
「そこに関しては、クインに引き継いでもらうつもりだ」
「ふむ」
妥当だな。
クインはこの里唯一の精霊使いだ。
精霊達とコンタクトを取れるクインが引き継ぐのは当然と言える。
「我々も、今回の事で学んだのだ……今まで我々は、森の恵みを受け、森と共にあったつもりだった。しかし……我々は、森に対して何かを還元していた訳ではなかった」
「うん、それは、森に寄生しているだけ……ボク達の存在が、森を早期衰退させていたのかもしれないって、思ったんだ」
ナルゥとクインも、同じ意見みたいだな。
特に、クインの瞳にはなにか、決意のような物がある。
俺と過ごした時間の中で、なにか思うところがあったのかもしんねぇな。
「だから、安心してよダーリン。ボクが、精霊さん達と、この森を守るから!」
「へっ、まぁ男に二言はないだろうからな。そこんとこは安心した。じゃ、次だ」
もう1つの疑問……それは、俺についてきてしまう精霊達だ。
この森の精霊達は、既に俺を認識している。
そうなると、『率いる者』の特典が働いて、そいつらは俺についてきてしまう。
そうなると、この森にも影響が出る訳で……
「そこに関しては、ヤマベの命令による待機と、クインの願いで食い止めようと考えている」
「確実じゃねぇだろ?」
「後は、我々に任せておけ」
「……そうかい」
任せろってんなら、信じますよ。
さて、長いようで短かったが、この森ともお別れになるわけだ……寂しくなるなぁ。
「ちなみに、誰かお供についてきてくれたりしないんか?なんというかこう、俺泣きそうなんだけど?」
「安心しろ」
大婆様が、ニヤリと笑う。
「今回の件で、お前に発ってもらう一番の理由を共につける」
「すいませんパスしてもいいですか」
「ダメだ」
もう既に、嫌な予感しかしねぇ。
俺が必死に一人で出ようと言い訳を考えていた、その時………
「ヤァァァマァァァベェェェさぁぁぁまぁぁぁ!!」
聞き覚えの有りすぎる、声が響いた。
嘘だろ。
ありえねぇだろ。
だってお前、お前………死んだだろ。
「いやいやはやはや!またお会い出来るとは感謝感激の極み!こうして一緒に会話ができるという奇跡!共に行動できる許可を頂けた幸運!最高に最高を重ねた激動の感情が今まさにワタクシを満たしてございます!もはや言葉にもならないとはまさにこのこと!!」
俺の目の前に顕れたのは………一匹の、精霊。
それは、ピョコピョコと絶え間なく動き、跳ね、転がる。
落ち着きのない挙動。
言葉にならないとか言いながら止まることを知らない口。
見た目は、精霊だ。
けど、確信を持って言える。
こいつは………
「なんでお前がいるんだよ!?えぇ?イヌイさんよぉぉぉぉ!?」
「あぁははは!喜んで頂けて大変に嬉しゅうございます!」
「喜んでねぇよ!嫌な汗がとまんねぇよ!殺された記憶がフラッシュバックするわ!?」
なんでだ!?
なんでこいつがここにいる!?
というか、なんで精霊になってるんだ!?
俺の疑問を余所に、イヌイは俺にスススっと近づき、ニヤリと笑う。
「いやぁ……『前世の記憶持ち』とは、大変に素晴らしい特典にございますねぇ?」
こっ
こ、
こいつ………
こいつ、『前世の記憶持ち』を役所で取得して、わざわざここに転生して来やがったぁぁ!?
【嘘でしょう~!?デミゴッドに転生しておいて、残りポイント五十万を維持していたというんですか~!?】
「んふふふ、ワタクシ、デミゴッドに転生してから、それこそ大量の武勲を稼いでございました故!」
「関係ねぇよ!知らねぇよ!出てけよ!?お前と一緒に旅とか胃が無くても痛むわ!?」
「ワタクシ、今までこんなにも誰かに固執したことはございません!なれど、あぁなれど!ヤマベ様程に面白く、惹かれる存在はいなかった!もっと彼を見ていたい、もっと彼と話したい!そう思っていたのでございます!なればこそ、あぁ、あぁ、我慢できなかったのでございます!」
俺の必死の拒否も、こいつには通用しない。
それどころか、大婆様が弁護に入ってきやがった。
「まぁ待てヤマベよ。今回の件で、イヌイが倒された事こそが何よりの問題なのだ」
「はぁ?」
「聞いていただろう?イヌイには、主がいるという事を」
あ、ぁ~……あ?
あぁ、なんか、紙芝居でそういうのを言ってた、よう、な?
「さよう!ワタクシには、敬愛する主がおりました!愛らしく、美しく、なおかつ強く、そして慈愛に溢れる理想の主が!!」
イヌイが、自分のこと以上に喜びながら、悦に入って説明してくれる。
「本来ワタクシ、その主の命により、あの場におりましたが、己の好奇心を優先し、なおかつこの体たらく!あぁ、あぁ、ワタクシが死に絶えたという事は、主にも伝わってございましょう!つまり!」
「お前が消えた場所に、その主がカチ込みかけてくる可能性が?」
「ほぼ間違いなく!!」
爆弾も良いところだよ!!
どうすんだよ!イヌイより強いんだろソイツ!?
そいつに目をつけられたら、この里終わるぞ!
