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武将 古田織部 第34話 川を渡る

道が細く曲がり、

前を行く馬の足が土を蹴る音が弱くなった。

川の流れが近いことを、

風の冷たさで重然は知った。

木々の間から浅瀬が見え、

水面が朝の光を細く返しす。

川幅は広くはないが、

家から離れていく距離をはっきりと感じさせるようだ。

列の先頭が水に入る音が聞こえた。

ざぶ、と短く切れる音が続き、

馬の脚が水を押し分ける動きが見えた。

槍の影が水面に揺れ、

白い点が上下している。

父の馬が浅瀬に入った。

水が脚に当たり、

布の面に細い光が散った。

重然も馬を進めた。

足袋の底に冷たさが伝わり、

その冷たさが膝のあたりまでゆっくり上がってきた。

水の流れが馬の脚に当たり、

その力が手綱を通して重然の手に伝わる。

川の音が重なり、

列がひとつの大きな動きになっていく。

後ろから来る馬の足音が水を切り、

その音が重然の背中に近づいては遠ざかった。

父が短く言った。

「流れに逆らうな。」

声は低く、水の音にすぐに吸われた。

重然は馬の動きに身を合わせ、

浅瀬の石の感触を足の裏で確かめた。

石がわずかに滑り、

水がその上を細く走った。

重然の馬が川を渡りきり、馬の足が再び土を踏んだ。

その重さが重然の胸に落ち、

水の冷たさがゆっくり薄くなっていった。

父は前を向いたまま、短く息をついた。

列は再び歩き出し、川の音が背後に沈んでいった。


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