定格消費魔力・ゼロの誘惑
誰とも喋らずに引きこもりたい――。
その一心でコウノスが繋いだ超古代のネット通販『魔導Amazon』は、居候のヒロインたちをも完全に虜にしてしまう。
画面を「ポチる」だけで、死の大地にいながら世界中の物资が数分で置き配される圧倒的QOL。
完璧な引きこもり要塞が完成していく中、コウノスが構築したその「完璧な回線」の輝きは、世界のどこかで眠る『ある重大な因縁』の引き金を、静かに引こうとしていた――。
「マスター! 見てください、この『高純度アルコール配合・除菌ウェットティッシュ(古代製)』! 画面を指で弾くだけで、本当に3分で小屋の前に落ちていました! 凄いです、革命です……!」
「コウノス、私もこれポチっちゃった! 最高峰の魔導はんだ線が、初回限定プライム特典で送料無料よ!? このシステム、国の経済を完全にハッキングしてるわ……!」
室温23度、湿度45%。
俺の静かな聖域は、アイフェン(通信端末)の画面を狂ったようにスクロールする美少女2人の熱気で満ちていた。
「……はぁ。静かにしてってば。画面のブルーライトで部屋の雰囲気が落ち着かないんだけど」
俺はパイプ椅子の上で、冷たい麦茶をすすりながらボソボソと言った。
だが、内心ではガッツポーズを崩していない。
『魔導Amazon』の開通により、リィンとアイリスの興味は完全に「ネットショッピング」へと移行した。おかげで、俺の右腕の座をかけた泥沼のキャットファイト(ノイズ)は劇的に減少。おまけに俺自身も、一歩も外に出ずに最高品質のジャンクパーツを無限に手に入れられるようになった。
「……完璧だ。これだよ、僕が求めていたJIS規格準拠の丁寧な暮らしは」
誰とも喋らない。誰からも過負荷(期待)をかけられない。
ただ、好きな時に好きなジャンクをいじり、定格出力の5Wで、世界を美しくデバッグして暮らす。
俺は届いたばかりの古い基盤を、はんだごてで愛おしそうに撫でる。
ジュッ、と小さな銀色の花が咲き、死んでいた回路に再び美しい魔力の血流が通っていく。この瞬間が一番落ち着く。
「ねぇ、コウノス。この『魔導Amazon』って、一体どこから商品を引っ張ってきているの? 登録されている商会やギルドの数が、あまりにも異常なんだけど……」
アイリスが画面を見つめたまま、ふと不思議そうな声をあげた。
「あー……それは、地下の超古代回線が生きてる、大陸中の大手の配送ハブ(物流倉庫)に自動でアクセスが飛ぶようにスクロール(プログラム)を組んだから」
「サラッと言ってるけど、国家機密レベルの防壁を5Wで踏み荒らしてるわよ、あなた……」
「防壁の設計がタコ足配線だから、裏口からアース(接地)を繋げば簡単にスルーできるんだって。……それより、そろそろ夕飯の買い出し(ポチり)にしよう。リィン、今日の定格補給は何がいい?」
「マスターが炊いてくださる白いご飯があれば、私はそれだけで出力120%です……!」
「じゃあ、米に合うおかずの缶詰でも探すか……」
俺はボソボソと呟きながら、自分のアイフェンの画面を開いた。
世界中の不要なジャンクや、売れ残った物資が、俺の作ったシステム(回路)を通じて、この死の大地の小さな小屋へと吸い寄せられていく。
一歩も動かず、世界をネットワークの糸で手繰り寄せる快感。
だが、徹底的に陰キャな引きこもり生活を極めようとする俺は、まだ知らなかった。
俺が繋いだその「完璧すぎる回線の波形(JIS規格)」が、世界中のネットワークを監視していた**『ある極上の大物』**のアンテナに、ビシビシと強烈なノイズを叩き込んでしまっていることに――。
「……ん? なんだろ、注文履歴の裏の、暗号化の動きがちょっと変だな……。まぁいいか、エアコンの調子は良いし」
俺は冷たい麦茶を飲み干し、再び心地よい静寂の中へと引きこもるのだった。
(第10話へ続く)
第9話をお読みいただき、ありがとうございました!
美少女2人も完全にダメにする恐怖のインフラ『魔導Amazon』。一歩も動かずにQOLを爆上げしていくコウノスの引きこもりライフは、ついに完成の域へと達したとも言えるのではないでしょうか?
次回第10話、コウノスが完成させたアキハバラ聖域に、これまでのノイズとは一線を画す「最大級の衝撃」が置き配されることに!?
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