「だからだ、ヤマベ……その主の所に、このイヌイを持っていってくれ」
「はぁ!?」
「その精霊は、イヌイの魂だ。すなわち、イヌイがいる場所は、その主にバレる……正直、いてほしくないんだよ」
まっすぐに正直で大変よろしい。
なおかつ、俺に全てを押し付けてくる姿勢は見事の一言。
「だが断ぁぁぁる!!」
「そうか………ならば、仕方ない」
大婆様はため息をつき、クインを見やる。
「クイン、お前の婚約の件だが、うまくいきそうだな」
「えへへ……ボク、幸せになるね?」
考える時間もなかった。
「大婆様。俺に任せてくれ!このロクデナシを主の元にぶちこんできてやるよ!」
俺は、真っ直ぐな瞳で、宣言したのであった。
◆
それからは早かった。
里の皆にお別れ会を開いてもらい、その翌日の昼。
俺は、精霊達にここに残るよう命令を下し、旅立ちの準備に入る。
「ヤマベ、お前と過ごした時間……悪くなかったぞ」
「ボク、ダーリンのこと、忘れないからね!」
皆がみんな、暖かい言葉をくれるのは嬉しい。
たが、今の俺には、「イヌイをつれてさっさと行け」という声が混ざって聞こえる。
まったく、自分の心の汚さがわかるな。ここは皆にちゃんとお礼を言って、笑顔で……
「ほれ、イヌイを連れてさっさと行かんか」
「大婆様がそれ言っちゃおしまいですよねぇぇ!?」
「んふふふ!ヤマベさん、ここ出たら名物食べ歩きなんて如何でございます?」
「君はもう少し空気を読もうね!?」
なんかもう良いわ。
感動とかいらないわ。
誰も悲観してないってことは、誰もがこれが金輪際の別れなんて思って無いわけで。
つまり、俺がまたここに戻ってくるっていう、確信があるんだろう。
嬉しいじゃねえか。
だったら、これ以上に言葉はいらねえよ。
またなで一言、それでいい。
それだけで、約束になるんだから。
【いよいよ、旅立ちですね~】
あぁ。
ここからまた、俺の転生ライフが幕を開けるんだ。
やってやる、やってやるさ!
「それじゃあ皆!また……」
ぎゅっ
……………………
「あの、ナルゥ」
「なんだ?」
「なんで俺とイヌイに、縄を結ぶんだ?」
「言っただろう、精霊がついてこないようにする、と」
言った。
言ったねぇ。
けど、おかしいな。
なんでその縄は、一本の矢に繋がってるんだい?
「ヤマベ……」
ナルゥは、俺を見て、小さく微笑む。
その顔は、どこまでも優しくて………
「どうせ蘇るんだ。一回くらい死んでも許せ」
いつか絶対復讐しに来てやる。
ナルゥは、言うが早いか、その見事な動作で矢をつがえる。
まるで、イヌイと戦った時の再現のようだ。
「んふふ!良いですね、派手でございますね!旅立ちはやはりこうでなくては!!」
お前は、もう、黙れ。
「さらばだ、ヤマベ!!」
「ちょ、ま………」
俺が何かを言う前に………その矢が、放たれる。
瞬間、体を襲う、強烈な重圧。
俺たちは、天高く打ち出された。
「てめぇぇらぁぁあ!!覚えてろよぉおお!!ぜぇぇったい戻ってきて、ひどい目に合わせてやるぅぅぅぅ!!」
「おおおぉ!上がります、上がってございますぅぅ!」
森を突き抜け、廃れた地へ。
ダークエルフ達は、みるみる小さくなっていき、見えなくなる。
あぁもう!ちくしょう!
お礼くらい言わせろってんだよぉぉ!!
【やれやれ、前途多難ですねぇ~】
はぁ、もう何度目だろうな。けど、言うか。
こうして、俺は。
ダークエルフの里を出て、イヌイの主に面会するための旅に出た。
なんつうか、あれだな。これは、あれで締めるべきだな。
【お、いきますか?あれでいきますか?】
いくか。
【せぇぇ~のぉ!】
【「俺たちの戦いは、これからーーー」】
PiPiPiPiPi!!
【あ、焼きそば出来ました~】
「役所の人適当過ぎやしません!?」
fin
さてな、皆さま、どうもどうも。
貴方の町のべべでございます。
まずは、この話をこんな所まで読んでくれた方々に、最大限の感謝を。
初めて小説を書いたという事もあり、なんともかんとも拙い文章でございました。
ですが、感想を下さったり、指摘して下さった方々のおかげで、多祥なりとも見れるようになったかしら?と思っております。
ワタクシ、転生主人公の中でも、人外が大好きでございます。
だからこそ、最初の小説は、人外転生で行こう、と考えておりました。
結果として、まぁ生きたがりの傲慢野郎が誕生しましたね。
あれは、ワタクシのダメな部分が濃縮された生物だと考えましょう。
最低な人格の主人公と、適当な性格の役所のお姉さん。
彼らのコントを書くのがなんだかんだで面白く、気づけば40話まで書いてしまいました。
いやぁあれですね、小説、楽しいですね。
また、こう、書きたい意欲がふつふつと沸いてきています。
ですので、これが最後とはならない確信がございます!
ワタクシをお気に入りして下さったみなさん。
この作品をブックマークして下さったみなさん。
どうか、また別の作品でも、お会いいたしましょう!
ではでは!
PS、なんだかんだで、イヌイが好きな俺だった。




