武将 古田織部 第3話 足の運びを初めて習う
庭の砂は、朝の湿りでところどころ暗くなっている。
重然が縁側に出ると、父は庭の中央に立っていた。
足を肩幅に開き、両手を後ろで組んでいる。
「来い。」
父が言った。
重然は庭へ降りた。
土の感触が足裏に広がる。
父は重然の前に片足を出した。
つま先がまっすぐ前を向いている。
足の裏が砂を押し、細い線ができる。
「こうだ。」
父は足を戻した。
砂の線がそのまま残る。
「右を出せ。」
重然は右足を前に出した。
つま先が少し外を向く。
父はその向きを見た。
「違う。まっすぐだ。」
父は重然の足を手で持ち、向きを直した。
足の裏が砂に沈み、線が短く伸びる。
「左を寄せろ。」
重然は左足を前に寄せた。
足裏が砂をこすり、低い音がひとつ出る。
腰が少し浮く。
父は腰に手を当てた。
「浮くな。落とせ。」
重然は腰を沈めた。
足裏に重さが戻る。
父は自分の足をもう一度動かした。
右足が前へ滑り、砂の上に細い線が伸びる。
腰の高さは変わらない。
「こう動く。」
重然は父の足跡を見た。
線がまっすぐ続いている。
「やれ。」
重然は右足を前に滑らせた。
砂がわずかに盛り上がる。
父はその盛り上がりを見た。
「強い。押しすぎだ。」
重然は力を抜いた。
次に左足を寄せる。
砂の上に細い線ができる。
父はうなずいた。
「もう一度。」
重然は右、左と動かした。
足裏が砂をこすり、音が一定になる。
腰の高さが少しだけ安定する。
父は重然の肩を軽く押した。
「止まれ。」
重然は動きを止めた。
足跡が二つ、まっすぐ並んでいる。
父はその跡を見た。
「覚えろ。これが最初だ。」
重然は足元の線を見た。
砂の上に残った二本の線は、
朝の光で少し明るくなっていた。




