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マキータの回転魔槍と、不器用な彼女へのトルク管理

超古代の電動工具『マキータ』を、前世の変態的ジャンク知識で完璧にオーバーホールしたコウノス。

ついに目覚めた緑色の悪魔を手に、コウノスは不器用なエルフの少女リィンへ、至高の技術指導(トルク管理)を開始する!

「いいかいリィン、道具をイカせるかどうかは、君の『握り(グリップ)』次第なんだ」

コウノスがボソボソと放つプロの職人セリフが、なぜかリィンのウブな乙女心を過電圧オーバーロードさせていき――!?

「……よし、インピーダンス整合完了。ブラシレスモーターのコイル巻き直しも、5Wの精密出力ならお手の物だ。……目覚めなよ、緑色の悪魔マキータ

俺はトリガーを軽く引いた。

キュイィィィィィン……!

小屋の中に、前世の作業場で一万回は聞いた、あの官能的でブレのない高周波の回転音が響き渡る。これだよこれ。不純物ゼロのはんだ付けと、JIS規格に準拠したグリスアップがもたらす、完璧な定格駆動の音だ。

「お、おお……っ! 息を吹き返したどころか、あの頑固だった魔導回転槍が、まるでマスターの指先と一体化しているかのように鳴いている……っ!」

白米を綺麗に完食したリィンが、お茶碗を握りしめたまま、目をキラキラと輝かせて身を乗り出してきた。

「リィン。君の親父さんも、これを使ってたギルドの連中も全員バカだ。このマキータを、ただの『パワーでねじ込む暴力の槍』だと思ってる」

「はひっ!? バ、バカ、ですか……!?」

「そう、大バカ。みんなトリガーをいきなり全開まで引き絞って、100%の馬力でガガガガッと力任せに回すだろ? だから素材の「定格」を超えて、ネジの頭が舐めるか、内部のギヤが焼き切れて自滅するんだ。いいかい、道具っていうのはね――」

俺はリィンの背後に回り込み、彼女の華奢な右手を、後ろから包み込むようにして握らせた。

「ひゃ、ひゃああんっ!? ま、マスターっ!? 距離が、定格を超えて近すぎますっ!」

「静かに。エアコンのセンサーが君の体温上昇を検知して、エコモードが解除されちゃうだろ」

俺はボソボソと早口で言いながら、彼女の人差し指に俺の指を重ね、マキータのトリガーへ添えた。

「マキータの真骨頂は、このトリガーの『無段変速』にある。指先の数ミリの引き加減で、回転数を1から100まで自在にコントロールできるんだ。まずは素材の抵抗おねだりを指先で聴くんだよ……。最初は、優しく、ゆっくり……」

「あ、あう……優しく、ゆっくり……っ」

「そう。ネジが噛み合ったら、徐々に、トルク(締め付け力)を上げていく……。そして最後の一締めの瞬間だけ、キュッと強く握り込む。ほら、やってごらん」

俺が指を離すと、リィンは顔を湯気が出るほど真っ赤に染め、呼吸を荒くしながら、目の前のジャンクの鉄板に向かってマキータを構えた。

キュ……キュイイィィィィン……ガチガチッ!

完璧だった。

リィンの持ち前の「一定の力を保つ素質」が、マキータのクラッチ機能と120%同調したのだ。ネジは1ミリの歪みもなく、鉄板へと美しく、吸い込まれるように完全締結された。

「できた……。力を、全然入れていないのに、信じられないほど滑らかに、奥までカチッと嵌まりました……! なんですか、この、脳の奥が痺れるような、最高に気持ちいい一体感は……っ!」

リィンは自分の右手とマキータを交互に見つめ、ハァハァと激しく息を荒くしている。完全に工具の「定格制御」の快感に脳をハッキングされていた。

「だろ? パワー(出力)なんて5Wで十分なんだよ。大切なのは、相手の素材に合わせた『丁寧なトルク管理(愛)』だ」

俺がドヤ顔で冷たい麦茶をすする。

しかし、リィンの受け止め方は、俺の想定を遥かに超えてバグっていた。

(マスターは今、私に『愛』と仰った……!? 道具だけでなく、不器用な私の手をとって、優しく、奥まで導いてくださった……。ああ、このお方は、ただ世界をデバッグするだけでなく、私の壊れた人生まで、完璧な数値で管理(調和)してくださるおつもりなのだわ……っ!)

リィンの瞳の奥に、怪しいほどのピンク色の「狂信回路」が完全にパチパチと接続された。

「マスター……っ! 私は今、理解しました! あなたの5Wの優しさ(はんだごて)に、私のすべてを委ねます! さあ、次はどこを、どのように締め付ければよろしいでしょうかっ!?」

「え、いや、次は小屋の裏の配管のネジ締めなんだけど……なんでそんなに息荒いの? 怖いんだけど。……あ、ちょっと待って」

俺のジャンクセンサー(耳)が、小屋の外から迫る不穏な高周波ノイズを捉えた。

どす黒い嵐の向こうから、バリバリと下品な火花を散らしながら近付いてくる、超弩級のタコ足配線な魔力気配。

「チッ……。快適な24度の部屋に、最悪なノイズを引っ提げてやってくる奴がいるな。実家のバカ(兄)だ」

俺たちの「丁寧な引きこもり生活」に、最初の外来ノイズ(敵)が襲来しようとしていた。

(第5話へ続く)

第4話をお読みいただき、ありがとうございました!

コウノスのガチすぎる電動工具指導のせいで、リィンちゃんの狂信度が「エロコメ方面」に盛大に過負荷オーバーロードを起こしてしまいました。マキータの無段変速トリガー、気持ちいいですよね。

「リィンの勘違いが面白すぎる!」「次回の実家ざまぁが待ちきれない!」という方は、ぜひブックマークや評価、応援コメントでこの作品の電圧モチベーションを上げてください! よろしくお願いいたします!


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