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十五話

…急げ。


「タルスさん!待ってください!」


急げ。


「タルス!落ち着け!お前一人で先行してどうする!?」


急げ…!


「タルス!話を聞け!」


誰かに肩を掴まれるが、それを振り払って走り出す。


「このっ…止まれ!そこのバカ!」


「っ!」


縄が俺の腕に絡みつく。


「邪魔だ!退け!」


剣を抜き、縄をぶった斬って先に…っ!?


「…頭を!冷やせ!この大馬鹿者!」


足元にある縄に引っかかって転んだ俺に、サギリが馬乗りになる。


「…サギリ、邪魔をするな!俺はすぐに村に向かわなきゃ…!」


べシン!と頬を叩かれる。


「あんたが今すぐに村に行くっていうなら、私は全力で止める。例えあんたを傷つけることになってもね」


「それが…どうしたってんだよ!」


サギリの胸ぐらを掴んで、俺は叫ぶ。


「俺の友達も!俺の親も!みんなが死んでるかも知れねえんだぞ!?なあ!」


「おい落ち着けタルス…!」


「…っ!なら一人で無様に死んでこい!この馬鹿!」


「二人とも…黙ってろ!」


「ごはっ!?」


「げふうっ!」


オリュシオンの拳が俺らの鳩尾に直撃する。


「…二人とも椅子に縛って放置しておけ。一晩経てば頭も冷えるだろう」


「はっ、はい!失礼します…!」


「てめえ…!」


「抵抗するな。今度は手加減しないぞ」


「…っ」








「…」


「…」


クソ…!あいつらの安否が心配でしょうがない。

あの時、俺があいつらを取り逃さなければこんなことには…!


「…ねえ、タルス」


「なんだよ、サギリ」


「…さっきは、ごめん」


「…全くだよ。お前さえ気づかなければ明日には村に…!」


「っ!タルス!あんたまだそんなことを」


「今も村が焼かれているかも知れねえんだ!急いで向かわなきゃあいつらは…!」


「なんで…なんでわかんないのさ!」


涙声で、サギリが叫ぶ。


「タルスは…村のみんなを助けるためなら死んでも構わないなんて思ってるでしょ?」


「当然だ!…あいつらは、俺が勇者になって帰ってくることを楽しみに待ってるんだ。俺が、あいつらを守ってやらなきゃ…!」


「やめて…!やめてよ!」


サギリの方を見ると、サギリの目からは大粒の涙が溢れていた。


「人は…生き返らないの!どんなに頑張ったって帰ってこないの!あなたが無茶して死んだら、もう私は…!」


「サギリ…」


「一人で突っ走らないでよ!一人で無茶しないでよ!もっと、私を信頼してよ!…もう失うのは、たくさんだよ…」


「…悪かった。冷静に考えれば、一人であのデーモンの群れに勝てるなんて自惚れだ。下手したら…いや、間違いなく俺は死んでた」


「タルス。もう、一人で行くなんて言わない…?」


「ああ、約束する。…改めて、本当にすまなかった」


「…うん。それなら、いいよ」


そう言うと、サギリはぶるぶると顔を振って、笑顔を作った。


「じゃ、明日からがんばろ!村のみんなを助けるために、さ!」


「それじゃ、また明日だな。おやすみ」


そう言って、俺たちは眠りについた。

…椅子に縛られたままで。

明日は身体中が痛くなりそうだなあ…。

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