42 ミーリャさんとデート
ミーリャさんと一緒にドバイアルの街を歩く。
ここは首都だけあって近代化も進んでいるようだ。
通りには色々な店が並んでいて、背の高いビルもちょくちょくある。
「……歩くと少しかかるかも」
封印術死の名家であるフムート家までは少し距離があった。
車は瑛さんしか運転できないので使えない。
一応タクシーも走っているようだけどそこまで急いではいなかった。
「せっかくだから街を見ながらいきましょう」
「うん」
フムート家までは歩いて行く。
ついでに瑛さん達におみやげも買おうという話になった。
そうして街を歩いていると途中で怪しげな店を見つけた。
「ミーリャさん。あの店なんだか分かります」
「……ハーブとかアロマを売ってる店みたい。多分」
「アロマですか。ちょっと覗いてみましょう」
僕達はアロマショップの中へと入った。
「……印世君こういうの興味あるの?」
「アロマオイルがあったら買いたいです」
「アロマオイル……マッサージ?」
「そうです!」
ミーリャさんは察しが良かった。
僕はアロマセラピーそのものに興味があるわけではない。
欲しいのはオイルだ。
これからマッサージをするならアロマオイルは必要だろう。
オイルマッサージは美容や健康にもいいのでやって損はない。
それに――
「……気持ちいい?」
「とっても気持ちいいですよ」
僕はミーリャさんの耳元で小さく答えた。
実際気持ちいい。
ちなみにされる側だけでなくマッサージする方も気持ちいい。
今夜からは張り切ってみんなにオイルマッサージをしたいと思う。
全身にオイルをぬりぬりしてくまなくマッサージ……。
考えただけで楽しくなってしまいます。
「でも印世君だけでするのは大変そう。……うん、私もマッサージ覚える」
「ミーリャさんもしてくれるなら嬉しいです。僕も一生懸命教えます」
マッサージをすること自体は大変じゃない。
でもミーリャさんが覚えてくれれば僕もマッサージを受けられる。
手練なミーリャさんにオイルマッサージをしてもらう。
これも考えただけで楽しくなってきてしまう。
そうして、僕はミーリャさんと一緒に店内を見て回った。
基本的にはこの世界の物なので店員さんに説明を聞きながらだ。
「……これどう?」
ミーリャさんの手にはアロマキャンドルが握られていた。
『ロウソクで香りを楽しむのか。妾の頃にはなかったの。アロマオイルは体に塗る物じゃとして、ロウソクは……垂らすのか?』
垂らしません!
なぜロウソクの使い方で最初に垂らすという選択肢が出るのか分かりません。
「蝋燭プレイ……」
ミーリャさんまで。
と思ったのだけどなんとマジだった。
店員さんが説明をしてくれる。
「マッサージキャンドルですね。これはアロマキャンドルとマッサージオイルの両方の良さを併せ持つタイプのキャンドルです。灯した火で溶け出したオイルはちょうどいい暖かさでもちろんヤケドの心配もありません」
「さらに固形のオイルを溶かして使うので、作りたての新鮮なオイルでマッサージをすることが可能です。もちろん香りも楽しめますよ」
店でもお勧めのようだった。
用途としてはアロマオイルと一緒だ。
溶かしたての暖かいオイルはマッサージ効果も高いだろう。
そしてアロマキャンドルとして香りを楽しむこともできると。
確かに良さそうだ。
ただし塗る時は先に火を消してから手に取って塗るとのこと。
キャンドルに火をつけたまま体に垂らしたりはしないようだ。
特殊なプレイをするわけではないのでこれは当然だった。
そんなわけで僕はマッサージキャンドルを買うことにする。
ミーリャさんもハーブなんかを買っていた。
お土産に普通のアロマキャンドルなども買っておく。
暗くした部屋でキャンドルを灯し、暖かいオイルを全身に塗る。
すごく美容と健康に良さそうですね!
夜になるのが今から待ち遠しくなってしまう。
充実した気持ちで僕とミーリャさんは店を後にした。
「いい買い物が出来ました」
「うん」
ミーリャさんも満足そうだ。
と、ここで僕はのどが渇いたのに気付く。
アロマショップにいる間に時間が経っていたようだ。
空気が乾燥しているせいもあるかも知れない。
「ちょっと喉が渇きましたね」
僕が言うとミーリャさんは少し考えるようにしていた。
「……分かった。じゃあ……トイレ行く?」
僕は喉が渇いたと言ったのになぜトイレに行こうとするのか。
「たくさんは無理だけど。……印世君が飲みたいなら私も頑張って出す」
何を出す気ですか!
