13 荒ぶる右腕
買い物も終わったのでアロの家へと入ります。
ちなみにアロの家はけっこう大きい。
石造りの2階建てで敷地も広い。
そして石の高級感がハンパない、大理石だろうか。
「アロちゃんの家って、実はすごいお金持ちだったりします?」
思わず瑛さんに聞いてしまった。
「ん? あ~、いや、別にアロの家が特別金持ちってことはないよ。この世界は地価も安いし、大理石なんかも魔法で作れるから石材が特別高いなんてこともない」
そういえばこの世界には錬金術があるのだった。
言われてみるとアロの家だけが高級そうなわけではない。
首都のコネリアに来てからは、周りの建物が全部高級な感じがしていた。
首都だからこういうものかと思っていたけれど、地球での高級素材がこの世界でも高級とは限らないということだ。
ガチの錬金術師の家は全部黄金で装飾されているそうだし。
うんケバイ。
この世界では金が高級ということもないのでただただケバイだけだろう。
まあ好きな人は好きそうだけど。
『そんなことより愚礼斗君じゃ』
僕としては錬金術にも興味があるけど、これはトキナさんの時代からあるからトキナさんは興味なしと。
建材がやたらと高級なのはトキナさんの時代から変わっていないようだ。
そんなこんなでアロの家へと入ります。
玄関のドアを開けるとすぐに愚礼斗君と会えました。
『おお……こ、これが猫というものか。毛がいっぱいじゃの。耳と尻尾だけでなく全身ふわふわで柔らかそうじゃぁ~』
確かにふわふわでふさふさです。
猫人のアロも耳と尻尾はふさふさだけど後は平人と一緒だ。
猫は当然全身がふさふさな毛で覆われているためトキナさんとしては新たな感動があるのだろう。
一応動物ならうさぎっぽいのはいたしああいうのがこの世界で飼われていたりもするかも知れないけど、猫は犬と並ぶ地球で1、2を争う人気のペットだ。
やはりその可愛さはすごいだろうし、それはこの世界でも有効なようだ。
いや、この世界では猫人が結構可愛いがられている節もあるから猫の可愛さが通じるのも道理だろう。
ちなみに愚礼斗君は茶トラ猫だ。
黄色と茶色のしましまのカワカッコイイ猫である。
そして……アロの尻尾も黄色と茶色のしましまである。
アロは褐色の肌に金髪の猫人だが、どうやら茶トラ猫人だったようだ。
いや猫人にそういう種類があるかは知らないが、アロが愚礼斗君と並ぶともうアロも茶トラにしか見えない。
まるで兄弟みたいだ。
「愚礼斗も家族の一員なのにゃ!」
ペットを家族の一員という人は多いけど、アロが言うと本当の意味で家族に見えるから不思議だ。
愚礼斗君が大きくなったら猫人になります。
とか言われたら今なら信じてしまいそうだ。
『もふもふじゃのぉ。ふさふさじゃのぉ。ふわふわじゃのぉ』
トキナさんの興奮もすごいようだ。
言語が怪しくなっています。
「とりあえず中に入るにゃ!」
アロに付いてリビングへと案内してもらう。
ちなみに愚礼斗君はアロの頭の上によじ登っていた。
アロちゃんの後頭部にしがみついたまま尻尾をゆらゆら揺らしている。
アロの尻尾も同じペースで揺れていてシンクロ感がすごい。
やはり2人は兄弟のようだ。
そうしてリビングへと案内してもらい……驚愕した。
テレビがある。
いや、異人会にはパソコンもあったのでテレビが存在すること自体は驚きではないはずだけど、アロの家にあるとなぜか驚いてしまった。
というかちゃんと見られるのだろうか?
