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武将 古田織部 第32話 父と同じ列に立つ

軍勢の列が家の前に差しかかり、

槍の影が地面を細く切っている。

信長の軍が美濃を固めるために動き始めた時期で、

この列は尾張からの主力だった。

重然は家の前に立ち、

列の中心が近づくのを見ている。

父が戸口から出てきた。

裾が揺れ、

光が布の面で白く反射している。

足音が土に落ち、

その音が重然の足元まで届いた。

重然は柱の影から一歩出て、

父の横に立った。

足袋の底に残る土の冷たさが、

列の風でゆっくり薄くなっていく。

槍の穂先が光を拾い、

白い点が重然の目の前をゆっくり上下した。

その揺れが地面に落ち、

影が細く伸びている。

馬の鼻息が白く上がり、

革の匂いと汗の匂いが風に混じって広がった。

鞍の金具が短く鳴り、

その音が列の後ろへ流れていく。

重然は小さく言った。

「父上……。」

声は短く、

土の上に落ちてすぐに消えた。

父は列の方を見たまま、

短く言った。

「ここに立て。」

声は低く、

間がなかった。

重然は父の横に足をそろえ、

道の中央を見ている。

槍の影が次々と地面を滑り、

光がその影を細く切った。

兵の足が土を踏み、

一定の速さで音が続いている。

その音が重然の足元まで届き、

地面がわずかに震えている。

重然はその震えを確かめるように、

足の位置を少しだけ変えた。

草の先が倒れ、

光がその上に細く落ちた。

「……いつか。」

重然の声は弱く、

風に混じって薄くなった。

父は短く頷いた。

裃ではない普段の装束の袖が揺れ、

光がその面で白く反射した。

背中は揺れず、

一定の高さで列の風を受けている。

列の中央が二人の前を通り、

兵の肩の布が風で揺れた。

刀の金具が短く鳴り、

その音が重然の耳に届いてすぐ遠ざかっていく。

最後の馬が通り過ぎると、

音がゆっくり弱くなった。

土の上に残った跡だけが濃く残り、

光がその上に白く落ちている。

重然は小さく言った。

「……あの列に。」

声は短く、

風に押されて消えた。

父は振り返らずに言った。

「その時が来る。」

声は低く、

朝の光の中に落ちていった。

重然は父の横に立ったまま、

列が山の向こうへ消えるまで動かなかった。

風が弱まり、

草の先が静かに戻っていった。


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