アキハバラ物流網、起動(あるいは魔導Amazonの爆誕)
古代魔導炉をデバッグされ、無事に(?)コウノスの狂信者となった天才令嬢アイリス。
シェルターに居座ろうとする彼女に対し、先住ライン工のリィンが「マキータ(回転魔槍)」を抜いて激突!?
押しかけ美女2人の喧嘩ノイズに胃を痛めた陰キャ職人コウノスは、「誰とも喋らずに引きこもりたい」という一心から、超古代の通信端末のハッキングを開始する。
大陸の物流を完全支配する、恐怖の『魔導Amazon』が今、駆動する――!
「ちょっと、そこのエルフ! どきなさい! 私のほうがコウノスの右腕として、より高度なインピーダンス整合をサポートできるわ!」
「お断りします、イナバの令嬢! マスターの隣(定格位置)は、最初のライン工であるこのリィンの聖域です! 邪魔をするなら、このマキータで頭のビスをすべて締め直してあげますッ!」
「な、なんですってぇ!?」
室温23度。
完璧だったはずの俺の引きこもり空間(聖域)が、今、最悪な人間関係のノイズによって過負荷を起こしていた。
「……あー、イライラする」
俺は作業机の隅で、頭を抱えてボソボソと早口で呟いた。
暴走魔導炉を直してやった結果、アイリスは帝国への帰還を完全拒否。実家から工具やジャンクを勝手に取り寄せ、リィンと激しい「チーフ助手争い」を始めてしまったのだ。
眩しい。美少女2人が狭い小屋でギャーギャー揉めている図が、陰キャの俺には精神的過電圧すぎて脳がショートしそうだ。
「……人と喋りたくないから死の大地に引きこもったのに、なんでこんなにコミュニケーションコスト(負荷)がかかってるわけ? そもそも、なんで僕がわざわざ外にジャンク(資材)を拾いに行かなきゃいけないんだ。誰かが勝手に家の前に届けてくれればいいのに」
そう。引きこもり生活を完成させるための、最後のミッシングリンク。
それは**【通信販売】**だ。
俺は目の前の作業机に、砂漠の奥から掘り出しておいた『長方形の薄いガラス板』を並べた。
超古代の個人用通信端末――【アイフェン(第7世代モデル)】。
この世界では、ただの「中身が光るだけの高級な文鎮」として貴族の間で取引されているジャンクだが、俺のプロの目はその本質を見抜いていた。
これは、超古代の超広域通信網に接続するためのクライアント(端末)だ。
「よし。2人の喧嘩のノイズを遮断するために、一気にインフラ(システム)を構築しよう」
俺は5Wの魔力をはんだごてに込め、アイフェンの超微細なメイン基盤へと突き立てた。
ジュッ、とミクロン単位の電子の道を繋ぎ直していく。
「マスター? 喧嘩を止めてボソボソと何を作っているのですか?」
「コウノス、その光る板はなぁに……?」
ようやく喧嘩を止めた2人が、俺の背後からひょっこりと顔を覗かせてきた。距離が近い。シャンプーのいい匂いが2倍になって脳に負荷がかかる。
「……これ? 『魔導Amazon』のクライアント端末。いま、死の大地の地下を通ってる超古代の光導魔力回線に、ハッキングして接続した」
「まど、あまぞん……?」
「インターネット……?」
2人がきょとんとする中、俺はアイフェンの画面をタップした。
すると、真っ黒だったガラス板に、パッと美しいオレンジ色のロゴマークが浮かび上がった。矢印が『AからZ』へと伸びている、前世で嫌というほど見たあのデザインだ。
画面には、国境を越えたあらゆるギルドや商会が眠らせている「不要なジャンク(廃棄資材)」のリストが、画像付きでズラリと一瞬で羅列された。
「うわ、帝国中央ギルド、型落ちの魔導コンデンサを100個『ジャンク品・ノークレームノーリターン』でタダ同然で出品してるじゃん。送料別だけど。……ポチッと」
俺が画面をタップした瞬間。
シェルターの外の炭素砂漠から、ゴオオオオオオッ! と地響きのような駆動音が響いた。
「な、何事ですか! 敵襲!?」
リィンがマキータを構えて窓の外を見る。
死の大地の砂を割り、地下の超古代自動配送パイプラインから飛び出してきたのは、何百年間も持ち主の命令を待ち続けて待機していた、数十機の**【自律飛行型清掃・配送ドローン(通称:ルンバ・エア)】**だった。
ドローンたちは、驚異的な速度で帝国中央ギルドの倉庫へジャンプ(飛行)し、俺が注文したコンデンサの箱を回収。わずか3分後には、俺の小屋の前に『置き配』として正確に、静かに着陸したのだ。
「ご注文のパーツをお届けしました。ピンポーン」という機械音声が響く。
「な、ななな……何よこれぇぇぇぇ!?」
アイリスが本日一番の絶叫をあげ、髪を振り乱して窓に張り付いた。
「帝国からこの死の大地まで、馬車で最短でも3週間はかかるのよ!? それを、その光る板をペチペチ叩いただけで、古代のゴーレムが3分で持ってきた……!? 物流の概念が、国家の経済システムが、一瞬でデバッグ(破壊)されたわよ!?」
「大袈裟だな……。ただの『即日配送』でしょ。前世のプライム会員なら普通だよ」
俺は冷たい麦茶をごくりと飲み、置き配されたコンデンサの箱を開けて、ボソボソと微笑んだ。
「これで、僕は一歩も外に出ずに、世界中のジャンクを買い漁れる。誰とも喋らなくていい。完璧な、引きこもり回路(QOL)の完成だ」
しかし、俺はまだ気づいていなかった。
俺がハッキングして開通させたこの『魔導Amazon』のシステム画面、その裏側の受注ログの向こうで――。
『――え? 今、私の商会の死に在庫だったジャンクを、一瞬で買い取った端末がある……? 嘘、このIPアドレスの構成、JIS規格(まえのよの、あの人)の組み方だわ……っ!』
前世の秋葉原で、俺のジャンク屋を唯一肯定してくれた**「あの少女(商会の令嬢)」**の魂が、画面の向こうで大電圧を起こしていることに、引きこもり陰キャの俺はまだ、全く気づいていなかった。
(第9話へ続く)
第8話をお読みいただき、ありがとうございました!
「誰とも喋りたくない」という後ろ向きすぎる欲望のために、大陸の物流を3分で終わらせる超絶チートインフラ『魔導Amazon』を爆誕させてしまったコウノス。これがアキハバラ建国の第一歩となります!
次回第9話は、魔導Amazonの爆発的な便利さに、リィンとアイリスが「ネット廃人」と化すコメディ回。さらに、画面の向こうのサクラが、コウノスを特定するためにアキハバラへ向けて超高速で送電(大移動)を開始します!
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