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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第④マッスル◆新たなる脅威!!◆
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滲む思い!!

 三国の提案により、四人で増山の病室を見舞って行くことになった。頼れるアニキ的存在の増山に会う事で、金平とソフィの気まずい雰囲気を、多少なりとも和ませられるのではないかという三国の配慮からだった。

「木下さん、どうしたの?そこ?」

 廊下を進むソフィが、木下のブレザーの胸元が裂けていることに気づく。

「あぁ、ちょっとね」

 ソフィの視線に、穏やかな笑顔を浮かべる木下。

 よもや、ついさっき日本刀で切りつけられたなどと言うのもどうかと思い、場の雰囲気を壊さぬよう誤魔化す。二人のやりとりを、穏やかだがどこか寂しげな眼差しで見つめる金平は、後ろから三国と肩を並べて歩く。気まずい空気に、三国は困惑した、なんとも言えない表情を浮かべている。

 増山の病室の前に到着すると、中から談笑する声が聞こえた。心地好い響きのバリトンボイスは増山だろう。

 聞きなれないもう一人の声。三国がノックをしてからドアを開けた。ベッドで上半身を起こしている増山。その手前には、丸椅子に腰掛けて、こちら側に背を向けているスーツ姿の男がいた。

 艶やかな長髪。病室内には、男がつけているらしい微かな柑橘系のフレグランスの香りが漂う。

 ドアの開く音に、男はゆっくりと上体をこちらに捻った。

 色の白い、品のある目許に整った鼻筋。眉目秀麗、役者のような男振りだった。

 三国重工、現社長・三国司。

「あぁ、兄さん」

 穏やかだが芯のある声を上げ、自らの兄に笑顔を送った。

「司ぁ、来てたのか」

 目を輝かせる三国兄。

「こ、こんにちわ」

 ソフィが目を丸くしながら頭を下げた。それに倣い、木下と金平も続く。

「あぁ、ソフィアちゃんだね?中々会う機会が無かったけど、初めまして……では無いよね」

 鬼道空手を通じて、ソフィは幼い頃から増山やチャックとは親交があったが、司に関しては<美空事件>以降、パッタリと空手を辞めていたために、顔を合わす機会が無い。

 そもそもソフィ自身、両親が離婚してからは、フランスのマルセイユで母親と一緒に暮らしていたため、マッスル引っ越しセンターの内情には疎かった。日本の立ち技系格闘技・シュートボクシングの試合へ出るため、ほんの半年前から父親と生活を始めていたからだ。

 司がマッスル引っ越しセンターの事実上のオーナーである事は聞き及んでいたが、まともに会話をするのは初めてだった。

「この前、増山さんの病室の前ですれ違いましたよね?」

「あぁ、あの時入れ違いになったのは、やっぱり君達だったか」

 司は涼やかに微笑むと、視線を金平へ移した。

「君が金平君かな?話は社長や増山から聞いてるよ」

「えっ、はぁ……」

 ソフィの事で五里霧中の金平は、つい、気の無い返事を返す。

「あっ……」

 音も無く立ち上がった司が、金平の目の前に歩み寄り、白く長い手を差し出した。我に還った金平は、慌ててその手を握り返す。

「逞しい手だね」

 司が白い歯を見せる。

 増山とは違うが、それとは異種の、大人の包容力を感じた。

 続いてソフィに握手を求める司。ソフィは顔を上気させながらそれに応じた。

「この前のシュートの試合、良かったよ。初出場で2位だなんてね。雑誌じゃ<キックの女神>って騒がれてたよ。後でサイン貰えたら嬉しいな」

 あどけない表情ではにかむと、ウインクして見せる。

「そんな、まぐれです」

 更に赤面すると、瞳を伏せるソフィ。パタパタと羽ばたきそうな程上下する長い睫毛。

「こいつ、ソフィが特集された記事を持って来ては俺に見せるんだよ。格闘技マニアは昔からでさ」

 ベッドの増山が破顔しながら言った。どうやらソフィは、女子シュートボクシングに参戦する中でもかなりの実力者らしい。そんなソフィの知られざる一面を垣間見る金平だったが、また少し、言い様の無い淋しさを覚えた。

 金平とソフィの間をすり抜け、モデルさながらの姿勢で、司が木下の前へ。

「……君が、木下君だね。小さい頃に会っているが、覚えているかな?」

「……はい。覚えてます」

 木下が微笑む。

 そんな木下の顔を、感慨深そうに司は見つめた。

「よく似ている──」

 声のトーンを落とすと、今までとは違う、どこか物悲しげな笑顔を作った。遠い過去の記憶に思いを寄せたのだろう。静かに木下へ手を差しのべた。

 木下も、そっと手を差し出す。

「何かあったら力になるから、甘えてくれたら嬉しいよ」

 そう口にする司の瞳には、木下への言い表せ無い程の思いが滲んで見える。握った冷たいてのひらとは違い、暖かく、穏やかな心に触れた気がする木下だった。

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