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武将 古田織部 第62話 戦後の再編

賤ヶ岳の戦が終わったあと、

重然の身体にはまだ泥の重さが残っていた。

鎧の下にこびりついた血と汗が乾ききらず、擦り傷がひりつく。

戦の熱は引いたはずなのに、

胸の奥には小さな火がまだ燻っているようだった。

清秀がいない。

その事実だけが、戦の勝敗よりも重く、

静けさの中で浮かび上がってくる。

摂津衆は清秀の死で指揮系統が崩れ、

右近が中心となって残兵の整理を進めていた。

重然もその場にいたが、何を言うべきか分からなかった。

戦の最中よりも、今のほうが言葉が出ない。

「……お前も戻れ。上久世へ」

右近は短くそう言った。

重然は頷き、戦場を離れた。

賤ヶ岳の泥が乾ききらないまま、足は重く、歩くたびに膝が軋んだ。


上久世荘への帰還

上久世荘に戻ると、土の匂いが胸に広がった。

戦場の匂いと混ざり合い、

どちらが本当の自分の匂いなのか分からなくなる。

荘内の人々は戦の結果を知りたがったが、

重然は清秀の死をどう伝えるべきか迷い、

言葉を選ぶことができなかった。

夜になると、砦が崩れる音が耳の奥で蘇った。

眠りにつこうと目を閉じると、

竪堀を駆け上がってきた敵の足音が、

まだ胸の奥に響いてくる。

戦は終わったはずなのに、身体はまだ戦の中にいた。


秀吉の戦後処理

数日後、秀吉の使者が上久世荘に現れた。

恩賞の配分、領地の再配置、

織田家中の整理──

戦後の処理が一気に進んでいるという。

摂津衆にも新しい役割が割り振られ、

重然にも「次の働き」が示唆された。

清秀の死で空いた一角に、

重然が自然と組み込まれていく。

まだ大きな役職ではない。

ただ、

「戦で働く者」

として秀吉側から認識され始めていることだけは、

重然自身にも分かった。

その知らせを受けたとき、

胸の奥に微かな熱が戻った。

敗走のときとは違う、

静かに燃える熱だった。


次の戦の兆し

秀吉と織田信雄の関係が

悪化しているという噂が広がった。

家康が信雄側につくかもしれない──

そんな話が、荘内にまで届く。

戦は終わらない。

賤ヶ岳の勝利は、ただ次の戦の入口に過ぎない。

重然はその流れの中で、

再び動き出す準備を整えていく自分を感じていた。

足の裏がじんと熱を帯びる。

戦の残り火が、まだ身体のどこかで燃えている。


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