三話
デーモンが塵となって消えるのを確認してから、俺は吹き飛ばされた兵士達の元へ向かった。
「あんたら、大丈夫か!?」
「あ、ああ…」
「なんとか、な…」
なんとか二人とも致命傷は免れているが、治癒系統の魔法を使わないとまともに歩くこともできないだろう。
だが、俺は…。
「…すまない、俺は治癒系の魔法を使えないんだ。だからこれを…」
と言って、懐からポーションを取り出そうとしたその時…。
「必要ありません。私が治します」
いつのまにか横にいた、目深に帽子を被った少女が、傷ついた二人に手をかざして詠唱する。
「ー我らに、生命の息吹をー」
その瞬間、周囲が光り輝き、俺たちの傷が一瞬で消えた。
「た、助かった!」
「ありがとう!」
「逃げてください。他の敵は、私が始末しますから」
そう言って、少女はまたどこからか現れたデーモンたちと対峙する。
「待て待て!俺も加勢する!」
俺は、すぐに剣を構えて少女の横に立つ。
「それじゃあ、頼んだぞ!」
後ろから、宮殿に引き返す兵士達の声援が聞こえる。
目の前には、三匹のデーモン。
「…はい、これ」
突然、少女は羽織っていたコートを脱いで俺に渡した。
「…?なぜ、俺にこれを?」
「ーッ!?あなた気付いてないの!?あなた…は、裸じゃないですか!」
「え…?あっ」
そういえば、さっきデーモンにやられて服が破けたんだった。
もちろんズボンは履いているが、上半身は裸。…見るに耐えないだろう。
少女からコートを受け取り、羽織る。
「…悪かった。俺の名はタルスだ。よろしくな」
「ミト。そう呼んでください。…変態さん」
「…本当にすまなかった…!」
「クケケケ。ニンゲン二人。始末するぞ!オル!マッス!」
「おうっ!」
「このマッス様が貴様ら下級民族を葬り去ってやる!」
「ククク…魔術詠唱開始ぃ!」
「ー突風よ、吹き荒れよー!」
「ー紫電よ、敵を砕けー!」
「ー火炎よ、焼き払えー!」
三匹のデーモンが一斉に魔術を放つ。
「俺に任せろ!」
「ー封魔の鉄壁、ここにありー!」
手を前にかざして、半透明の壁を作り出す。風も、雷も、炎も、その壁に阻まれ消える。
「何っ!?」
「我らのストリームアタックが!」
「こんな壁に阻まれるだと!?」
「…いきます!」
「ー氷刃よ、乱れ舞えー!」
ミトの周囲に、氷の刃が出来る。そしてデーモン達に一斉に突撃した…!
「グケッ!?」
「あいつも魔術の使い手か!」
「なかなかやるな…!だが甘い!甘いぞ!」
「ー炎よ、飛散せよー!」
ミトの出した氷刃に炎が飛び相殺されてしまう。
「そんな…!」
「…なら、こいつはどうだ!」
「剣技…空波撃!」
剣を強く振るい、衝撃波を生み出し飛ばす攻撃。これなら…!
「甘ちゃんが!そんな攻撃…!」
「飛んで避けりゃあいいのさ!」
「お前らニンゲンと違ってなあ!」
デーモン達は散り散りに飛び去り、衝撃波は虚しく空を斬る。
「やっぱだめかあ…」
「ククケケ!今度はこっちだ!」
「ー紫電よ、薙ぎ払えー!」
今度は、掌からビームのような雷撃が飛んでくる。
「くっそ!走れミト!」
「わかってます!」
ミトと俺は大きく横に飛び、雷撃を避ける。
「ー氷の鎖よ、絡み付けー!」
お返しと言わんばかりに、ミトの近くの地面から氷の鎖が飛び出す。
「クッ…!小癪な…!」
その鎖がデーモンの手を拘束し、空間にデーモンを固定した。
「今です!」
「おおっ!」
脚力に任せて、思いっきりデーモンの方へ飛び上がる。
「んなっ!?しまった!」
「直接接近して、ぶった斬りゃあいいんだろ!」
「剣技…スクウェアスラスト!」
動くことのできないデーモンを、真四角に切り裂く。
「グギャアアア!」
「お、オルー!?」
「オル!?オルー!」
塵となって消えるデーモンを見てから、残った二匹に剣を向ける。
「…」
「マッス!撤退するぞ!」
「お、おおっ!」
そんな捨て台詞を残し、二匹は飛び去った。
「…みんな去っていきますね」
「おおかた、ここには威力偵察に来ただけってやつだろ。そこまで大規模に住民を殺したりはしなかったしな」
「…本当にそんな理由でしょうか?」
「悩んでもしょうがねえだろ。俺はすぐに宮殿に戻って、デーモンを倒したことを伝えなきゃならんしな」
「それは必要ありません」
「どうしてだ?」
「…気付きませんか?私も、この国の兵士なんですよ」
「…は?あんたみたいな少女が?」
「それ、どういう意味ですか?私が少女?どう見ても立派な女性でしょうが!」
…童顔で、身長は俺より頭一つ以上は小さい。胸も薄っぺらいし…。
「…立派な女性?」
「…は?」
いきなりミトが胸ぐらを掴んできた。
「…リッパナジョセイデス」
「…うー…まあいいでしょう。あなたには借りもありますし、後でじっくりと聞かせて…」
突然、宮殿の方からゴーンと鐘が鳴る。
「き、緊急招集の鐘…?とにかく急いで向かわなきゃ!」
「待ってくれ!俺はどうすれば…」
「あなたも来てください!来ないと罪を増やしますよ!」
「それは困る!」
そして俺は、ミトと一緒に階段を駆け上がった…。