この世界、地球から飛ばされて来たパソコンはあってもインターネットは使えない。
それでもパソコンは事務用品として有用だがテレビは違う。
テレビ放送が普及していなければテレビはただの箱だ。
「ジュース入れてくるからテレビ見て待ってるにゃ!」
やはり放送が行われているようだ。
瑛さんが自然な動きでテレビをつける。
瑛さんの自然体具合もやばい。
自分の家みたいにくつろいでいる。
もしかすると前にもアロの家に来たことがあるのかも知れない。
いや、服を買っていた時に瑛さんは常に旅をしていて家を持っていないと言っていた。
基本はホテル暮らしだと言っていたけど、ニムルス国ではアロの家を拠点にしているのかも知れない。
『これがテレビか……画面が大きいのう。そして映像が動きまくりじゃのう』
トキナさんは初めて見るテレビに興味を惹かれたようだ。
ただ驚きはそれほどでもない。
トキナさんが一番驚いていたのは、遺跡で僕がスマホを見せた時だろう。
トキナさんは異人会でパソコンも見ているしある意味テレビより進んだものをすでに見ている。
ただ動画が思い切り動く所は見ていなかったはずなので、やはりテレビの映像は新鮮に映るようだ。
そのテレビには日本のアニメ番組が流れていた。
ニムルス語に翻訳されてはいるが。
僕はもうニムルス語が使えるので見られるけど微妙に翻訳がおかしい気もしなくもない。
「テレビ放送が実用化できたのはいいんだけど、やっぱりまだ番組数が少ないんだよね。アニメとかはまだ作れてないから全部地球製のだし。それもパソコンのデータから復元したもので、最終回までちゃんと揃ってるのしか放送してないから数も少ないし種類が偏ってる気もするしなぁ」
アニメはこの世界に飛ばされてきたパソコンのデータを抽出して放送しているらしい。
他にドラマとかもあるかも知れない。
ただそういうのをパソコンに溜め込む人はマニアが多い気がするのでこの世界で抽出できる動画もそういう方面に偏っているようだ。
後は報道番組とかか。
まあ実写ならこの世界でも作れるそうなのでドラマや映画は作れるのだろう。
CGや合成とかは使えなくてもこの世界には魔法がある。
リアル感ありまくりの長編ファンタジー映画とかありそうだ。
「ちょっと前にやってた実写版『北斗欧拳』は面白かったんだけどなぁ。色々な意味で」
それは見たい。
でもその『北斗欧拳』の実写版は、無許可で勝手に作られてしまったものだろう。
地球の原作者に許可を取るとか不可能だしね。
いつの日か、しかるべき処置を取られてしまうに違いない。
著作権に『お前はもう死んでいる』されてしまうことだろう。
「一応この世界にも著作権の概念はちゃんとあるし、知的財産法の整備も進められてはいる。知財関連は地球のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉でも問題になっているしね。向こうで詳細が決まったらこっちでもそれを参考に知財関連の法整備も進むだろう」
この世界にはちゃんと著作権や特許の概念もあるようだ。
というか、地球のを参考に作っているらしい。
一応すでに整備はされているそうだが今はTPPの結果待ちだとか。
いや、地球の情報がいつ飛んでくるかも分からないのに地球待ちでいいのかとは思うけど。
まあ現状でも法整備は十分されていて、TPPの結果は参考にするだけとも言っていたので問題はないようだ。
「で、一応名目としては、日本のアニメとかの著作権は国連が一時預かりしていて、もし地球と国交が結ばれるような事態になったらちゃんと著作権料を払ったりする用意はあると言っている。まあ何十年も今の状態が続いてるから国連もちゃんと金を用意してるかは謎だけど、地球産のもろもろの特許権や著作権はだいたい国連持ちになってるな。」
