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この異世界もう地球化してるんですけど……ぐあっ!右手がぁっ……!  作者: 濃縮原液
第1章 特定外来生物ウホゴリラ(地球名:ニホンザル)
12/42

12 買い物

「さてと、これで今日の予定は終わりでいいかな? 普通は言語習得魔法を受けた後は頭が痛くなるから、その日はそのまま異人会で休むことが多いんだけど」


 瑛さんが話しかけてきた。

 僕としてはどうすればいいだろうか。

 体に不調はない。

 このまま講義などを受けられるならそれに越したことはないけど。


「うーん、この世界に来た人用の講座はいくつかあるんだけど、今からじゃやってないかな。こういうのはだいたい午前中にやっちゃってるからなぁ」


 瑛さんに聞くとこのまま講義を受けることはできないようだ。

 歴史の講義を受ければトキナさんの現状についても情報を得られるはずだが。

 しかしあせりは禁物である。


 瑛さんの話では、1週間は異人会で色々学ぶのが普通だと言っていた。

 それを1日で全て終えようというのは急ぎ過ぎだろう。


「それに結構時間も経っちゃったしね。アロにも連絡しなきゃいけないし」


 そういえばアロのことを忘れていた。

 異人会での手続きが終わったら、アロの家に行く予定になっていたはずである。


「アロも待ちくたびれてるだろうしな。印世君の体調が良ければここらでアロと合流しよう」


 方針も決まり、僕と瑛さんは異人会を後にした。

 異人会から出る間に瑛さんはアロと携帯で連絡を取る。


 携帯と言えばスマホの充電を忘れていた。

 というか僕はこの世界に充電器を持って来てもいない。


「瑛さん、そういえば僕スマホの充電器を持ってないですけど、そういう場合……充電ってどうしたらいいんでしょうか?」


 僕は不安を感じつつ瑛さんへと尋ねた。


「そういえばそうだね。うん……充電器も必要か。というかこれから印世君がどうするにせよ必要な物は色々あるよね。お金も下ろしてこの国の言葉も覚えた訳だし、次は買い物が必要かな」


 充電器はこの世界で買うことができるようだ。

 僕は少し安心する。

 そして、他にも必要な生活用品があるのも確かだ。

 お金もたくさんあるのだし、生活に必要な物は一通り揃えたい。


『買い物か。これは楽しみじゃの。この世界の売り物がどのように変わっておるのか興味津津じゃ』


 トキナさんも楽しみなようで何よりだ。

 生活必需品については、トキナさんの分も買って帰りたいところではある。

 が、今は不信感を与えないことが最優先なのでそれは無理か。


 買い物自体は1人でもできる。

 トキナさんへのお土産は後日買うとして、今は僕の買い物を普通にすることだ。


「まずは電器店に寄ろうか、携帯で伝えたからアロともすぐに合流できるだろう」


 そんな感じで僕と瑛さんは異人会近くにある電器店へと向かう。

 ちなみに電器店はこの世界のどこにでもあるわけではないらしい。


 ただし異人会の近くには必ずある。


 僕のようにスマホや携帯を持って飛ばされて来る地球人が多いからだ。

 そして他の人も充電器の類は持たずにこの世界に飛ばされてくる場合が多い。

 そういう人の為に充電器などを売る店が異人会の近くにあるわけだ。


 ちなみにこの世界の技術で充電器の製造は可能。

 さらに言うと、簡易な物であれば携帯電話の製造も可能だそうだ。

 アロが持つ携帯電話もこの世界で作られた物らしい。


 画面も白黒だし、メールもネットもできないとは言っていた。

 でもこの世界にはやはりインターネットのシステムそのものが存在しないそうなので携帯の機能は僕のスマホでも通話にしか使えないそうだ。


 なら特に大差はないとも言える。

 ネットに繋がないなら日本でもスマホよりガラケーの方がいいくらいだろう。

 スマホは通信料も高かったし……って、そういえばこの世界の通信料はどうなっているのだろうか。


 そもそも僕はこの世界の通信会社と契約していない。

 充電終わってもこのままじゃスマホ使えないんじゃないだろうか。


「そっちは心配しなくて大丈夫だよ。通話料とかは全部無料だから。通信関係は国連が無料で提供している。全部公営だから充電さえ終われば印世君のスマホもそのまま使えるよ。番号もそのままだ。この世界で作った携帯は番号被らないように090以外で始まるから地球のやつはそのまま使えるんだよ」


 うーんこの世界、福祉面では日本より充実しているかも知れません。

 でも国じゃなくてこっちも国連なのか。


 IDカードだけでなくゲートなんかも国連が管理していると言っていた。

 他にも国連主導の物が色々あるようだし、この世界の国連は地球のよりも色々な仕事をしているようだ。


 そんなことを考えている間にアロが走ってやって来た。

 相当ヒマしていたようである。


「ってゆうか家に誰もいなかったのにゃ! 愚礼斗グレイトだけにゃ。家に帰った意味なかったのにゃ!」


 アロはすごくヒマしていたようだ。

 ちなみに愚礼斗というのはアロの家で飼っているオス猫の名前だそうだ。

 猫人のアロが猫を飼っているというのも何だか不思議な感じがする。


「ちなみにアロん家の猫も元々は地球にいたものだよ。この世界には猫人はいても猫はいなかったみたいなんだよね。なぜか猫人に猫好きが多いから最近はこの世界でも良く猫を見かけるようにはなってるけど」


