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武将 古田織部 第42話 代官任命の朝
(1571年・春/京)
朝の光が障子の紙を薄く明るくしている。
部屋の中の形が、ゆっくり浮かび上がった。
仙が火鉢の炭を動かした。
赤い部分が広がり、空気が少し温かくなる。
玄関の外で足音が止まった。
仙が戸を開けると、古田家の郎党が立っていた。
「重然様。
織田家の宿所、東福寺まで、
お越しくだされとのことです。」
重然は外套の紐を結び、刀の位置を確かめた。
町の道はすでに明るくなっていた。
信長の宿所の東福寺の門前に、
奉行衆のひとりが立っていた。
「お呼びにより、参上仕りました」
「こちらへ。」
奥の部屋に入ると、机の上に文書が置かれていた。
奉行は文書に手を添え、重然を見た。
「信長様の命により、
上久世荘の代官をおおせつける。」
言葉が落ちると、部屋の空気が静かに止まった。
奉行は続けた。
「東善寺の住職様より、
あなたの働きについて聞き及んでおります。
住職様の期待にそむことの無いよう、
お勤めください。」
重然は文書を受け取った。
折り目の深さを指でなぞる。
墨の黒が光を受けて浮かんだ。
重然は東善寺の方角を見た。
その日、重然は新しい役目につくことになった。