「まあいざとなったらこの世界には錬金術がある。支払いはダイヤモンドでもレアアースでも魔法で作りまくって地球に輸出すればおつりが来るだろう。あんまりやりすぎると地球での価値が暴落する恐れはあるけどね」
この世界の魔法も確かにすごい。
もし現在の召喚のような一方通行ではなく、双方向に交易が可能になればどちらの世界にとっても革命的な出来事となるだろう。
むしろ地球の技術がすでに普及しているこの世界よりも地球への影響の方が大きいか。
錬金術以外に、ワープゲートや言語習得魔法などの技術もすごい価値があるはずだ。
地球でこれまで経験したことのない大規模な魔法革命が起こるだろう。
ゲートの使い方次第では宇宙開発も可能かも知れない。
例えば火星までゲートで一瞬で飛べるようになれば……。
まあ考えても仕方ない。
地球でこの世界と同じように魔法が使えるかも微妙だし、そもそも地球に行く方法があればこの世界の地球人達もこの世界に全員定住してはいない。
『まあ召喚技術そのものは妾の時代にすでにあったのじゃ。原理的には地球からこちらに召喚できて、こちらからの送還はできぬなどということはないはずじゃ。まあ異世界召喚装置は奇跡的に開発出来たというような話も聞いたし、現状を見るに異世界召喚の技術そのものが失われておる感じはするがの』
召喚関連については、この世界の、特にこの世界に飛ばされた地球人達にとっては核心とも言える社会問題だ。
当然国連も総力を挙げて技術開発を試みているはずだ。
その上で何十年も現状が変わってないのだから、あまり期待はできないのだろう。
この辺りについては明日以降に異人会のセミナーで聞くことができる。
歴史講座もあるそうだからその時に聞けるだろう。
歴史講座の予約はすでに取ってある。
瑛さんは就職講座じゃなくていいのかと言っていたけど僕には歴史講座の方が大事だ。
っていうか就職講座受けたらもう就職じゃないですか。
だからそれは最後でいい。
どうせ傭兵一択なら受ける必要もないかもだし。
傭兵の話が出たのは予約とった後だから瑛さんも就職講座はもう必要ないと思っているかも知れない。
まあこの世界にどんな職業があるのかは知りたいから講座だけは受けてみたいとも思うけど。
「あ、電話だ」
考え事しつつテレビを見ていると瑛さんの携帯に電話がかかって来た。
仕事の電話らしい。
瑛さんは僕に「ごめんね」って感じにしつつリビングを出て行った。
入れ替わりにアロがジュースを持って来る。
英語で~~コーラと書いてあるからコーラなのだろう。
コーラの前の文字がコカとかペプシではないから商標権的には問題はないはずだ。
飲んで見ると確かにコーラだった。
日本で飲んだコーラとは微妙に味が違うかも知れないがもう覚えていない。
僕は元々コカとペプシの違いも良く分からなかったし、多分味が違うとしてもそれくらいの差だ。
久しぶりに炭酸飲料を飲む。
炭酸のシュワシュワの感触が口いっぱいに広がるのを感じた。
本当に久しぶりな感じで、冷たいおいしさが体中に染みていくのが分かる。
『ほわっ!はわっ、なんじゃコレわぁぁーーー!!!』
そういえばトキナさんは炭酸飲料飲むの初めてか。
異人会の自販機でジュースは1本買ったけどあの時は果汁100%のジュースを買った。
材料の果物も中央大密林内にある物だったから僕としては他の飲み物をトキナさんに飲ませてみたかったけど、あの時はトキナさんが先に選んでしまっていた。
『こ、これはっ……ほわっ、はわっ、ふわぁぁぁーーー!!!』
頭の中でトキナさんが叫びまくっている。
異人会で炭酸飲料を買わなかったのは正解だったかも知れない。
『はぁっ……はぁっ……ふぅ……』
『これは……かなり刺激的な、いや……もはや刺激の塊のような飲み物じゃの』
