41 マッサージ
村に戻った僕達は湖の浄化が終わったことを傭兵ギルドに報告した。
報酬をもらってホテルに帰る。
湖浄化の報酬は思ったより多かった。
依頼主が大統領だったからだろう。
この報酬はミーリャさんが全額もらうのでアロがうらやましがっていた。
僕は十分にお金を持っているので別に良かったが。
というかアロも瑛さんから小遣い……じゃなくて護衛の報酬はもらっている。
これは僕もだが、ミーリャさんは護衛でないためもらっていない。
まあミーリャさんは神器機関からの給料とかあるはずだけど。
ともかく、浄化の報酬は正当にミーリャさんのものだ。
アロはともかく僕がむやみにうらやむようなことはなかった。
そんなこんなでホテルへと戻る。
ホテルに着く頃には辺りも暗くなり始めていた。
ミーリャさんが疲れていたのでその日は早めに休む。
ミーリャさんはサンドワーム戦よりも湖の浄化での疲れが大きかった。
練成術はミーリャさんが本来得意とする魔法ではない。
出力だけなら出せるが調整は苦手という話だった。
ただしおしっこの浄化は極めているから大丈夫と言っていたが。
……おしっこのことはもういいでしょう。
ホテルに戻った僕たちはみんなでお風呂に入る。
今日はミーリャさんがお疲れなので風呂では大人しくすべきだろう。
なのでミーリャさんの体は瑛さんが洗う。
瑛さんに任せておけば安心だ。
僕とアロは元気だったので少し遊んでしまったが。
まあこれはご愛嬌なレベルだ。
昨日のようにスク水を着て暴れまくったわけではない。
湯船にもみんなで入る。
湯船ではミーリャさんに後ろからぎゅっとされてしまった。
「ミーリャさん疲れちゃわないですか?」
「ん……大丈夫。むしろ癒される」
癒されるそうなので僕は大人しくぎゅっとされておきました。
ミーリャさんのやわらかな膨らみが当たって僕もむしろ癒される。
右手が少し動きそうになっていたけど必死に我慢しているようだ。
トキナさんはちゃんと空気の読める子だった。
湯船でたくさん癒されてお風呂を後にする。
ちなみに僕が出るのは最後だ。
出る前に右手の包帯を替える。
「……替えるの手伝う?」
せっかくのミーリャさんの好意だが丁重にお断りした。
部屋に戻った後はミーリャさんにマッサージをする。
「……すごい気持ちいい」
ミーリャさんが幸せそうで僕も嬉しい。
マッサージはちょっと得意なのだ。
僕はマッサージに関して妥協する気はないので全身くまなく揉みほぐした。
「……全身気持ちよかった」
これでミーリャさんの疲れも取れただろう。
翌朝目が覚めると、ミーリャさんは先に起きていた。
疲れはしっかり取れたようだ。
ミーリャさんは元気に瑛さんのお尻へ顔をうずめていた。
うらやましい。
「……私のお尻空いてるよ?」
そんな風に言われてはもう辛抱たまりません。
僕はしめやかにミーリャさんのお尻へと顔をうずめる。
ミーリャさんのお尻はやはり最高にやわらかい。
僕は幸せな一時を堪能した。
「ミーリャ、疲れは残ってないみたいだね」
しばらくして瑛さんが目を覚ます。
昨日は瑛さんがミーリャさんのお尻に顔をうずめていた。
だから今日逆になっても瑛さんが文句を言うことはもちろんない。
「……瑛の枕も残ってる」
ミーリャさんの示す先にはアロのお尻があった。
アロは今日もぐっすり眠っている。
「うーん……」
「アロちゃんのお尻ぷりぷりで楽しいですよ!」
経験者は語る、だ。
アロのお尻の感触は昨日たっぷりと味わっている。
僕の言葉には説得力があった。
「そこまで言うなら……」
瑛さんはなんだかんだ言いつつノリは悪くない。
ミーリャさんと協力すれば結構押せそうだと僕は確信した。
その後、最後に起きたアロがくやしがっていたのは言うまでもない。
そして村を出て、僕たちはほぼ丸一日かけて首都ドバイアルへと到着した。
到着時点で辺りが暗くなり始めていたのでそのままホテルに泊まる。
ドバイアルでの本格的な活動は明日からだ。
「さてと。じゃあ明日からの予定を決めておこうか」
瑛さん主導で作戦会議だ。
パーティーのリーダーが完全に瑛さんになっている。
まあ僕とアロは護衛として瑛さんに雇われている身だ。
ミーリャさんも表向きは瑛さんに会いにここへと来ている。
瑛さんが中心となるのは当然だった。
まあそんな事情がなくともこのメンバーならリーダーは瑛さんだったろうけど。
「――まずは私だが、明日からはドバイアルのギルドに依頼を出して生物のサンプルを集めたいと思う」
僕達がサラスタンに来たのは基本的には僕のためだ。
だが瑛さんにもやりたいことはあった。
瑛さんは動植物の生態を調べたりするのも仕事の一つである。
専門は外来生物、地球から飛んで来た異世界の生き物だ。
だが比較対象としてこの世界の生物の生態を知るのも重要とのこと。
瑛さんが国連非加盟国であるサラスタンに来ることは少ない。