 この世界の猫は全て地球からやってきたものらしい。

 というか猫人は猫好きなのか。

 やはり親近感とかを感じるのかも知れない。


「ちなみに犬は猫人達に嫌われていてね。おかげでニムルスでは犬の輸入や飼育が法律で禁止されている。まあ地球産の動物の扱いが厳しいこと自体はどの国でも普通で、逆にこの国で猫が飼いたい放題という方が例外的な話なんだけどね」


 なんだか複雑な話のようだ。


「犬は敵にゃ! すぐ吠えるからアロは嫌いなのにゃ。愚礼斗も犬を見たらおしっこちびりそうなくらいブルブルするのにゃ!」


 うん、猫人の犬嫌いは全く複雑な話ではなさそうだ。


「犬と猫自体は仲良くなることもあるはずなんだけどね。猫人は違うのか。いや、私はただ猫人が過剰反応してるだけで仲良くなれると思うんだけどね」


 結局のところ、ちゃんとした理由なしに犬は猫人に嫌われているようだ。

 というか地球産の動物自体が飼うのに許可とか必要らしいから、犬が嫌われているというよりも猫が特別に好かれているという方が正解か。


『ふむ……猫か。妾もぜひこの目で見たいものじゃ』


 うん、トキナさんにもぜひ見て欲しいです。

 猫人もかわいいけど地球の猫もすごくかわいい。

 買い物が終わったらアロの家に行く予定だけど、愚礼斗君に会うのが今から楽しみだ。


 ちなみに愚礼斗グレイトっていう名前はアロがつけたらしい。


「ふっふっふー。アロは日本語ペラペラだからにゃ! 難しい漢字も書けるし。姉ちゃん達は漢字読めないけどアロが愚礼斗って書いたらなんかカッコ良いって気に入ってたのにゃ!」


 うん、アロの名前のセンスが多分ギャル語に汚染されてる。

 将来子供が出来たらキラキラネームとかつけそうで心配だ。

 やはり言語習得魔法の副作用には恐ろしい物があるようだ。


『愚礼斗もカッコ良い名前ではないか、印世といい勝負じゃぞ』


 トキナさんのネーミングセンスもギャル語に汚染されてそうで怖いです。


 って言うか僕の名前はキラキラじゃないし! 全然まともだし!

 ちゃんと日本語として読めるからまだぎりぎりキラキラネームじゃない!

 まあそれ言うと愚礼斗もまだキラキラではないかも知れないけど。


 そんなことを話している間に買い物は滞りなく進んだ。

 とりあえずコップやハブラシ、石鹸などを買っておく。


「印世君のこれからの生活次第ではあるんだけどね。印世君は恐ろしく強いから私としては傭兵になるのをお薦めしたい。その場合は定住しないことも多いし、この世界は場所によって生活水準に差もあるから、異人会の近くで生活必需品は揃えてしまうのがお薦めだ」


 僕としてもありがたいお薦めである。

 最終的にはサラスタンへ旅に出ることになるから、旅で使える装備は揃えたい。

 傭兵も旅をすることが多いようだから傭兵になるのはいいかも知れない。


 傭兵として旅をしてサラスタンに入れば怪しまれる確率も減るだろうしね。

 この話は僕に都合が良すぎて瑛さんが僕の目的を分かった上で言っている気もするけれど、それならそれで純粋に嬉しいので素直に聞いておきたいと思います。


「おー。印世傭兵になるにゃ! 傭兵ならアロもお薦めするのにゃ! なんて言ってもアロも傭兵だからにゃ!」


 アロが傭兵だというと僕の中の傭兵のイメージが崩れそうだ。


「まあ傭兵って言っても近頃大きな戦争は起きてないからね。最近はほとんど便利屋と化している。それでも傭兵っていう職業が残っているのは主に魔物対策だな。この世界では移動のほとんどをゲートで済ませてしまう分、街の外には危険が多い。そういう場所へ行く人間の護衛をするのが、最近では傭兵のメジャーな仕事と言えるね」