初めての炭酸飲料はトキナさんには刺激が強すぎたようだ。
でも猫人のアロもおいしそうに飲んでいるしトキナさんもすぐ慣れるだろう。
『やっぱり炭酸はおいしいにゃ! 愚礼斗も飲めばいいのに』
その愚礼斗君は台所の下でミルクを舐めていた。
牛から取れたミルクかどうかは分からない。
でも地球産の猫が普通に飲んでいるし、牛乳かはともかく何かのミルクには違いないだろう。
その愚礼斗君がミルクを飲み終えてこっちにやって来た。
こっちに。
ソファーに座っていた僕の膝の上に飛び乗ってそのままうずくまる。
愚礼斗君は人見知りとかはしないようだ。
でもやっぱり猫は可愛い。
昔家で飼っていた猫のことを思い出し、少しだけ日本が恋しくなりました。
『こ、これは……たまらんのぅ。ふわふわじゃのぉ。ふよふよじゃのぉ。全身やわらかくてとっても気持ちが良いのじゃぁ……』
トキナさんも嬉しそうだ。
僕も猫を触るのが久しぶりなこともありいっぱいなでなでしてしまいます。
愚礼斗君も嬉しそうだ。
顔を上げて来たのであごの下も撫でてあげます。
喉をゴロゴロさせているので多分愚礼斗君も気持ちいいのだろう。
『はわぁ……、これは良いのじゃぁ……。可愛いのぅ。可愛いのぅ。妾も猫を飼いたくなってしまうのぅ』
トキナさんもご満悦だ。
この世界で猫好きなのは何も猫人だけではないかも知れない。
地球でも1、2を争う人気のペットだしね。
猫人は犬は嫌いらしいけど、平人のトキナさんなら犬も気に入るかも知れない。
トキナさんだとドーベルマンみたいな強い犬を気にいって、それを飼うとか言い出しそうで怖い気もするけれど。
そんな感じで愚礼斗君を撫でているとアロが右隣に座ってきた。
本当に隣にくっついてきたのでお尻とお尻が触れ合う。
ちょっと気持ちいい。
『愚礼斗の感触は本当にグレイトなのじゃぁーー!』
アロちゃんのお尻が当たって気持ちいいとか思ってしまったので、トキナさんにまたつっこまれるかと思ったけどトキナさんは愚礼斗君に夢中のようだ。
良かった。
アロちゃんのお尻の感触も気になるけどトキナさんにつっこまれるのも嫌だし愚礼斗君をなで続けます。
でもアロちゃんも可愛いなぁ。
トキナさんから見れば愚礼斗君は初めて見る猫だからなでなでしてご満悦だけど、僕からしたらアロちゃんが初めて見る猫人なんだよな。
猫もかわいいけど猫人も可愛い。
アロちゃんの猫耳とか尻尾とかもさわさわしたくなってしまいます。
でも僕はそんなハレンチなことはしません。
猫人は猫っぽいだけでちゃんと人なので勝手に触るとセクハラです。
セクハラは犯罪です。
『猫人の耳や尻尾も猫に劣らずふわふわじゃぞぉー』
くっ、トキナさんに気付かれた!
悪魔のささやきが聞こえる。
でも僕は負けない。
悪には屈しないのです!
『アロを見てみろ。アロもお主に撫でられたがっておるようじゃぞ』
トキナさんの声を聞きアロの方を向く。
「……愚礼斗ばっかりずるいのにゃ」
マジですか?
いや、冷静に考えれば子供の頭を撫でるくらいなら問題はないはずだ。
撫でられる方も必ずしも嫌ではないだろう。
猫人の耳や尻尾を異世界人である僕が珍しく思って触りたがるのも不思議でははずだし。
尻尾はともかく猫耳くらいなら頼めば触らせてくれるかも知れない。
『その通りじゃ。アロも触って欲しそうにしておるし、たくさんお尻をなでなでしてやるべきじゃろう』
うん、アロちゃんに頼んでお尻を触らせてもら……。
ってお尻!?
お尻は駄目じゃないですかっ!
耳を触るだけなら最悪セクハラでもお尻はもう痴漢です!
この人痴漢です!
『さっきはアロのお尻が当たって気持ちいい。ハァハァします! とか考えておったくせに』
ハァハァまでは言ってません!
