待ち合わせ!!
「あんた達、こそこそ何やってるの?あたしも連れてきなさいよ」
階段から腕組みしながらゆっくり降りてきた男。いつもと違うデニム素材のタンクトップと短パン。それぞれの裾の部分に、銀色に輝く刺々しい程尖ったスタッドが意匠されている。そこから生えている、はち切れんばかりの筋肉で覆われた四肢。
──社長だった。とぼけているが、今日の遊園地行きは三国に調査させ詳細まで知り尽くしている。
「今日のために……金ちゃんのために新調してきたのよ」
金平へ向け、熱い視線を送る。どう見ても、ゲイバーに在籍する最古参のストリッパーにしか見えない。汚物を見るような表情で目を細める金平。
「車はマローダーがあるから、一台で事足りるわ」
地下駐車場の天井スレスレに、ルーフが届きそうな装甲車のごとき車体を見つめながら、口の端を歪めた。あんな戦闘車両で迎えに行った日には、女子達がドン引きすること間違い無いだろう。
ましてや、この狂人まで同伴するなどとは……。
金平は目眩を覚えた。
「万が一、何か危険な状況に陥っても、あたしとマローダーが揃っていれば乗り越えられるわ」
社長が高らかに声を上げる。
『いやいや……あんたとマローダーの存在事態が既に充分危険だよ』
金平は胸中でため息をつく。
そうこうしている間に、マローダーのエンジンに火が点る。どうやら三国が運転席にいるようだ。
「さぁ、あんた達乗りなさい」
「オ~ウ……刑務所へ、ゴソウサレル気分デ~ス」
チャックが肩を落とす。
「よし、じゃあみんなマローダーへ」
穏やかな表情の増山。みんなをなだめるような口調だ。苦笑しながらマローダーに乗り込む面々。
一路、女性陣との待ち合わせ場所になっている、駅近くのコンビニへと出発した。
◆◆
30分程車に揺られ、待ち合わせ場所のコンビニへ到着した筋肉防衛軍一堂。三国が世話しなくハンドルを回し、マローダーを路肩に寄せる。ガラス越しに、こちらに気付いたナナとケイが手を振っている。護送車と見紛うマローダーを見て失笑している様子だ。
次々に車から降りるメンバー達。快晴の下、さっきまで冷たかった空気が次第に暖かくなっていくのを肌で感じられる。
緊張した面持ちのチャック。
「チャック、リラックス、リラックス。大丈夫だよ」
金平が優しく声をかける。
「カナダイラさ~ん、ワタシ、ヘンジャ無いデショウカ?」
ネクタイを正し、サングラスをかけ直すチャック。
「そんなことねーよ」
まさかおかしいとは言えない。よく見ると、ネクタイを掴む太い指に、金色の指輪が連なるように幾つもついている。メリケンサックに見えなくもない。要人警護のSPどころか、マフィアのボディーガードに見えてきた。
『ここまで来たらどうすることもできんて』
金平は胸中 で、諦めからため息をつく。
「ちょっとチャック、あんた遊園地行くのになんてカッコしてんのよ!」
目を血走らせ、股関を掻きむしりながら社長が吠えた。
『いやいや、あんたはどー見ても、薬中に陥ったゲイのストリッパーにしか見えませんて……』
聞こえないように呟く金平。うなだれたチャックに、かける言葉も見つからない。
「チャック、カッコいいよ」
ふと、車から降りるチャックの後ろからソフィが声をかけた。
「オ~ウ、ソフィアさ~ん」
背中を丸くして頭を掻くチャック。全員がマローダーから降り、コンビニに入った。木下の顔を見たケイが、笑顔で駆け寄る。丈の短いワンピースから、まだ幼さを残す丸みを帯びた白い脚がのぞく。
「おはよう」
溢れんばかりの笑顔を浮かべながら、木下の腕に手を回す。木下も子供じみた笑顔を浮かべ、それに答えた。その後ろから、ゆっくりとナナが歩みよって来る。夜のイメージとは違い、カーディガンを羽織った清楚な雰囲気だ。それを見たチャックが、直立して顔を上気させる。
「どうしたの?結婚式?」
クスクスと笑い、チャックを見つめた。チャックは無言でうつむき、頬を赤く染めている。
そんな面々を尻目に、増山が歩美の元へ近づく。
「すっちん、凄い車で来たね」
雑誌を立ち読みしていた歩美も笑顔だ。
「あぁ、社長も行きたいって言うからな」 苦笑いする増山。いつもより元気そうな木下の姿を確認すると、歩美と顔を見合せ、もう一度互いに微笑んだ。




