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武将 古田織部 第43話 上久世荘を歩く
(1573年・春/桂川の土手)
重然は土手の上に立っていた。
桂川の水が広く流れている。
水面の白い部分が細かく動き、
岸の石に当たるたび、
低い音が短く続いく。
土手の斜面では、
草の先が同じ向きに倒れていた。
風が抜けた跡が細く続き、
川の中央へ続いている。
重然は川の向こうを見た。
愛宕山が大きく見え、
斜面の木々の間に白い部分があり、
そこだけ光が強く当たっていた。
稜の線が右へ寄り、
その寄りが川の流れと重なっていた。
愛宕山の左には、
嵐山の低い峰が続いている。
さらに左には、
小倉山の丸い稜が見えた。
斜面の筋が一定の向きで並び、
その向きが畑の筋と重なってみえる。
遠くには、
比叡山の高い稜が薄く見えた。
山の上の白い部分が細く揺れている。
土手の下には田が広がっていた。
水の入った田の表が光を受け、
白い線が畦の端まで続いていた。
畦の土がところどころ崩れ、
崩れた部分だけ色が濃く残っていた。
田の向こうには畑が続いている。
畑の土は乾いていて、
表面の細い筋が同じ向きに並んでいた。
筋の向きが小倉山の稜と重なり、
畑全体がゆるく右へ寄って見えた。
集落は点々と続いている。
屋根の端が光を受け、
白い部分が家ごとに違っていた。
重然は土手の上で立ち位置を少し変えた。
川の音が続き、
風が草を押し、
光が畦の端を照らしていた。
ここが、上久世荘という土地だ。




