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武将 古田織部 第35話 寺に入る(宿舎の割り振り)

九月の光が弱く傾き、

山科の道に白い影を落としていた。

隊列はゆっくりと進み、

馬の足音が土の上で低く続いていた。

前を行く兵の肩が、

京の町から流れてくる光を受けて

細く揺れている。

風が変わった。

山の匂いが薄れ、

炊いた米と薪の匂いが混じってきた。

家を出た時とも、

川を渡った時とも、

軍団に吸い込まれた時とも違う。

重然は胸の奥で、

“京の息”がゆっくりと体に入ってくるのを感じた。

道が狭くなり、

両側に町家が並び始めた。

軒が低く、

屋根の影が道に落ちている。

戸口に立つ町衆の視線が、

隊列の動きを静かに追っていた。

父の馬が歩みをゆるめ、

重然も続いた。

隊列の前方で、

軍監の使者が短く声を上げた。

「古田殿は、東善寺北の坊へ。」

声は低く、

すぐに隊列の音に吸われた。

父は頷き、

手綱を軽く引いた。

その動きで、

重然は自分たちの宿舎が決まったことを知った。

町家の影が続き、

道の先に寺の屋根が見えた。

瓦が光を受け、

白い線を細く返している。

その線が、

重然の胸の奥に静かに落ちた。

京の町の匂いが濃くなり、

人の声が遠くで重なった。

隊列はその中をゆっくり進み、

重然の世界はまたひとつ広がっていった。


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