8時だよ、全員集合!!
迎えた遊園地デート当日。増山の愛車・BMW M3CSLと、ソフィのフィアット二台で、歩美、ナナとケイを迎えに行く手筈になっている。目的地の遊園地・ユートピアワールドは、市の中心部に位置し、近年、来場者不足から経営が危ぶまれていた。
今日は平日ということもあり、アトラクションで並ぶことは皆無だろう。増山、金平、チャック、木下、ソフィの5人は、マッスル引っ越しセンター地下駐車場で、8時に集合する約束を交わしていた。もちろん社長には声をかけていない。それに付随するかのごとく、悲しいかな伴侶のいない三国も声をかけられなかった。
増山が地下駐車場の打ちっぱなしのコンクリートの柱に身をもたげ、腕に巻いたタグホイヤーのブルーの文字盤に見入っている。レザーの黒いブルゾンに紺色のセーター、洗いざらしのジーパン。身長190センチの屈強な体躯のこの男は、外国人俳優のような佇まいを見せていた。
続いて現れたのは金平と木下。金平はいつものグレーのパーカーに、チノパン、スニーカー。ファッションに無頓着なこの男らしいが、均整のとれた体と甘いマスクのせいで、爽やかな印象を与える。木下は新たに新調した紺色のブレザーに、シャツ、白のパンツ。妖艶な色気は相変わらず、中性的な雰囲気を醸し出している。揃いも揃って、三者三様、役者のような男ぶりだった。
「おはようございま~す」
ソフィが地下駐車場への階段を降りてきた。増山と木下がそれに答えて挨拶すると、金平も続いた。
「おはよう」
少し伏し目がちに、目の前に現れた美しい女を視界に入れる。
カーキのコートに胸元の開いた白のセーター、黒のレギンス。
薄暗い地下駐車場の中でも、透き通るように白い肌が浮かび上がって見える。記憶が失われてから、ソフィは人が変わった。──金平には、少なくともそう思えた。以前のように、仔猫のようにはしゃぐ快活な姿があまり見られない。今日、遊園地で、また以前の屈託のないソフィに戻ってくれたらどんなに嬉しいだろう。そう願わずにはいられない金平だった。
並んだ金平と木下の元へ、はにかみながら近づくソフィ。
曇った表情の金平へ木下が笑顔を送る。ソフィから見えないように、グレーのパーカーの広い背中を軽く押した。
「!」
木下を一瞥し、金平は戸惑いながら歩みを進める。ソフィと金平が近づいて、ギクシャクしながらも話始める姿を、木下は温かく見守った。
穏やかに微笑む目元と頬が、少し痩けている。今日はいつもより体調が良い。1週間のうち、2日か3日は体調が思わしくなく、ベッドから出れない日もあった。数ヶ月もしない内に、もう立ち上がることすら出来なくなる予感がしている。
残された時間を精一杯生きよう。
胸中でそう呟く木下。金平やチャックと出会い、共に戦ったことで、以前はどこか投げやりだった木下の気持ちに変化が訪れていた。
「チャックが来ないな」
増山が腕時計をもう一度確認する。8時を過ぎていた。
「オクレテすいまセ~ン」
地響きを伴い、チャックが現れた。
「!」
驚愕する一堂。ピカピカに磨きこまれた皮靴。高級ブランドとおぼしきスーツ。サングラス。金髪をオールバックに撫で付けてある。
どこからどう見ても、要人警護のSPにしか見えない。
「チャック、どうしたんだそのカッコ?」
唖然とする金平が尋ねる。
「オ~ウ、ショウブ服デ~ス。コノ日ノために新調シマシタ~」
得意気なチャック。自分なりのコーディネートをしたのだろう、ラフな格好の一団からは明らかに浮いている。
「よし、じゃあ出発するか」
そんなチャックを気にするでも無く、増山が声を上げた。
「んっ!?」
突如増山が驚愕した表情を浮かべる。その視線の先には……。