確かにお尻とお尻が触れ合って気持ちは良かったし、こうして実際に右手で触るとアロちゃんの2つのお尻がぷりぷりでぷよぷよで、トキナさんのスベスベお尻とはまた違った、新鮮なフルーツのような感触が気持ちがいいのは確かだけど、でもだからって本能のままにいきなり触ったりしちゃそれはもう痴漢じゃないですかぁー!
…………って。
なぜ僕は右手にアロちゃんのぷりぷりでぷよぷよな心地よいお尻の感触を感じている?
そう思ってアロちゃんの方を向くと、僕の右手はアロちゃんのお尻とソファーの間にしっかりと差し込まれており、アロちゃんのお尻を優しく、しかしエロティックに全体を撫で回すように触りまくっていた。
右手が勝手に動いてるぅぅーーーーー!!!!
右手の感触はある!
今も右手からはアロちゃんのぷりぷりでぷよぷよなお尻の気持ちいい刺激が脳へと送られている。
だが、右手を動かそうと脳から指令を送っても右手が全く言うことを聞かない!
金縛りのようだが違う!
こんなあらぶる金縛りなんて聞いたことがない!
導き出される結論は――
『やわいのぉ。気持ちいいのぅ。愚礼斗の感触もグレイトじゃが、アロのお尻の感触もある意味グレイトなのじゃのぅ』
やっぱりあんたかぁーーー!!!
僕は心の中で大声で叫んでしまった。
『ふふふふふ。印世よ、主は妾に何もできぬと思って完全に油断しておったじゃろう。妾が伝達回路を強化したことの本当の意味を完全には理解できておらなかったようじゃな』
『主は一体なぜ妾が伝達回路を強化したと思っておったのじゃ? ふははははははは!』
少なくともこんなアホなことの為に伝達回路を強化しているとは思いませんでしたよ!
トキナさんのあまりのひどさに驚愕しつつアロの方へと視線を移します。
アロちゃんが泣きそうな顔になっています。
僕も涙が出そうになりました。
「な……なんでいきなりアロのお尻さわさわするにゃぁ……」
アロちゃんが半泣きになりながら訴えかけてきます。
「うっ、その……今のは右手が勝手に」
「うわぁぁぁーーーん!!」
ついにアロちゃんが泣き出してしまいました。
確かに今の言い方はまずい。というかひどい。
僕としては事実なんだけど、お尻を触ったいい訳が「右手が勝手に」とか確かにひどすぎます。
なんとかしなくては!
「ち、違うんだアロちゃん。その、勝手にっていうのは、アロちゃんがあんまり可愛すぎるからつい右手が勝手に動いてしまったという意味で……」
必死にフォローをします。
フォローになっているか?
逆に深みにはまった気もする。
「……本当にゃ? 嘘じゃないのにゃ?」
「うん本当だよ。ごめんね、いきなりびっくりさせちゃって。どうしても我慢できなくなっちゃって。本当にごめんなさい。アロちゃんが可愛すぎてつい触っちゃったけどこんなことはもう絶対にしないから。約束する。いきなり勝手に触ったりなんて絶対しない」
頭が混乱して自分が何言ってるのか分からないけどとにかく必死でアロちゃんをなだめます。
「本当にゃ? もういきなり触ったりしないにゃ? 次からはちゃんと触る前にアロに言うって約束できるにゃ?」
「うん約束する。いきなり触ったりなんてしない。ちゃんと触る前にアロちゃんに言います」
「うん。……分かったならいいのにゃ。印世も何も言わずにいきなりお尻触られたらびっくりするはずなのにゃ! ちゃんと触る前にお願いしますしないと駄目にゃ!」
「うん、本当にごめんなさい」
なんだか話の方向がおかしい気もするけどアロちゃんが泣きやんでくれて良かった。
とにかく誠心誠意、心を込めて謝ります。
「じゃあ、今ちゃんとアロに言うのにゃ!」
話が変な方向に……。
「お尻触らせて下さいってちゃんとアロにお願いするのにゃ!」
……どうしてこうなった?