やはりミーリャさんは危険な人だった。
「無理して出さなくていいですから! それにミーリャさんも喉渇いてません?」
「ん。ちょっと小腹は空いたかも」
飲尿のお誘いをなんとか振り切って軽食のとれる店を探す。
カフェテラスがあったので紅茶とお菓子を注文した。
ちなみに茶葉は地球産のものではない。
そのため味は違うがこの世界の紅茶も中々おいしかった。
「体に沁みますね」
「うん」
外のテラスで飲む紅茶もおいしい。
テラスから見る街の景色も中々良かった。
石造りの歴史観ある建物が並んでいる。
テラスでは僕達以外にも何人かお茶を飲んでいた。
カップルも多いみたいだ。
ただし、カップルの組み合わせが男女とは限らない。
「やっぱりこの国も同性愛の人多いみたいですね」
「どの国もだいたいそう。……同性愛者4分の1、異性愛者4分の1、どっちもいける両性愛者が半分くらい」
ニムルスにいた頃から感じていたけど、この世界はやっぱり同性愛者が多い。
『これは妾の頃から変わらぬの。多夫多妻制というか、この辺りの制度が主の世界と違うのもこの影響かの。同性愛者同士で子供は生まれぬが、その分産む者はたくさん子を産むからある意味バランスも取れておるじゃろう』
この世界では産む人は本当にたくさん子供を産む。
兄弟の数が5人以上になることはざらだそうだ。
でもこの世界で人口爆発は起きていない。
同性愛者が多いためだろう。
結果として人口バランスは地球よりも取れているようだった。
「お待たせしました。ご注文のプリンとアイスクリームです」
周りを眺めている間にお菓子もきた。
アイスクリームを一口食べる。
「何これ! このアイスすっごいおいしい!」
驚きのおいしさだった。
『ふふ。食べるのは久方ぶりじゃがやはりサラスタンのアイスはうまいの。地球にも似たものはあるようじゃが、この世界のアイスもおいしいじゃろうて』
本当に驚きのおいしさだった。
この世界原産の物なので材料のミルクなども地球の物ではない。
味はクリーム度が高く、生クリームとアイスの中間というか、表現が難しいけどとにかく初めて食べるおいしさだった。
「……プリンもおいしい」
ミーリャさんが食べてるプリンもおいしいみたいだ。
材料が何の乳や卵かは謎だけど、この世界のお菓子はかなりおいしい!
『シパポーンの家で食べた米というのもうまかったがの。この世界の食べ物も悪くはないじゃろう』
全くです!
地球の食べ物もおいしいからこの世界でも好評で普及もしている。
だがこの世界の食べ物が地球より劣っているということはなかった。
どちらも違う良さがあっていいものだ。
今のこの世界ならその両方を味わえるのでかなりお得な感じだ。
「……印世君のアイスもおいしそう」
ミーリャさんが欲しそうだったので一口あげる。
「はいミーリャさん。あーん」
「ん」
口を開けてあーんってするミーリャさんも可愛かった。
「うん。……濃くておいしい」
この世界のアイスクリームは白くて濃くておいしかった。
「……プリンも一口あげる」
お返しにミーリャさんのプリンも一口食べさせてもらう。
口を開けてスプーンで食べさせてもらうのもいいものだ。
僕はちょっとドキドキしてしまった。
「ん。すごい! プリンもすごい濃くっておいしいです!」
『本当にうまいの。こっちは初めて食べる味じゃ』
プリンの方はこの世界にはなかったようだ。
でも材料はこの世界の物だ。
そのためプリンも地球のとはまた違うおいしさがあった。
「どっちもすごくおいしかったです」
「うん」
僕達は幸せな気持ちで席を立つ。
ミーリャさんも満足そうで良かった。
と、ミーリャさんを見ると口にアイスがついていた。
スプーンであげる時に僕がつけてしまったようだ。
「ミーリャさん、ちょっとそのまま」
アイスをつけてしまったのは僕なので僕が綺麗にするべきだろう。
僕はミーリャさんの口についたアイスを舌で綺麗に舐め取った。
「――――」
ミーリャさんがびっくりした顔で僕を見ている。
僕はミーリャさんの表情を少しは読めるようになっていた。
ミーリャさんは少し恥ずかしがっているようだ。
恥ずかしがるミーリャさんは驚くほどに可愛かった。
「印世君……ホントに大胆」
エロ面では強いミーリャさんもこういうのには弱いようだ。
恥ずかしがる姿が可愛かったのでミーリャさんの腕にいっぱいくっついておく。
『お主すごいの……いや、よくぞ成長した』
トキナさんにも褒められてしまった。
そうして幸せいっぱいの気持ちで僕達は封印術師のいる家へと到着した。