 この世界にはゲートがある代わりに、他の交通網の整備は遅れているらしい。

 市街地の中はアスファルトのようなもので舗装がされているけど、街の外には道らしき物すらなかった。


 この世界では街を出ること自体が危険なようだ。

 そう考えると、アロのやっている護衛任務はこの世界の傭兵として正しい姿なのかも知れない。


 アロがその任をしっかりこなしているかははなはだ疑問だが。

 瑛さんの場合ステルス使って1人で外に出た方が安全な気すらするし。


「印世君さえよければ、しばらく私達と行動を共にしてみないか? もし傭兵になる気があるのなら、アロの仕事ぶりを見るのも何かの参考にはなるだろう」


 うん、アロがちゃんと仕事をしてくれれば参考になると思います。


 とは言え、瑛さんの提案は真面目にアリかも知れない。

 瑛さんは色々な場所を旅しているようだ。

 それに着いていけばこの世界での旅の仕方も学べるだろう。


 もしかしたら瑛さんの用事でサラスタンへ行くこともあるかも知れない。

 いや、それはそれで困るのか。

 サラスタンへ行く時は瑛さん達とは別れて1人で行きたい。


『その場合は、瑛達がサラスタンから出る時に別れるという手もあるの』


 それもアリだ。

 傭兵という職業もこれからの僕に都合が良さそうだし、傭兵見習いとして瑛さんについて旅をするのは良さそうだ。


「瑛さんが良いんでしたら、僕としてもお願いしたいです。傭兵という職業にも興味はありますし、それに瑛さんには本当に助けてもらってるから、僕に何かできれば瑛さんの助けにもなりたいですし」


 これは僕の本心だ。

 瑛さんには本当に感謝している。

 今も買い物に付き合ってもらっているし。


 そして、僕はまだ何も瑛さんに恩返しできていない。

 これから一緒に旅をして何か恩返しできるなら、それはぜひやっておきたい。

 そうして瑛さんの方を向くと、僕はまた瑛さんに抱きしめられてしまった。


 幸せです!

 僕は全力で瑛さんについて行きたいと思います!


『もう妾の元には帰って来なくて良いぞ』


 はうっ!

 またトキナさんをねさせてしまった。

 心の声はどうしようもないとは言え少し反省したい。


『まあ……妾とて瑛のことは好きじゃし、瑛のこの胸の感触もたまらんものはあるのじゃが』


 そういえばこの人あっちの趣味の人でした。

 最初アロの家に行く話が出た時には、アロのお姉ちゃん達に襲われろと本気で言っていた人だからな。


 僕からはトキナさんが考えていることを読めないけど、トキナさんが一体何を考えているのかはすごく気になります。


『やはり瑛について行くのはよい選択肢じゃろう。そして理想としては、サラスタンに行く目途が立つまでに瑛ともにゃんにゃんできるのがベストじゃな!』


 やっぱりダメだこの人。

 っていうか考えてることがおかしいよ。

 僕は瑛さんを尊敬しているし、その点に関してはトキナさんも一緒だと思っていたのに。


 そんな瑛さんをエッチな目で見るなんてトキナさんは卑猥です!


『ふふふ……そういって実は瑛も主のことを卑猥な目で見ておるかも知れぬがの』


 そんなことないです!

 瑛さんはそんな人じゃありません! トキナさんとは違うんです!


 本当に、まったくトキナさんはけしからん人です。


『尊敬してるかどうかと性的対象になるかは関係ないではないか。むしろ尊敬するからこそ性的にも奉仕をしようという気が主には足らぬのではないか? そもそもじゃな、主は妾に対してもそういう気持ちでご奉仕というものをじゃの……』


 トキナさんがアホなことを言い始めたので無視することにします。

 まあトキナさんがエッチな奉仕をしろというならそれは全力でやりますが。

 むしろ言われなくてもやりますが!


 とか考えたらまた遺跡に戻りたくなってしまうしやっぱりトキナさんは無視だ。

 というかトキナさんとアホな話をしている間に買い物も終わってしまったし。


 僕の服とかを瑛さんとアロが一生懸命選んでくれていたのに僕は何をやっているのかと。

 むしろトキナさんは何やってるのかと。


『服なら妾も選んでやったではないか』


 うん、確かにトキナさんも服は選んでくれた。

 瑛さんとアロも感心していたしやはりトキナさんのセンスはいいようだ。

 エロ方面で思考がおかしいこと以外はトキナさんも尊敬できる人なんだけど。


『なら尊敬の念を込めたご奉仕をじゃの……』


 それはしますけど!

 帰った暁には溜まった分ご奉仕でもなんでも全力でしますけど!

 本当にトキナさんはけしからん人です。




 そんな感じで買い物も終わり、アロの家へと着いた。

 例のごとく街とかはほとんど見ていない。


 一応、雑貨類とかも地球化がしっかり進んでいるようだった。

 服もポリエステルとか書いてあったので化学繊維か何かだろうし、プラスチックのコップやハブラシ、歯磨き粉に石鹸やシャンプーなんかも揃えられた。


 本来トキナさんはこっちについてもっと突っ込むべきなんですけどね。

 まあその辺もちゃんと聞いてきて説明もしたんですけどね。

 エロ話の方がそれより多かったのはやはりどうかと思います。


 これからアロの家に入るけど、先が思いやられる気がします。


『ついに愚礼斗君とお目見えすることができるのじゃな』


 お、トキナさんも猫には興味があるようだ。

 ちょっと嬉しい気持ちになりつつ僕たちはアロの家へと入る。


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