だからこの機会にこの地域の生物サンプルを取っておきたいというわけだ。
「大統領の話だと最近魔物の出現が増えてるらしいからね。せっかくだからいくつか買い取って国連環境計画の方に送りたいと思っている。ギルドの方にも素材が余り気味だという確認は取ってあるしね。というわけで私はG―Dayまで魔物づくしかな」
瑛さんの予定は決まった。
「……印世君は封印術師探し?」
「うん、明日から僕は別行動になるね」
僕の予定は元から決まっている。
そして瑛さん達と別行動になるのは僕にとっては嬉しい。
瑛さんのことなのでその辺も考慮してくれている気もする。
「印世君の予定も決まりだね。アロはどうする? 傭兵ギルドには植物採集から魔物の回収まで様々な依頼を出すつもりだ。依頼の性質上ギルド経由にはなるけどアロに合う依頼も発注することになると思うよ」
「うにゅにゅ……」
アロは悩んでいるようだ。
僕と瑛さんのどっちについていくか悩んでいるのか。
僕の方について行くと言われても正直困るのだが。
「……うん。アロは師匠についてくにゃ! 護衛は必要だしにゃ。それに傭兵として仕事があるならそれに飛びつかない手はないのにゃ!」
アロは瑛さんについて行くことが決まった。
確かに瑛さんの護衛は必要だ。
そもそも僕とアロは護衛任務を継続中でもある。
アロが採取依頼の方に行ってしまうとその瑛さんの護衛の方がおざなりになってしまうが。
「まあ明日から私は缶詰だからね。ギルドに入り浸ることになるだろう。夜にはホテルに戻るけどギルドにいる間の護衛は必要ない」
傭兵ギルドは強い人間の巣窟だ。
そこの大口依頼者となる瑛さんがギルド内で危険にあう心配はない。
ギルドを出る時に誰かが護衛として合流すれば問題ないわけだ。
「後はミーリャだね」
「私は……印世君について行こうと思う」
ミーリャさんの追跡ははずせないか。
そもそもミーリャさんは僕を探る任務を受けている。
これは想定の範囲内だった。
「……封印術師の場所も本部から聞いてる。案内できるから私はついて行った方がいい」
調べがついていたのか。
僕は首都に着いた後に人づてで探す予定だった。
トキナさんの知り合いが残っているならそのツテから探すつもりだったけど。
『ここまで技術が発達しておるのは予想外じゃったからの。やはり電話というのは便利な物じゃ。瑛もミーリャも目的地に着く前に下準備は済んでおるというのじゃからの』
瑛さんもミーリャさんも文明の利器をしっかり活用していた。
さらに言うとバックの組織や人脈も活用しているか。
ともかくミーリャさんの追跡を振り切るのは難しそうだ。
ならミーリャさんに手伝ってもらうのは悪くないだろう。
「僕からもお願いします。1人で知らない街を歩くのはちょっと不安だったし」
これは本心だ。
僕はこの世界に来てから単独行動というのをしていない。
遺跡を出てからはずっと瑛さんにくっついていたので1人で出歩くのは不安だ。
「印世1人だと迷子になりそうだからにゃ! ミリャーが一緒なら安心にゃ!」
アロに言われるとちょっとムカっとくるけど。
本当は僕1人でも大丈夫だし。
そもそも僕にはトキナさんがいるから迷子にとかならないし。
『妾も主のことが心配になってくるの……』
トキナさんにまで心配された。
でも現実問題として伝達回路を切る予定はないので僕が1人になることはない。
仮に僕が1人でこの世界を生きていけないとしても問題にはならないのだった。
というわけで、明日からの予定も決まり会議は終了した。
その後みんなでお風呂に入る。
瑛さんが運転で疲れていたので今日も無茶はしない。
瑛さんの体は僕が洗った。
トキナさんが暴れないか心配だったけどもちろんそんなことはない。
『普通に洗うだけでも十分気持ちは良いからの。暴れるだけが能ではない』
確かに優しく洗いあうのも十二分に気持ちがいいものだった。
その僕の目の前ではアロがすごいことになっていたけど。
アロとミーリャさんでは一対一でもミーリャさんの圧勝だった。
風呂を上がった後は瑛さんにマッサージをする。
もちろん妥協することなく全身くまなく揉み解した。
「印世君本当に上手だね。一体どこで覚えたの」
「実家がマッサージ店をやっていたので。僕は見習い程度ですけどね」
親に教えてもらった程度で僕はプロではない。
でもミーリャさんにも瑛さんにも好評だったので悪くはないようだ。
「師匠うらやましいのにゃ。アロも印世にもみもみしてほしいのにゃ」
明日はアロにもマッサージをしてあげるべきだろう。
マッサージして僕が疲れるということはないしね。
ミーリャさんや瑛さんの全身を触りまくればむしろ元気になってしまう。
好評なら一日一人はマッサージしてもいいかと僕は思った。
翌朝目が覚めると僕のお尻にアロが顔をうずめていた。
今日はアロが一番乗りか?
