遺跡
カイムの不気味な捨て台詞は、しばらく三人の心に影を落としたが、いつまでも足を止めてはいられない。旅は再開された。
街道を外れた丘の上に、崩れかけた石柱の列が見えた。ガレオンの言っていた古代文明の遺跡かもしれない、と三人は足を向けた。
苔むした石畳の中央に、風化してほとんど読めない浮き彫りがあった。翼を持つ何か――人か、それとも別の存在か――が、地上を見下ろしている図だった。ゼロはなぜか、それから目を離せずにいた。理由は分からないが、胸の奥が静かにざわついた。
(気のせい、か)
地図の在り処を示すようなものは、石柱のどこにも見当たらなかった。その夜はそのまま、遺跡の近くで野営することにした。
焚き火を囲みながら、フィアがぽつりと呟いた。
「――ゾウディアのこと、たまに考える」
ゼロが静かに返した。
「フィアの体質のこと、随分詳しく知ってたな」
「うん。他人事とは思えない、みたいな感じがした。……もしかしたら、って思う自分がいる」
「フィアは、フィアだ。今のままで」
「分かってる。分かってるけど、なんかね」
言葉を濁すフィアに、リゼルが静かに続けた。
「もし、また会うことがあったら。今度は、戦う以外の話もしてみたいわね」
フィアは小さく頷いた。
数日後、立ち寄った町の酒場で、旅の商人が声を潜めて話していた。
「――西の国境の町で、また重力持ちの化け物が暴れたらしいぞ。今度は何かを壊すためじゃなく、何かを探してるみたいだったって話だ」
三人は思わず顔を見合わせた。
「――何かを、探してる?」
「行ってみましょう」
リゼルが即座に立ち上がった。