……何がなんだか分からない。
でも僕がアロちゃんのお尻を触ったという真実は動かない。
だから僕に拒否権などはないのだ。
だったらせめて誠心誠意心を込めてアロちゃんにお願いするしかない!
僕はソファーから立ち上がり、アロの方を向いて深くお辞儀をしつつお願いの言葉を述べる。
僕が急に立ちあがったので愚礼斗君があわてて僕から落ちたけど、今はそんなことを気にする余裕も僕にはなかった。
誠意を見せるのだ!
「どうしても我慢できないからアロちゃんの可愛いお尻を触らせて下さい。お願いします」
僕は心を込めてアロちゃんにお願いした。
「分かったにゃっ!」
アロちゃんもソファーから立ち上がり、僕にお尻を向ける。
「……初めからちゃんと言ってくれたら良かったのにゃ」
こうして、僕は膝立ちになってアロちゃんのお尻を触らせてもらった。
気持ちいい。
ソファーとお尻に挟まれていた時にはぐいぐい押しつけられるすごい弾力があったけど、こうして下から見上げつつ触るとお尻の感触もまた違う気がする。
目の前にアロちゃんの可愛いお尻がぷりんってなっています。
そのお尻と僕の顔の間には可愛い尻尾も。
「……尻尾も触っていい?」
「うん、いいにゃ。でもあんまり強く触っちゃだめにゃよ」
アロちゃんに許しをもらって尻尾も触らせてもらいます。
尻尾も柔らかくて気持ちいい。
感触は完全に猫のそれで、愚礼斗君と一緒だ。
見た目もおそろいの黄色と茶色のしましま模様である。
やっぱり兄弟みたいだ。
でも当然だけどアロの尻尾の方が大きい。
なので尻尾のもふもふ感も愚礼斗君の2倍増しくらいだ。
『これもまた素晴らしいのぉ。もふもふじゃ! もふもふ祭りじゃぁー!』
元凶がまた暴れだしました。
『いや、ある意味妾のおかげでこうしてアロの尻尾を触れておるではないか。結果オーライじゃとは思わぬか?』
全く思いません。
1回アロちゃん泣かせておいて結果オーライとかありえないです。
今回は本気で反省して欲しいです本当に。
『うむ……。妾もまさか泣かせてしまうとは思わなんだ。もうアロには今日のようなマネはせぬ。次からは触る前にちゃんと言うのでお主の口からアロに伝えてくれ』
全然反省してねぇーーー!!
まあこうなってしまってはもう仕方がないのでアロちゃんの尻尾とお尻はゆっくりと触らせていただきました。ハァハァします!
アロちゃんは僕と同じ16歳だと言っていたけど、見た目が幼いのでどうしてもイケないことをしている気持ちになってしまいます。
『そして余計にハァハァしてしまうと。……重度のロリコンである』
くっ……。
いい返したいけど反論できない。
遺跡にいた時に中学生みたいなトキナさんにさんざんハァハァしてしまっていたので反論する余地など元からなかった。
僕はトキナさんの言葉攻めにただただ耐えるしかないのである。
そうして、僕はアロちゃんに猫耳も触らせてもらい、もう一度お尻をなでなでさせてもらった。
「ん……くすぐったいのにゃぁ……」
アロちゃんも気持ち良さそうで何よりです。
右手が僕の意思を離れてやたらエロい動きをしている気もするけどアロちゃんが嫌がってはいないようで良かった。
アロちゃんには本当に悪いことをしてしまったけどやっぱりアロちゃんのお尻は可愛いな。
「……何やってんだお前達?」
僕が膝立ちになって目の前にあるアロちゃんのお尻を一生懸命なでている間に瑛さんの電話は終わっていたようだ。
僕は頭が真っ白になりました。
本当に僕は何をやっているのだろう。
『全くじゃ』
くっ……。
トキナさんにだけは言われたくないです本当に!