だが正確には僕が起きるのが遅かったようだ。
後ろを見るとアロのお尻には既にミーリャさんが顔をうずめていた。
そのミーリャさんが目で合図を送ってくる。
目線の先にはまだ眠っている瑛さんのお尻があった。
僕はしめやかに瑛さんのお尻に顔をうずめるのだった。
そうして瑛さんの目が覚めるまで幸せな朝のひと時を堪能した。
「――今日は私が最後に起きたのか。そしてこうなると」
「瑛さんのお尻最高です。朝からすごく幸せになっちゃいます」
「印世のお尻も気持ちいいのにゃ!」
「……アロのもぷりぷり」
僕たちはさわやかに朝のあいさつを交わしあった。
その後は朝食をとって、出かける準備をする。
その時ミーリャさんがメモを書いていたので見せてもらった。
ミーリャさんは誰が誰のお尻に顔をうずめたかをメモにとっていた。
ミーリャさんは初日に僕、2日目に瑛さん、今日はアロのお尻に顔をうずめた。
これでミーリャさんは一通り全員のお尻に顔をうずめたことになる。
僕も全員のお尻に顔をうずめているので既にコンプリート完了だ。
瑛さんはまだ僕のお尻に顔をうずめていない。
アロは寝坊しすぎなので今日僕のお尻に顔をうずめただけだ。
「……明日は瑛が印世君のお尻に顔をうずめるとして、アロの寝坊が心配」
「叩いてでも起こして欲しいにゃ! アロもみんなのお尻に顔うずめたいのにゃ!」
アロもやる気は十分だった。
それにしてもミーリャさんはちゃんと考えている。
神器機関の人間だけあって研究肌なのだろう。
『こういう無意味な所に執念を燃やすあたり、やはりミーリャは見込みがあるの』
トキナさんのミーリャさんに対する評価がまた上がったようだ。
ちょっと寂しい。
トキナさんの封印が解けた後ミーリャさんと仲良くなりすぎたらどうしよう。
仲良くなるのはいいことだけど、それで僕が放置されるとすごく悲しい。
『むしろ妾とミーリャの2人で主を挟むというパターンもあると思うのじゃがの』
その発想はなかった。
確かにトキナさんもミーリャさんも攻めるタイプの人間だ。
その2人に僕が攻められるというパターンは十分あり得るのか。
EXランクのトキナさんとSランクのミーリャさんに挟まれたらどうなるか。
想像しただけで僕はもうどうにかなってしまいそうです。
やっぱり仲良くなるのはいいことですね。
ミーリャさんにはぜひトキナさんと仲良くなって頂きたいものです。
そのためにもまずはトキナさんの封印を解くのが先決だ。
瑛さんとアロを傭兵ギルドに送り、僕とミーリャさんは市街地へと向かう。
「……2人っきりだとデートみたい」
そんなこと言われるとすごくドキドキしてしまいます。
『妾が仲良くなる前にまずは主がミーリャと仲良くならねばの』
トキナさんの言うとおりだ。
トキナさんの封印が解けた後にミーリャさんが仲間になるかはまだ分からない。
でも僕の気持ちとしてはミーリャさんと敵同士にはなりたくない。
仮に結果が変わらずともできるだけ仲良くはしておきたい。
「……せっかくだから手、つなぐ?」
答えるより先に右手が動いた。
ミーリャさんの左手と僕の右手が恋人つなぎでしっかりと結ばれる。
ついでに言うとただ繋ぐだけでなく変な動きをしている気もする。
……いや、いいんですけどね。
でもこういうのは封印とけた後に自分の右手でやるべきだと思います。
今やると僕がやってるということになるのでミーリャさんに誤解を与えそうだ。
「印世君……意外と大胆」
僕の右手を大胆に動かしているのは実はトキナさんなのだけど。
『心配するでない。主もたいがいじゃから評価は大して変わらぬ』
まずトキナさんが僕のことを誤解している気がする。
僕自身は至って普通の男の子なのに。
でもせっかくなので僕もミーリャさんにぴったりとくっついて街へと出る。
本当にデートみたいですごくドキドキしてしまいます。




